カテゴリ:「皮膚の健康教室」抄録( 55 )
2017年2月教室 『トルツ問題』
昨年8月、新しい乾癬の治療薬『トルツ』が厚労省、中央保険医療協議会(中医協)の審査を経て、発売予定となりましたが、『トルツ』を開発した会社が値段、ならびに処方制約が付けられたことを不服として、新薬としての申請を取り下げました。
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しかし、事態は二転三転。メーカー側から再申請が上げられて、中医協は11月に薬価を大幅に引き下げ、処方制約も解消したため、『トルツ』は12月には晴れて発売となりました。乾癬患者も医師も待ち望んだ薬だけに、この間の経緯に首をかしげざるを得ません。これが『トルツ問題』です。
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病院・クリニックで使用される薬剤は、すべて保険薬として厚労省で認可され、その値段は中医協において決定されます。この値段を薬価といいます。すべて、国によって定められた公定価格です。

薬価の算定に当たっては、開発費、営業費などの必要経費と、発売してからの売上予測額、さらに海外の値段などを考慮して妥当な値段が決められます。大変複雑であり、興味のある方は、中医協の「新医薬品の算定方式(PDF版)」をご覧になってください。しかし、それがどうも、メーカー主導であるような気がしてなりません。

抗がん剤の『オプジーボ問題』を覚えているでしょうか(2016年9月教室を参照)。たった1つの抗がん剤が、その経費のため日本の医療費の破綻を早めるというものです。国会でも論議となり、なんと今年の2月から一気に半額まで薬価が切り下げられました。
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薬の値段(薬価)って何でしょう?

さて、ここからが本題なのですが、『トルツ』は大変優れた薬です。開発試験の結果をいくつかみてみましょう(トルツ開発のメーカー資料から抜粋)。
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『トルツ』は治療を開始して早いうちから効果をあらわし、12週間後ですでにPASI100(乾癬の完全な消失)が35.3%の患者さんで得られました。

この効果は1年間の治療の後にも続いていました。
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『トルツ』は乾癬性関節炎に対しても優れた効果を発揮しました。
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『トルツ』は6番目に登場した乾癬の生物学的製剤治療薬です。
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副作用も比較的少なく、たいへん優れた効果を発揮する生物学的製剤治療において、高額の医療費が、治療選択をする上で高いハードルとなっています。その高額な値段(薬価)を決める過程に、不透明さをみただけに複雑な気もします。

さらに新薬が登場します。乾癬治療のドラえもん四次元ポケットは、ますます膨らんできました。次回の健康教室では25周年を迎える乾癬の会(北海道)の歴史を振り返ると同時に、新薬『オテズラ』を紹介いたします。
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by kobayashi-skin-c | 2017-03-02 18:44 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2017年1月教室 『蕁麻疹について』
毎日の診療の中で、蕁麻疹の患者さんをみるとき難しいのが、なかなか原因を特定できないことです。突然体中に蕁麻疹が広がった急性蕁麻疹の患者さんから、「なにも変わったものは食べていないのに、昨夜のおかずが悪かったのでしょうか」との質問。もう10年も通ってこられている慢性蕁麻疹の患者さんからは、「先生、いったいいつになったら治るの?どこか内臓でも悪いんですか?」との質問。残念ながら、私は的確にお答えすることができません。でも「治ります」、「よくなります」とお答えして、内服薬をお渡ししています。

その難しい『蕁麻疹』とはいったい、
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『蕁麻疹』はかゆい病気の代表的なものですが、多くの皮膚疾患の中から、その特徴的な皮膚変化と時間経過から、視診と問診でほぼ確実に診断されます。
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でも『かゆい!』ってつらいですよね。
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『蕁麻疹』の症状は、ちょうどこの蚊に食われたときの皮膚変化とよく似ています。
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掻いたとおりに皮膚が盛り上がる蕁麻疹、まぶたがはれ上がる蕁麻疹もあります。
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『蕁麻疹』がどのように起こるのか、おおむね下の図のような機序が分かっており、マスト細胞から出されるヒスタミンといわれる化学物質が、皮膚の痒み、皮膚の腫れを作ります。
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では、なぜマスト細胞がヒスタミンを出すのか。はっきり分かっているのはIgEを介するアレルギーですが、これはまれです。食物アレルギーが証明される患者さんはほとんどいません。
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たしかに、青魚を食べた後に蕁麻疹が出ることはよく聞きますが(小生は「カツオのたたき」で経験あり)、かといってほとんどの蕁麻疹の方では、とくに食べ物が指摘されるわけではありません。
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原因として挙げられているものは数多くありますが、実際のところはっきりとした原因はつかめないことのほうが多く、一番下に挙げられた「疲労・ストレス」が、もっとも関連深いように思います。


最近、化粧品などが原因となってアレルギーが誘導され、蕁麻疹やアナフィラキシーといった重症症状を引き起こすことが明らかにされています。
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こうした研究が進むと、もっともっと蕁麻疹の原因が分かってくるのかも知れませんね。

さて治療については、ここに書かれた薬剤、治療法が使われます。H1拮抗薬(抗ヒスタミン・抗アレルギー薬)がもっとも効果的で、例外的な方を除いて、内服により蕁麻疹は消失します。
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しかし、内服を中断するとまた蕁麻疹が生じる『慢性蕁麻疹』の方からは『いったいいつ治るんだ』とよくお叱りを受けます。そのときは、『蕁麻疹は体内からの信号、ちょっと疲れていませんか?ストレスが続いていませんか?無理をなさらないようにしてください』とお答えしていますが、『10年も疲れ続けてなんかいませんよ』とつっこまれることも。そうすると、迷医の私は困ってしまって『山にでも登ってみませんか』とつぶやいたり、『運気が変われば治ります!』と口走ってしまいます。申し訳ありません。『かならず治りますよ、よくなりますよ』。
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by kobayashi-skin-c | 2017-01-28 16:18 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2016年11月教室 『さらに新しい乾癬治療薬(生物学的製剤)』
乾癬の治療に生物学的製剤がわが国に導入されて5年間。その画期的な治療効果が多くの患者さんに福音をもたらしました。
第一世代であるTNFα抗体(ヒュミラ、レミケード)、第二世代のIL23抗体(ステラーラ)、そして昨年から新たに第三世代であるIL17抗体(コセンティクス)が登場しました。さらに今年9月、IL17受容体抗体(ルミセフ)が発売になりました。

乾癬の原因究明と、新しい治療法の研究・開発には目覚しいものがあります。
私が皮膚科医になったばかりのころ、乾癬治療を担う『ドラえもん』のポケットの中身はこんなものでした。
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乾癬がおきるメカニズムついての理解もこんなものでした。
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しかし、1980年~90年代には次々と理解が進み、紫外線照射療法、内服薬のレチノイド(日本における商品名:チガソン)、シクロスポリン、そして活性型ビタミンD3外用剤が治療に導入され、乾癬治療は格段の進歩を遂げます。
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大きな発見は、免疫抑制薬のシクロスポリンが劇的に乾癬を良くしたことでした。今までは皮膚(表皮)の新陳代謝(角化)の異常が原因と考えられていた乾癬の原因が、一気に皮膚の免疫の異常と考えられるようになったことです。皮膚(表皮)に効くと思われていた治療・薬剤も、実は免疫調整作用で乾癬に効くと考えられるようになりました。
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そして、モノクローナル抗体(一つの標的だけをブロックする)の作成手法が一般的となり、乾癬にかかわる免疫物質(タンパク質)に対するモノクローナル抗体が、次々と薬剤として使われるようになりました。中には治療薬があまりに「実験的」とも思えるものもありましたが、現在では赤字で示した薬剤が乾癬の治療薬として実際に使われるようになりました。
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『ドラえもんの四次元ポケット』は大きく膨らみました(飯塚一先生の「乾癬治療ピラミッド」)。
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新しく登場した『ルミセフ』の効果・副作用を示します。
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現在わが国で発売されている乾癬治療の生物学的製剤一覧表です。
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乾癬への効果は、いずれもたいへん優れており、ことに第3世代のものでは約半数の人で乾癬がすべて消失します。「つらい乾癬から解放される」。この歓びはどんなにか大きなものでしょう。

問題は2点。よく効く生物学的製剤も治療を中止すると、乾癬が復活します。治療は長期に及びますので、副作用(重症感染症)、治療費用が問題です。副作用については、第2、3世代のものがより安全です。値段は一律に一日換算で¥5200とされています(注射の頻度により自己負担額は異なる)。しかし、2016年9月に発売予定とされていた『トルツ』でとんでもない事態が起こりました。値段の決め方が不透明なのです。その「どんでん返し」に・・・・・・

この顛末については、また2017年2月の健康教室で詳説いたします。
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by kobayashi-skin-c | 2016-12-01 18:37 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2016年9月教室『第31回日本乾癬学会の話題から』
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第31回日本乾癬学会が宇都宮市において開催されました。学会会長は自治医科大学皮膚科教授、大槻マミ太郎先生です。学会のテーマは『乾癬、その深淵へ』。乾癬の原因追求、乾癬の治療開発、乾癬患者さんへの思いやり、すべてに通じるテーマです。全国から1000人をこす参加者があり、入りきれないぐらいの聴衆で溢れた会場もありました。第1回は、学会に発展する前の乾癬研究会の名で、大分県別府市の郊外にある城島高原ホテルで30年前に開催されました。講演・発表が行われたのはホテルの大広間の畳の上でした。隔世の感があります。

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学会プログラムは盛りだくさんで、5つの会場に分かれて同時進行のため、すべてを聴くことはとてもできません。

プログラムの中でもとくに目立つのが『生物学的製剤』関連のシンポジウム、セミナー、一般演題が多かったこと。この数年の傾向ですが、とくにスポンサード・セミナーのほとんどがそうでした。思い返せば、1999年、米国サンフランシスコで開催された国際会議で生物学的製剤の存在を知りました。当時は『標的療法』と呼ばれていました。乾癬発症の免疫学的メカニズムの解析が進み、当時主流の考えであったヘルパーT細胞を標的とするモノクローナル抗体が、米国で治療として使われ始めていました。「あまりに実験的過ぎて乱暴な治療法である」と当時は感じました。

乾癬発症の免疫学的メカニズムの解析は飛躍的に進み、2012年に開かれた国際会議では「TH17経路」が主役であると結論付けられました。同時に、この経路で重要な役割を演じるIL17をブロックする生物学的製剤が乾癬に大変よく効くことが報告されました。そして昨年、今年と、相次いでこれらの抗IL17治療薬がわが国でも上梓されました。
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第三世代と呼ばれる抗IL17治療薬(コセンティクス、ルミセフ、トルツ)ではPASI90改善率(全身のほとんどの乾癬が目立たなくなる)が5割の患者さんでみられるということです。

しかしながら、同時に頭をよぎるのは「薬剤費」が高すぎるということです。「オプジーボ問題」という話題をご存知ですか。京都大学の本庶先生が発見し、ノーベル賞に値するとも言われる抗がん剤「オプジーボ」。この夢のような抗がん剤が国を滅ぼすというのです。
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夢のようによく効く乾癬の治療薬「生物学的製剤」も同じような問題を含みます。
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乾癬の患者さんも、そして私たち皮膚科医も、優れた働きを持つ「生物学的製剤」の使い方を真剣に考えなければなりません。

大きな感銘を与えてくれた講演が、特別セッション『乾癬が身近にあるということ』でお二人の先生からありました。
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現在の治療の主体となっている「免疫抑制作用を持つ治療薬(とくにステロイド)」に警鐘を鳴らす講演がありました。
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ステロイド外用治療で起こるリバウンド現象が理論的に説明されました。大きな課題が自分に突きつけられた、そんな思いで塩原先生の講演を聴きました。

学会の最後には、今は恒例となった全国の乾癬患者友の会主催による学習懇談会がありました。
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福島乾癬の会の相談医であり自らも乾癬を持つ佐藤守弘先生、大分乾癬の会の相談医であり、やはり乾癬を持つ佐藤俊宏先生が、「医師として、患者として」どんなふうに乾癬と関わりあってきたか、向き合ってきたかを全国から集まった100名をこす患者さん、医療関係者にお話しくださいました。「乾癬を持ってつらいと思ったことはない」(佐藤守弘先生)、「正直つらかった」(佐藤俊宏先生)と本音を語りながら、「家族への感謝」、「乾癬を持つことでしか得られなかった貴重な経験」を共通して述べられました。講演の後には聴衆の方々からの質問コーナーがありました。全国の相談医が勢ぞろいして考え、答えを出していく光景は圧巻でした。「心強い」と心の芯から思いました。

小生も、今では乾癬学会のマイナーとなってしまった「ビタミンD3外用剤」について、そして長年の課題であった「豊富温泉湯治効果」について報告を行いました。
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「乾癬の深淵」を垣間見ることができた学会でした。ここで学んだことをクリニックの中で、また患者会の中で皆さまと共有したいと思います。
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by kobayashi-skin-c | 2016-09-28 18:32 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2015年9月教室 『憧れのモンブラン』
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私の中学時代、1年生と3年生のときの担任は政本桂子先生。数学を担当し、熱心で少しおっかない存在の先生だった。そんな先生が、夏休みが終わった秋の授業で、「モンブラン」に登頂した話を聞かせてくれた。当時のこと、スライド写真などなかったものの、先生の話しに夢中になり、「いつかは自分も登ってみたい」と思ったものだった。小さい頃から家族でハイキングや山登りに行くことが多く、高校生になってからも、大学に入学してからも、自然と山登り、山歩きはよくしていたが、モンブランの夢はいつしか忘れてしまっていた。

中略

私たちのモンブラン登頂過程は、小林皮膚科クリニックホームページの院長ブログ「photo & essay」に掲載いたしました。
2015年7月 『憧れのモンブランへ』 July, 2015 "To Mont Blanc, My Dream"
2015年7月 『アルプス、エクラン国立公園に咲く花々』 July 2015 "Flowers in Des Ecrins of the Alps"
2015年7月 『モンブランの頂き』 July 2015 "The Summit of Mont Blanc"
2015年7月 『シャモニー・モンブランにて』 July 2015 "in Chamonix/Mont Blanc"
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by kobayashi-skin-c | 2015-10-02 19:16 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2015年8月教室 『北欧の街角から -乾癬の克服に向けたメッセージ-』
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第4回世界乾癬・関節炎会議が、7月8-11日、スウェーデンのストックホルムで開催されました。開会式の冒頭、主催者のIFPA 会長(International Federation of Psoriasis Associations 国際乾癬患者組織連盟)、Lars Ettarp氏が開会宣言を行いました。会議の合言葉は、Hope! Action! Change! (「希望」「行動」「変化」)。昨年5月24日の国際連合の「World Health Assembly 世界健康会議」においてWHOの提案「乾癬」が採択されたことは、乾癬の患者のみならず、乾癬にかかわる人すべてにおいて大きな前進でした。今回の世界会議の参加者はこの採択を重く受け止めて、行動を起こさなくてはなりません。
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これが国連で採択された動議です。
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10月29日のWorld Psoriasis Day(世界乾癬デー)には「Hope, Action, Change」を標語にみんなで参加しましょう。
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今年の会議で大きく注目された二つのテーマについて報告しましょう。一つは、やはりJames G Krueger先生(米国ロックフェラー大学)の研究、治療法の開発でしょう。

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乾癬が起こっている皮膚(乾癬皮膚)と、乾癬が起こっていない皮膚(正常皮膚)を比べると、いろんな違いが見えてきます。皮膚の中でどんな遺伝子が活発に動いているのか、逆に不活発なのかを乾癬皮膚と、正常皮膚で調べてみました。比較できる遺伝子の数が、2001年には159遺伝子でしたが、2010年には4175遺伝子にまで増えましたので、乾癬の発症メカニズムをより精細に調べることができるようになったと言ってよいでしょう。分かったことは、

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皮膚の防御力(免疫反応)で大切な一つの流れである「Tip-DCs(抗原提示樹状細胞) - TNF刺激」の主要経路=IL-23 & IL-17が、乾癬の発症に一番大きな役割を担っている、と実験結果が示しました。このことから、IL-23 & IL-17の働きを皮膚で抑えることができれば、かなりピンポイントに乾癬を治すことができると言うことです。IL-17をおさえるバイオロジックス(生物学的製剤)はすでに市販されて、その効果の目覚しさを実感されている方も多いと思います(日本が世界で一番早くこのバイオロジックスが使えるようになりました。商品名「コセンティクス」)。

IL-23をおさえるバイオロジックスは、もっと効くようです。
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まだ開発の初期段階ですが、1回の皮下注射で6ヶ月にわたって乾癬がほとんど消える効果が得られています。現在3種類の抗IL-23バイオロジックスの開発が進んでおり、いずれも既存のバイオロジックスよりも効果が優れているようです。
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Krueger先生の講演はたいへんエキサイティングでしたが、他のバイオロジックスと同じように、これからも長期的な副作用、治療費の問題について注意する必要があります。既存のバイオロジックスに比べ、その効果が、乾癬の発症メカニズムをピンポイントに抑えるため、副作用はより少ないことが期待されます。抗IL-23薬の登場が待たれます。


「psoriasis is more than skin deep」、「乾癬は皮膚の深さだけにとどまらない」の言葉は、乾癬は「皮膚だけではなく」、「精神的にも日常生活面にも、そして経済的にも大変である」ことを表現する言葉としてよく使われてきました。さらに乾癬が「皮膚の深さだけにとどまらない」さまざまな事実が明らかにされています。
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関節炎の頻度が高く、皮膚のつらさだけではなく、指が曲がらない、足が腫れていたい、腰が重いなど日常生活に重大な影響を与えます。眼にもブドウ膜炎が起こることがあります。さらに、心・血管系、腎臓の病気ともかかわり深いことが明らかにされました。そしてメタボとのかかわりが何よりも重大であり、予防、未病のための対策が必要です。寿命にもかかわってくるからです。
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内臓疾患、メタボとの関連は、乾癬が重症であるほど明確です。
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乾癬のコントロールを積極的に行うことで、内臓疾患を予防することが期待されています。さらにメタボ予防が大切です。米国国立衛生研究所(NIH)の心臓血管部門チーフ、Mehta先生は、次のように述べられました。
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特別なことではない、すべての乾癬患者さんは20歳を過ぎてからは健診を受けなさい、そしてメタボにならないよう日々努力をしなさい、ということです。「分かっちゃいるけどやめられない」では、「いかんのですぞ」。


会議場の一角に絵や彫刻が展示されていました。世界各国の乾癬患者さんが自らの気持ち、体験を描き出したものです。大きな感銘を受けました。3点を紹介します。
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「Floriasis」とはなんと美しい言葉でしょう。皮膚の表面に現れた「乾癬=psoriasis」ではなく、「花=floriasis」。その花に自信を持ちたい自分もある、でも打ちひしがれる自分もある、そんな気持ちを表した、これは作者自身のポートレートでしょうか。この展覧会を企画したAbbie(製薬メーカー)に脱帽。


この世界会議のすべてを記述することは不可能です。3度目の今回、あらためてこの世界会議の意義を問うとすれば、この会議は「世界の患者会が主催をした」ということ。「主役が患者」であるということ。医療の本質が「乾癬」をつうじて体現されていると、深く感銘を受けました。日本から、日本乾癬患者連合会を代表して、神奈川県乾癬患者友の会の奥瀬さんが参加されました。各国の患者会の人たちと積極的に交流されている姿をみて、日本からも世界に向けて、乾癬患者の声や希望が発信されていくときが遠からずくることを予感しました。
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会議のパーティーはストックホルム市庁舎で開かれました。毎年ノーベル賞受賞者の公式晩餐会・舞踏会が催される場所です。左からIFPA会長のLars Ettarp氏、小林衣子、奥瀬さん。
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by kobayashi-skin-c | 2015-08-31 19:07 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2014年6月教室 『乾癬の治療-10年ぶりの新しい外用剤-』
乾癬がどのようにして起こるのか、最近次々に新しいことが分かるようになってきています。原因究明の研究に呼応して、この数年で生物学的製剤治療がわが国でも使用されるようになり、目覚ましい効果が得られています。しかしながら、生物学的製剤治療をはじめ内服薬治療、紫外線治療には、治療効果の半面、副作用があったり、治療費が多額であったり、通院が頻繁であったりと、患者さんの負担面も生じます。多くの皮膚の病気と同様、乾癬の治療でも主役はやはり外用療法(塗り薬)です。約10年ぶりで、新しい乾癬の外用剤(塗り薬)が近々発売となります。その新薬のことも含め、もう一度乾癬の外用治療について勉強したいと思います。
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by kobayashi-skin-c | 2014-09-10 15:50 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2014年7月教室 『その赤ら顔、ひょっとして酒さ?』
「酒さ」はいわゆる「酒やけ」と呼ばれる顔の赤みですが、お酒とは全く関係なしに「赤ら顔」に悩まれる方が増えています。以前にも一度「皮膚の健康教室」で取り上げましたが、再度酒さの原因・治療について勉強しましょう。
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by kobayashi-skin-c | 2014-09-10 15:48 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2014年8月教室 『あせ、汗、アセ』
北海道の夏はあっという間に通り過ぎ、いつの間にやら秋風が吹き始めました。朝・夕は肌寒く感じる日もあります。でも、ちょっと前までは、蒸し風呂のような暑さが続くこの夏の日本列島。何だか毎年のように、何十年ぶりの暑さとか、日本最高気温の町とか、話題になりますね。「地球温暖化現象」は深刻!そんな時に『汗』の話題では、なお一層のこと暑苦しくなりそうですが、今『汗』が見直されています。そのキーワードは『汗は最高の天然保湿ローション』なのです。アトピー性皮膚炎は、皮膚の症状が夏に悪化することが多く、『汗は大敵!』と思われがちでした。しかし最近の研究では、アトピー性皮膚炎の方で多くみられる『乾燥肌、皮膚バリア障害』にとって、汗をかくことが何よりの保湿となり、皮膚症状の改善にも役立つことが分かってきました。そんな『汗』についてちょっと勉強してみましょう。
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by kobayashi-skin-c | 2014-09-10 15:46 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2013年12月17日教室 『今年を振り返って』
小林皮膚科クリニックが2000年5月に開院して以来、毎月『皮膚の健康教室』を続けてきました。クリニックのロビー・待合室が教室の会場です。その時々の話題や、みんなに知っておいてほしい知識、みんなで考えたい皮膚のトラブルなどをテーマに数を重ねてきました。それともう一つ、旅好き・山好きの私は写真をとることも好きなので、ときおり教室のテーマは旅と山になることがありました。とりわけ写真機がデジカメとなり、スライド映写がパソコンから直接プロジェクターへと接続できるようになってから、時折々の自然の景色や花々を見ていただけるようになりました。心の安らぎも皮膚科治療の一環、「とりわけ私たち医療者の心の平穏が大切である」をモットーに(こじつけして)、最近では山・旅に出かける機会も増えてきました。

今年は、有田副院長がクリニックに加わり、さらにそのレベルがアップしました。2月のイタリア・ドロミテスキーに始まり、5月のネパール、7月の大雪トムラウシ縦走、8月の剱岳・立山縦走、9月のバリ、そして11月の九州の山々、と今までにないほどの勢いで歩き、登り、滑り、思い出を写真におさめました。

このホームページのブログ "Photo & Essay" に記録しておりますのでご覧になって下さい。
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by kobayashi-skin-c | 2014-06-01 18:05 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)