2013年9月27日教室 『日本乾癬学会の話題から』
9月6日,7日、東京(東京ドームホテル)において第28回日本乾癬学会が開催されました。今年のテーマは『大きなうねりを! ~乾癬の基礎から臨床まで~』であり、学会会長・日本乾癬学会理事長の中川秀己先生から、「生物学的製剤が乾癬治療に導入され、飛躍的に治療が進歩し、難治性の乾癬も制御可能な時代に突入するとともに、乾癬の病態解明にも大きく役立っています。そういう時代であるがゆえに質の高い乾癬診療と治療の全国的な均一化を図ることが要求されていると思います。・・・・・・・(中略) 乾癬診療に携わる我々皮膚科医にとって、疾患の重症度に関わらず大切にしなければならないことは、医師・患者関係をしっかりと構築すること、同じ乾癬という診断でも、患者さん一人ひとりの抱える心理・社会的問題はそれぞれ異なりますので、個別の背景を十分に理解し、訴えを親身になって聞いた上で、患者さんと話しあいながら治療方針を決めて行く "shared decision making" が大切となってきています。これらのことを念頭におきながら、学会に参加することで乾癬の基礎・臨床に携わる先生方御自身に『大きなうねり』が生じることを心から期待しています。と同時に、決してこれが『つなみ』となり患者・医師に不利益が生じることがないよう注意しなければならない、決して『つなみ』にしてはならない」と開会の挨拶がありました。

小林皮膚科クリニックからは、本院院長小林 仁、副院長有田 賢、8・3プラザ院長小林衣子の3名が参加しました。今回の健康教室は「学会の話題」について、有田 賢が報告を行いました。

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まず、もっとも印象深かった話題から
『レセプトデータに基づいた疫学』(東京大学薬剤疫学 久保田 潔先生)
「レセプト」とは「医師の保険者に対する医療行為請求書」。現在99%の医療施設がこのレセプトをコンピュータから行うため、そのデータはすべて大型コンピュータに保管されるようになりました。この膨大なレセプトデータ(ビッグ・データ)を利用して、「日本でどれだけの乾癬患者さんが、2010年度に医療機関を受診したか」を解析しました。いままで私たちも「いったいどれぐらいの乾癬患者さんが日本にいるのか」、推定でしか知りませんでしたので、日本における乾癬の発症頻度を、実数にかなり近い形で知ることができたものと思います。
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次に新しい治療の話題から、①顆粒球吸着療法、②生物学的製剤、③ターゲット型ナローバンドUVB照射治療
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患者さんのQoLに関わる重大な事柄に、「乾癬の情報をいかに得るか」ということがあります。このことについて、
『乾癬治療で民間療法に依存しやすいのは、インターネット検索で正確な治療知識が得にくいからである』(筑波大学病院看護師 梅津 努先生)
がありました。
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基礎研究の分野では、『乾癬の原因遺伝子』研究に目覚ましい動きがありました。尋常性乾癬の原因遺伝子は研究の進歩とともに、その候補が増えるばかりですが、膿疱乾癬では、たった一つの遺伝子の変異が家族性膿疱性乾癬を起こすことが、すでに明らかにされていました。わが国の膿疱性乾癬患者さんでも、この遺伝子に変異があり、尋常性乾癬とは異なることが示されました。
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乾癬学会の終了後には、全国乾癬患者学習懇談会が同じ東京ドームホテルで開催され、約200名の患者・家族そして医療関係者が集いました。東京医科大学皮膚科教授 三橋善比古先生から『乾癬よもやま話』と題した講話があり、感銘深いものでした。さらに懇親会が開かれ、乾癬のよもやま話に花を咲かせました。

来年は、高知市において乾癬学会が開かれます。『うねり』が南海トラフ地震にならないよう、祈ります。
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by kobayashi-skin-c | 2013-11-06 18:57 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
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