2010年11月30日教室 『塗り薬の使い方 ―その落し穴―』

落し穴―その1― 「ふたの開かない軟膏は効かない!」

 それはそうです。処方された薬は、飾っておくだけでは効きません。
 内服薬(飲み薬)を忘れることはあまりありません。飲むのは簡単です
 から。でも塗り薬は、「ついつい面倒だし」、「べとつくし」、
 「テカるのもいやだし」、・・・・・・・・・
 処方された軟膏は、かくして洗面所の片隅に、机の引出しの中に、
 忘れられたまま、とかくなるわけです。そして「軟膏は効かない!」。

 でもいったいそれって誰が悪いの?

 「もっと塗りやすい軟膏を」、「塗る必要性をもっと教えて」、「効い
 ている実感がしない」、「ステロイドの塗り薬は恐ろしい」などなど、
 皆さんの声が聞こえてきます。

 アメリカの乾癬患者組織(米国乾癬基金)に参加する患者さんを対象と
 した調査では、乾癬の範囲が全身におよび重症であるほど、あるいは
 乾癬のためにQOLの低下が著しいほど、軟膏を塗る回数が減ってしま
 う、という結果がわかっています。皮膚の病気を持っていることだけで
 さえ、大変なのです。それに加え「1日2回、軟膏を塗って下さいネ」
 の指示は酷というものかもしれません。

 欧米では塗り薬の種類の中に、スプレー、ムース、さらには薬を含んだ
 頭用のシャンプーまで発売されています。軟膏を頭に塗るなんて、
 大変であること極まりありませんが、毎日のシャンプーが治療であれば、
 こんな楽なことはありません。

「ふたを開かせる軟膏」を目指して私たち、患者である皆さん、そして
 製薬メーカーの協力が必要です。

落し穴―その2― 「軟膏はどう使う?」

 じつは、これが分っていないのです。患者さんが分っていないのでは
 なく、医者が分っていないのです。塗り方について、副作用について、
 などなど、どれぐらい説明を受けておられますか?
 医師から「これが正しい塗り方です」という処方箋はありません。
   1.一日何回?
    •塗る回数が多いほど効く。1ヶ所にしか軟膏がないと、
     ついつい忘れがち。軟膏は分けておいて置き、塗りやすい手
     などは機会があるごとに塗りましょう。
    •開発臨床試験では、ボンアルファハイ軟膏、抗真菌薬では
     1回と2回で差がない、という結果も出ていますが、結果を
     よく見ると2回の方がよく効いています。  
    •生活スタイルに合わせて種類を選び、塗る。
      頭、手はべとつかないものを頻繁に、
      体は長持ちするものを一日1回。
   2.一回にどれぐらい?
     目安は『finger tip unit (FTU)』
     1 FTU = 0.5㌘:手のひら2枚分=体の面積の2%
     (全身は、0.5㌘x50倍、25㌘)

   3.塗り方は?
    •単純塗擦:軽くのっける、擦りこむ。小さい部分は綿棒で。
     大きい範囲は手のひらで。難しいのが背中と、頭。
     そこでひと工夫。
     背中は? ご飯の「おへら(しゃもじ)」が最適です。
     「おへら」の先に軟膏を乗せ、鏡を見ながら患部に優しくすりこみ
      ます。
     頭は? 軟膏、ローションのチューブをそのまま頭にあてると、
     チューブの中の薬が汚染されてしまいます。手のひらに、あるいは
     小さなお皿の上に軟膏・ローションを置いて、そこから患部に優しく
     すりこみます。髪の毛に薬をあまり盗られないよう、地肌に塗りま
     しょう。
    •ガーゼ・包帯保護
    •ODT(occlusive dressing technique、密封療法):
     体はサランラップ、頭はシャワーキャップ
    •患部にピンポイント、保湿剤は広めに。
   4.いつまで?
    •もちろん、治るまで!その目安は、湿疹・乾癬では目をつぶって
     触ってつるつる肌になった状態。水虫・たむしではカサカサがなく
     なり、さらに1ヶ月。
    •目安は主治医とともに確認したほうが良い。病変が残っていると
     すぐに再発する。
   5.副作用は?
    •主剤によってさまざま。
    •量によっては全身への作用も起こりえる。ステロイドでは副腎
     抑制、ビタミンD3では高カルシウム血症、など。でも、ごくまれ
     です。
    •局所に生じた副作用のほとんどは、やめると元に戻る。

落し穴―その3- 「クスリはリスク」

『薬=くすり』は『リスク=危険』
 軟膏も、塗る必要性、薬の性質・副作用をよく知っておきましょう。
 せめて軟膏の名前ぐらいは、「小林さん、覚えておきましょう」。

以上、勉強しました。
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by kobayashi-skin-c | 2010-12-04 19:43 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
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