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2017年2月教室 『トルツ問題』
昨年8月、新しい乾癬の治療薬『トルツ』が厚労省、中央保険医療協議会(中医協)の審査を経て、発売予定となりましたが、『トルツ』を開発した会社が値段、ならびに処方制約が付けられたことを不服として、新薬としての申請を取り下げました。
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しかし、事態は二転三転。メーカー側から再申請が上げられて、中医協は11月に薬価を大幅に引き下げ、処方制約も解消したため、『トルツ』は12月には晴れて発売となりました。乾癬患者も医師も待ち望んだ薬だけに、この間の経緯に首をかしげざるを得ません。これが『トルツ問題』です。
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病院・クリニックで使用される薬剤は、すべて保険薬として厚労省で認可され、その値段は中医協において決定されます。この値段を薬価といいます。すべて、国によって定められた公定価格です。

薬価の算定に当たっては、開発費、営業費などの必要経費と、発売してからの売上予測額、さらに海外の値段などを考慮して妥当な値段が決められます。大変複雑であり、興味のある方は、中医協の「新医薬品の算定方式(PDF版)」をご覧になってください。しかし、それがどうも、メーカー主導であるような気がしてなりません。

抗がん剤の『オプジーボ問題』を覚えているでしょうか(2016年9月教室を参照)。たった1つの抗がん剤が、その経費のため日本の医療費の破綻を早めるというものです。国会でも論議となり、なんと今年の2月から一気に半額まで薬価が切り下げられました。
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薬の値段(薬価)って何でしょう?

さて、ここからが本題なのですが、『トルツ』は大変優れた薬です。開発試験の結果をいくつかみてみましょう(トルツ開発のメーカー資料から抜粋)。
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『トルツ』は治療を開始して早いうちから効果をあらわし、12週間後ですでにPASI100(乾癬の完全な消失)が35.3%の患者さんで得られました。

この効果は1年間の治療の後にも続いていました。
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『トルツ』は乾癬性関節炎に対しても優れた効果を発揮しました。
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『トルツ』は6番目に登場した乾癬の生物学的製剤治療薬です。
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副作用も比較的少なく、たいへん優れた効果を発揮する生物学的製剤治療において、高額の医療費が、治療選択をする上で高いハードルとなっています。その高額な値段(薬価)を決める過程に、不透明さをみただけに複雑な気もします。

さらに新薬が登場します。乾癬治療のドラえもん四次元ポケットは、ますます膨らんできました。次回の健康教室では25周年を迎える乾癬の会(北海道)の歴史を振り返ると同時に、新薬『オテズラ』を紹介いたします。
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by kobayashi-skin-c | 2017-03-02 18:44 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
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