カテゴリ:「皮膚の健康教室」抄録( 59 )
2014年6月教室 『乾癬の治療-10年ぶりの新しい外用剤-』
乾癬がどのようにして起こるのか、最近次々に新しいことが分かるようになってきています。原因究明の研究に呼応して、この数年で生物学的製剤治療がわが国でも使用されるようになり、目覚ましい効果が得られています。しかしながら、生物学的製剤治療をはじめ内服薬治療、紫外線治療には、治療効果の半面、副作用があったり、治療費が多額であったり、通院が頻繁であったりと、患者さんの負担面も生じます。多くの皮膚の病気と同様、乾癬の治療でも主役はやはり外用療法(塗り薬)です。約10年ぶりで、新しい乾癬の外用剤(塗り薬)が近々発売となります。その新薬のことも含め、もう一度乾癬の外用治療について勉強したいと思います。
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by kobayashi-skin-c | 2014-09-10 15:50 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2014年7月教室 『その赤ら顔、ひょっとして酒さ?』
「酒さ」はいわゆる「酒やけ」と呼ばれる顔の赤みですが、お酒とは全く関係なしに「赤ら顔」に悩まれる方が増えています。以前にも一度「皮膚の健康教室」で取り上げましたが、再度酒さの原因・治療について勉強しましょう。
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by kobayashi-skin-c | 2014-09-10 15:48 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2014年8月教室 『あせ、汗、アセ』
北海道の夏はあっという間に通り過ぎ、いつの間にやら秋風が吹き始めました。朝・夕は肌寒く感じる日もあります。でも、ちょっと前までは、蒸し風呂のような暑さが続くこの夏の日本列島。何だか毎年のように、何十年ぶりの暑さとか、日本最高気温の町とか、話題になりますね。「地球温暖化現象」は深刻!そんな時に『汗』の話題では、なお一層のこと暑苦しくなりそうですが、今『汗』が見直されています。そのキーワードは『汗は最高の天然保湿ローション』なのです。アトピー性皮膚炎は、皮膚の症状が夏に悪化することが多く、『汗は大敵!』と思われがちでした。しかし最近の研究では、アトピー性皮膚炎の方で多くみられる『乾燥肌、皮膚バリア障害』にとって、汗をかくことが何よりの保湿となり、皮膚症状の改善にも役立つことが分かってきました。そんな『汗』についてちょっと勉強してみましょう。
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by kobayashi-skin-c | 2014-09-10 15:46 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2013年12月17日教室 『今年を振り返って』
小林皮膚科クリニックが2000年5月に開院して以来、毎月『皮膚の健康教室』を続けてきました。クリニックのロビー・待合室が教室の会場です。その時々の話題や、みんなに知っておいてほしい知識、みんなで考えたい皮膚のトラブルなどをテーマに数を重ねてきました。それともう一つ、旅好き・山好きの私は写真をとることも好きなので、ときおり教室のテーマは旅と山になることがありました。とりわけ写真機がデジカメとなり、スライド映写がパソコンから直接プロジェクターへと接続できるようになってから、時折々の自然の景色や花々を見ていただけるようになりました。心の安らぎも皮膚科治療の一環、「とりわけ私たち医療者の心の平穏が大切である」をモットーに(こじつけして)、最近では山・旅に出かける機会も増えてきました。

今年は、有田副院長がクリニックに加わり、さらにそのレベルがアップしました。2月のイタリア・ドロミテスキーに始まり、5月のネパール、7月の大雪トムラウシ縦走、8月の剱岳・立山縦走、9月のバリ、そして11月の九州の山々、と今までにないほどの勢いで歩き、登り、滑り、思い出を写真におさめました。

このホームページのブログ "Photo & Essay" に記録しておりますのでご覧になって下さい。
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by kobayashi-skin-c | 2014-06-01 18:05 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2013年11月26日教室 『お子様がニキビで悩まないよう、お父さん、お母さんも知っておきたい豆知識』
「たかがニキビ、されどニキビ」

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 一生のうちでけっして通り過ぎることができない皮膚のトラブルが「ニキビ」。だれしもが経験する「ニキビ」。ニキビは、正確には「尋常性ざそう」とよばれます。ほんとうに「たかがニキビ」と済ませて良いのでしょうか。お父さんも言うように「ニキビは青春のシンボル、気にすんな!」で終わらせて良いのでしょうか。

 けっしてそうではありません。ニキビが患者さん(悩む人)にとって重大なQOL障害となることが分っています。QOLとは、"Quality of Life"。「生活の質」、「生きることの充実感」と呼ばれています。ニキビが起こる年齢はちょうど思春期であり、子供の体が大人の体質に変わるころです。男子であれば声変わりするころ、女子であれば初潮を迎えるころです。この思春期には体の内外にたくさんの変化が起こると同時に、心・精神にも重大な変化が起こり始めます。「自我の形成」です。「自分って何だろう?誰だろう?」、「お父さん、お母さんに甘えたい、でもうっとうしい」などの感情が心の中で渦巻きはじめます。そして、ついには「自我の確立」に至るのですが、自我の確立には「自らへの自信・自尊心」が欠かせません。この「自らへの自信・自尊心」の形成を、ニキビが大きく損なわせることが分っています。

 人はだれしも"Body Image"を持っています。窓ガラスや鏡に映る自分の姿を確かめたり、自分の影の足の長さを測ったり、自分を確かめながら、自分の理想の姿を心の中に描いています。しかしながら、理想の姿(ideal body image)と現実の姿(real body image)の間には溝があり、その溝に苦しみます。
 好きな人ができたりすると、その苦しみはなおいっそうのこと深まります。理想の姿を見て欲しいのに、自分の現実の姿はなんとかけ離れているのだろうか、と。意外とその好きな人の瞳の中ではニキビなんて見えてないのですが、でもBody Imageは自分の心の中のできごと。好きな人の気持ちも確かめないまま、「自らの自信・自尊心」に障害を受けて自信を失ってしまいます。ことに顔の皮膚の変化は心の中の重大なできごととなり、自我の形成に大きな悪影響をおよぼしてしまいます。

それがニキビの問題なのです。

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お父さん、お母さん、「たかがニキビ」ではありません。
「されどニキビ」。世界のニキビ治療は大きく変わっています。 わが国でも日本皮膚科学会が「尋常性ざそうの治療ガイドライン」を作成しました。今まで以上に実証性をふまえた治療が可能となっています。ニキビの治療は大きく変わりました。病院で処方される新しい外用薬がニキビの治療・予防に役立ちます。
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ニキビは皮膚の病気です。皮膚科医の適切なアドバイスが必要です。お父さん、お母さん、「たかがニキビが、・・・」と言う前に、「皮膚科で相談してごらん」の優しい言葉を忘れずに。新薬の情報・使い方は、クリニックのパンフレット等でお知らせいたします。


思春期、男性ホルモンの分泌が高まります(女性でも副腎で男性ホルモンは作られます)。男性ホルモンは皮膚にも、とくに毛嚢(毛包)、脂腺、アポクリン腺に働き、毛包出口(毛穴)の角質肥厚が起こり、同時に高まる脂腺の活動・皮脂の増加によってニキビが出現します。これが白ニキビ、黒ニキビです(面ポウ)。毛包にはニキビ菌が常在しているため、毛穴が閉じると同時にニキビ菌の活動が活発となり、炎症を起こしてしまいます(赤ニキビ)。さらに炎症のため毛包が破壊されると、強力な異物反応がおこり、大きく腫れたり、皮膚のひきつれが起こってしまいます(ニキビケロイド)。
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毛包出口(毛穴)の角質肥厚を改善させるのが新しいニキビ薬=アダパレン(商品名ディフェリンゲル)です。ニキビ菌を抑える薬としては抗菌薬であるミノマイシン、ルリッド、ファロムなどの内服薬、ダラシン、アクアチムなどの外用薬が使われます。

重症のニキビ治療が、まだわが国では遅れています。大きなぶよぶよとしたニキビができたり、ニキビ痕がケロイド状になったりするタイプは、既存の内服薬、外用薬で容易に改善しません。海外では「イソトレチノイン」の内服が使われています。副作用も少なからずあるため、日本では保険薬として認可されていませんが、重症ニキビには有用であり、わが国でも医師の適切な処方のもとで保険薬として使えるようになることを願っています。
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by kobayashi-skin-c | 2013-11-28 19:23 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2013年10月26日教室 『皮膚の腫瘍 -放っておいて良いの?皮膚ガンなの?』
「しずちゃん」こと南海キャンディーズ・山崎静代(34才)のボクシング専属トレーナーだった梅津正彦さん(享年44)が7月23日、末期がんで亡くなった。そのがんは「メラノーマ(悪性黒色腫、皮膚がん)」だった。
このため、クリニックには皮膚がんを心配する多くの患者さんが訪れるようになった。
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皮膚はたいへん巧妙に作られており、さまざまな働きを行うとともに、たくさんの種類の細胞からできています。このため皮膚にできる腫瘍にもいろんな種類、さまざまな形や色があり、診断・治療はたいへん難しいものです。
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現在では、診断の精度をあげるために「ダーモスコピー」で腫瘍を観察しています。小林皮膚科クリニックでも行っています。しかし、それでも皮膚の腫瘍は要注意!
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by kobayashi-skin-c | 2013-11-06 19:59 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2013年9月27日教室 『日本乾癬学会の話題から』
9月6日,7日、東京(東京ドームホテル)において第28回日本乾癬学会が開催されました。今年のテーマは『大きなうねりを! ~乾癬の基礎から臨床まで~』であり、学会会長・日本乾癬学会理事長の中川秀己先生から、「生物学的製剤が乾癬治療に導入され、飛躍的に治療が進歩し、難治性の乾癬も制御可能な時代に突入するとともに、乾癬の病態解明にも大きく役立っています。そういう時代であるがゆえに質の高い乾癬診療と治療の全国的な均一化を図ることが要求されていると思います。・・・・・・・(中略) 乾癬診療に携わる我々皮膚科医にとって、疾患の重症度に関わらず大切にしなければならないことは、医師・患者関係をしっかりと構築すること、同じ乾癬という診断でも、患者さん一人ひとりの抱える心理・社会的問題はそれぞれ異なりますので、個別の背景を十分に理解し、訴えを親身になって聞いた上で、患者さんと話しあいながら治療方針を決めて行く "shared decision making" が大切となってきています。これらのことを念頭におきながら、学会に参加することで乾癬の基礎・臨床に携わる先生方御自身に『大きなうねり』が生じることを心から期待しています。と同時に、決してこれが『つなみ』となり患者・医師に不利益が生じることがないよう注意しなければならない、決して『つなみ』にしてはならない」と開会の挨拶がありました。

小林皮膚科クリニックからは、本院院長小林 仁、副院長有田 賢、8・3プラザ院長小林衣子の3名が参加しました。今回の健康教室は「学会の話題」について、有田 賢が報告を行いました。

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まず、もっとも印象深かった話題から
『レセプトデータに基づいた疫学』(東京大学薬剤疫学 久保田 潔先生)
「レセプト」とは「医師の保険者に対する医療行為請求書」。現在99%の医療施設がこのレセプトをコンピュータから行うため、そのデータはすべて大型コンピュータに保管されるようになりました。この膨大なレセプトデータ(ビッグ・データ)を利用して、「日本でどれだけの乾癬患者さんが、2010年度に医療機関を受診したか」を解析しました。いままで私たちも「いったいどれぐらいの乾癬患者さんが日本にいるのか」、推定でしか知りませんでしたので、日本における乾癬の発症頻度を、実数にかなり近い形で知ることができたものと思います。
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次に新しい治療の話題から、①顆粒球吸着療法、②生物学的製剤、③ターゲット型ナローバンドUVB照射治療
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患者さんのQoLに関わる重大な事柄に、「乾癬の情報をいかに得るか」ということがあります。このことについて、
『乾癬治療で民間療法に依存しやすいのは、インターネット検索で正確な治療知識が得にくいからである』(筑波大学病院看護師 梅津 努先生)
がありました。
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基礎研究の分野では、『乾癬の原因遺伝子』研究に目覚ましい動きがありました。尋常性乾癬の原因遺伝子は研究の進歩とともに、その候補が増えるばかりですが、膿疱乾癬では、たった一つの遺伝子の変異が家族性膿疱性乾癬を起こすことが、すでに明らかにされていました。わが国の膿疱性乾癬患者さんでも、この遺伝子に変異があり、尋常性乾癬とは異なることが示されました。
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乾癬学会の終了後には、全国乾癬患者学習懇談会が同じ東京ドームホテルで開催され、約200名の患者・家族そして医療関係者が集いました。東京医科大学皮膚科教授 三橋善比古先生から『乾癬よもやま話』と題した講話があり、感銘深いものでした。さらに懇親会が開かれ、乾癬のよもやま話に花を咲かせました。

来年は、高知市において乾癬学会が開かれます。『うねり』が南海トラフ地震にならないよう、祈ります。
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by kobayashi-skin-c | 2013-11-06 18:57 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2013年8月教室 『さらに進化する乾癬治療、そしてアトピー性皮膚炎への応用』
生物学的製剤の登場は乾癬治療に画期的な変化をもたらし、乾癬の患者さん、とりわけ乾癬性関節炎のために日常生活が困難であった患者さんにとって、大きな福音となっている。乾癬発症のメカニズムが明らかにされつつある現在、さらに新しい生物学的製剤が開発され、またさらに進化した内服薬も現在試されている。大きく変わりつつある乾癬治療薬について皆さんに紹介したいと思います。
 また、生物学的製剤はアトピー性皮膚炎の治療にも応用されようとしており、現在の最新情報をお知らせいたします。

乾癬の免疫学的発症メカニズムが明らかになるにつれて、サイトカインと呼ばれる免疫反応の制御タンパクをブロックする選択的標的療法=生物学的製剤治療が、次々と開発されるようになりました。昨年参加したスウェーデン・ストックホルム市での第3回世界乾癬・関節炎会議では、その最先端の薬剤の研究結果が発表され、その優れた効果に、正直びっくりしました。そしてそれらの薬剤のいくつかは、現在わが国においても臨床試験が進行中です。

乾癬の免疫学的発症メカニズム研究が、TipDC - Th17モデルに向かっていること、そしてその制御のキーとなるIL-18をブロックする生物学的製剤が登場したことを、2012年7月教室の抄録で紹介しました。参考にしてください。

さらに生物学的製剤ではない、選択的標的療法薬が登場し、早くもリウマチでは昨年12月から使用され始め、乾癬でも臨床研究が進められています。Tリンパ球のサイトカイン産生を、細胞内で制御する酵素「JAK」を抑制する薬剤で、トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)です。
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海外の試験結果では、PASI 75達成率が67%に達していました。PASI 75とは、「乾癬がすごく良くなった」と表現されるような優れた効果です。新しい生物学的製剤の抗IL-18療法の80%には劣りますが、トファシチニブは内服する薬なので、病院で注射を受ける必要がなくなります。また生物学的製剤と違って、薬の製造に生きた細胞を使う必要がなく、大量生産も可能であることから、コスト面で大幅に便利になると期待されていました。

ところが、なんとトファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)は1錠が¥2,539!乾癬では1日に2~3錠が必要ですから、費用は1日¥5,078~7,617。これは現行の生物学的製剤(レミケード、ヒュミラ、ステラーラ)よりも高い値段になります。経済的な理由から生物学的製剤治療に踏み切れない方々も多いのが現状ですが、トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)はその切り札となる薬剤ではありませんでした。

さらにトファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)で治療中のリウマチ患者さんに、リンパ腫が続けて出てきたことから、副作用なのかどうかより詳しい検討が必要となっています。

次にアトピー性皮膚炎への生物学的製剤治療の応用ですが、アトピー性皮膚炎の免疫学的発症メカニズムも近年ずいぶんと分るようになってきました。
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この中でキーとなるIL-4、IgEをピンポイントに抑える二つの薬剤が研究されています。

一つは、インターロイキン4受容体αサブユニット(IL-4Rα)に対する高親和性完全ヒト抗体であるdupilumabです。今年の米国皮膚科アカデミで報告され、dupilumabを150 mgまたは300 mg、4週間にわたって週に1回皮下投与した場合、局所外用薬でコントロール不十分な中等度から重度までのアトピー性皮膚炎(AD)患者の徴候および症状を有意に改善することが明らかになりました。

もう一つはすでに喘息治療薬として昨年11月から使われ始めたゾレア®皮下注用75mg(Xolair® for s.c. injection)オマリズマブ(遺伝子組換え)(Omalizumab)ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体です。
今のところ気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る) だけに保険適応となっていますが、アトピー性皮膚炎治療への応用が計画されています。しかしご多分にもれず高価すぎることがネックです。薬価は75mg 1瓶 35,642円で、成人では通常4~5瓶が必要となります。

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進化し続ける生物学的製剤治療ですが、ほとんどすべての生物学的製剤は欧米の巨大製薬メーカーで作られています。開発と製造には巨大な資本が必要であり、その回収のためにはたいへん高額とならざるを得ないのでしょう。優れた薬であるだけに、またそれによって救われる人が多いだけに、派生する格差、医療資源(国民医療費)枯渇も悩ましい問題です。みんなで大切に扱っていきましょう。
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by kobayashi-skin-c | 2013-08-28 10:39 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2013年7月23日教室 『ネパールの人々の暮らし』
ヒマラヤトレッキングは、山歩きと同時に村々を訪ねる里歩きでもある。8000mの高峰を眺めるのは、ネパールの古い村々から、山里の段々畑から、深い谷にかかる吊り橋の上からであることも多い。そこで垣間見るネパールの人々の暮らしは、自分が生まれ育った昔の日本の情景を彷彿とさせる。人々の暮らしに触れるホームステイに、トレッキングの最後、ダディン県パトレ村を選んだ。去年のトレッキングでお世話になったガイドのディリさんの奥さんの実家である。
 アンナプルナトレッキングを終え、ポカラを出発。ポカラ・カトマンドゥ間の主要道路からさらに1時間、細く入り組んだ山道を車で行き、その道路の終点からはさらに10km、乾いた赤土の山道を歩いてようやくたどり着いたパトレの村。待ち受けてくれた村の人々、そしてその彼らの暮らしについて皆さんに紹介いたします。

また村の小学校を訪ね、ネパールの農村に暮らす子供達に
「アトピー性皮膚炎はあるのか?」

について調査を行いましたので、その結果も合わせて紹介いたします。


c0219616_21174130.jpgパトレ村は乾いた赤土の畑にバナナの木が茂り、民家の壁は赤土で塗られていた。









私たちは、村の入口で村長さんはじめ多くの人たちの出迎えを受け、若い女性からブーゲンビリアの首飾りをつけてもらった。
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丘の上からパトレ村を見下ろす。村の総戸数は約50戸、200人が暮らす。最近では一家ごとカトマンドゥに引っ越してしまった家族もあり、空き家も生じているとのこと。日本の農村と同じことがネパールでも起こり始めている。

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ほとんどの民家は赤壁に青い柱で縁取りがされており、なかなか美しい。庭先は農作業場、1階では牛、山羊、ニワトリが飼われていた。
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薪はネパールの人々の生活になくてはならないもの。どこを旅してもこうして薪を担ぐ人々を見かける。たいていは女性か、子供である。







村に、下水・上水設備はなく、昨年トイレ掃除や洗濯に使える水の供給設備を完成させたが、飲水用、料理用には使えない。飲水はもっぱら近くの谷にわき出る水が供給源で、村人はかめを持って水汲みに行く。電気は24時間ではないが、小型の水力発電機で供給されている。しかし電灯のみで、そのほかの電化製品はない。燃料はすべて薪であり、家の周りには1年分の薪が積まれている。
c0219616_1041489.jpg私たちには沸かした水を提供してくれた。貴重な水であり、まず左の手のひらを上手にまるめ、そこに水をとり、右手、顔の順番に洗う。






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台所兼食堂兼居間
食事中とつぜん牛の鳴き声が聞こえて驚いたが、階下は牛小屋となっている。
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薪を使って調理。火を燃やすのはこの場所だけで、冬はここで暖をとるとのこと。
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家の周りに積まれた薪。村が所有する山から、年に一度だけ伐りだしてくるのだそうだ。
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食事は基本的に「ダルバート」。「ダル」は豆スープ、「バート」はご飯。これに「アチャ」と呼ばれる漬物・野菜のお皿が数種類。野菜は豊富であるが、タンパク質は少ない様子。私たちのためには、1羽の鶏がしめられていた。申し訳ない。

ちなみに、ネパールについて(Wikipediaから引用)

正式名称は、ネパール連邦民主共和国 संघीय लोकतान्त्रिक गणतन्त्र नेपाल 。
面積は140,800km²
本州を除いた日本(北海道+九州+四国)にほぼ等しい。

人口 29,519,114人(2008年推計)

人口密度 209.65人/km²

年齢別人口構成
0-14歳: 38%
15-64歳: 58.2%
65歳以上: 3.8%(2008年推計)

平均年齢
全体: 20.7歳
男性: 20.5歳
女性: 20.8歳(2008年推計)

ネパールの経済状況
2011年のネパールのGDPは185億ドルであり、鳥取県より小さい経済規模である。一人当たりのGDPは652ドルであり、非常に低い水準である。2011年にアジア開発銀行が公表した資料によると、1日2ドル未満で暮らす貧困層は2200万人と推定されており、国民の70%を超えている。国際連合による基準に基づき、後発開発途上国に分類されている

訪れたパトレ村の産業は農業のみであり、ほぼ自給自足で現金収入はごく限られたものと推測された。現金収入を得るには、都市に出ざるをえず、カトマンドゥに人口が集中するようになった。しかしカトマンドゥでも就労の門は厳しく、スラム街が形成されている。私たちがお世話になったホームステイは、現村長と、村出身のガイドであるピタンバル氏の協力で実現されるようになったもので、村おこしとして期待されている。村を挙げての歓待はそんな事情もあるのだろう。

ネパールの子どもたちに、アトピー性皮膚炎はあるか?

ネパールの教育事情は?

識字率:48.6%。
(15歳以上で読み書きできる人の割合)
うち男性 :62.7%
うち女性 :34.9%
(2001年国勢調査)

c0219616_12553289.jpg私たちはパトレ村小学校を訪ねた。c0219616_1257138.jpg













校舎の壁には、この学校が日本のNPOの協力のもとに設立されたことを顕すプレートが、飾られていた。
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全校生徒は約80人、1年生から10年生まで(5歳~15歳)。5歳未満の幼稚園も併設されている。パトレ村近隣の村からも児童・生徒が集まっているとのこと。
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最上級生の授業を聴講させてもらった。すべてネパール語で授業は進み、さっぱり理解できなかったが、どうやらネパールの歴史について学んでいたようだ。
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副校長、PTA会長の同意をいただき、1年生クラスと、保育園クラスの全員について、皮膚の健康調査を行った。c0219616_1381852.jpg



















その結果、
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(首、肘の湿疹はこの年代のアトピー性皮膚炎では必発症状)

この結果に対し、次のように考えました。
観察数は少ないが、
①アトピー性皮膚炎症状を持つ児童はいない。
②鼻汁を出している児童の割合が高く、衛生状況の悪さが推測される。
③はたけ(単純性粃糠疹)は、乾燥肌・日焼け肌をもとに常在菌が原因となって生じると考えられている。
④「鼻汁」(気道感染)、「はたけ」(常在菌)が免疫力を高めており、以前から指摘されているアトピー性皮膚炎の発症原因「衛生仮説」が実証された!?
⑤教師・保護者からの聴取では、「風呂はもちろん皆無、水浴びも夏で月に1~2回程度、冬はしない。石鹸はまれにしか使わない」のが子供たちの常であり、日本の子供たちの衛生環境とは大きく異なることが分かった。
⑥日本では「大人たちも子供たちも、皮膚を、体をきれいにし過ぎる」ことがアトピー性皮膚炎の原因となっているのではなかろうか。

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鼻汁とはたけc0219616_1344102.jpg

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ホームステイの家の洗い場の石鹸。オレンジ色は洗濯用、白が人用であり、頭も、体も、手もこれだけ。日本の石鹸、シャンプーの氾濫のほうがむしろ異常のように思える。






3日目の夜、ホームステイの家の庭には、多くの村人が集まってきた。もしかすると村人全員だったかも知れない。子供たちも、女たちも、若者たちも、みんなが太鼓に合わせて唄い、踊り、笑った。私はロキシー(ネパールの手製焼酎)に酔い痴れた。翌朝、また多くの村人に送られながら、パトレ村をあとにした。
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c0219616_1474415.jpg正直、私たちに3日間の村の生活は厳しかった。山のトレッキング生活のほうがむしろ快適であったように思う。それは欧米人・日本人向けに商業化されたトレッキングルート、ロッジだからなのだろう。




ネパールの人々の暮らしは、私が過ごした50年以上前の日本の暮らし・風景に通じるものがある。しかし、そのころの日本はもっと希望に満ちあふれ、年々、どんどんと生活は快適に楽になっていった。今のネパールでは未来への期待感が少ない。資源・産業の乏しさに加え、政治の混乱がネパールの発展を妨げているように思う。未来のネパールがどこに向かうのか。欧米型の近代社会がかならずしも正しいとは言えない。ネパールの未来の子供たちは薪を背負い続けるのか、それとも・・・・・・・・・・
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by kobayashi-skin-c | 2013-07-23 21:22 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2013年6月25日教室  『ヒマラヤ・アンナプルナトレッキング』
昨年に続き三度目のヒマラヤトレッキング。今回の目的は、アンナプルナ・サンクチュアリ(4130m)。世界(すべてヒマラヤ山脈にあり、ネパール・中国・パキスタンにまたがる)に14座ある8000m峰では最初に登られたアンナプルナⅠ峰(1950年フランス隊が初制覇)を中心とする、アンナプルナ・ヒマールの内懐である。アンナプルナⅠ峰の頂を目指す登山者の登山基地があり、アンナプルナ・ベースキャンプ(ABC)とも呼ばれている。
 札幌から成田へ、成田からインド・デリーへ、デリーからカトマンドゥ、さらにポカラ、そしてポカラからジョムソムへ飛び、トレッキングが始まった。ムクチナートへの巡礼、ジョムソム街道の破天荒バス旅行、そしてタトパニからゴレパニへ、シャクナゲが咲き乱れる山々を横切り、そしてアンナプルナ・サンクチュアリへと向かった。

ブログ「photo & essay」で紹介しています。ご覧ください。
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by kobayashi-skin-c | 2013-06-26 18:46 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)