カテゴリ:「皮膚の健康教室」抄録( 59 )
2012年7月24日教室 『第3回世界乾癬・乾癬性関節炎会議に出席して』
6月27日-7月1日、スウェーデンのストックホルム市において、第3回世界乾癬・関節炎会議が開催されました。IFPA(世界乾癬患者会連盟)が主催するもので、患者さんが主体の患者さんの目線に沿った会議で、最新の乾癬の研究、治療について世界の第一線の研究者から報告・討議がなされました。また乾癬の理解を深めるための世界的活動の方針についても代表者で話し合われました。日本の代表者として参加させていただきましたので、その模様を詳細に報告したいと思います。
北極圏にほど近いストックホルムの夏は、とてつもなく朝が早く、夜が遅い。街々は光に溢れ、水面はきらきらと輝いていた。ブログ「PHOTO & ESSAY」     http://ksclinic.exblog.jp/もお訪ねください。

3年に1回のこの会議は6年前の2006年、同じストックホルム市で第1回目が開催されました。日本はその前年にIFPA加盟を果たし、乾癬の会(北海道)から3名、山形乾癬の会から1名、大阪乾癬患者友の会から1名、そして私の総勢6名が参加しました。その時の会議参加者が600名、第2回目が800名、そして今回の会議にはじつに1,200名の参加者があり、内訳は各国患者会代表者、医師、研究者、製薬メーカー関係者、報道関係者と多岐にわたるものでした。日本からの参加者は私のほかに、東北大学の相場教授、製薬メーカーから5-6名でした。

今回の会議はまだできたばかりのストックホルム市ウォーターフロント会議場。目の前にストックホルム市庁舎、メーラレン湖を望む大変美しい会議場で、ここで5日間勉強し、討議し、交流を深める機会を得たことに、大変感激しました。

c0219616_950291.jpg開会の挨拶をするIFPA会長Lars Ettarp氏
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この会議の学術部門チーフ、米国テキサス大学皮膚科教授Alan Menter 氏
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ウォーターフロント会議場はガラス張りで、その向こうにノーベル賞授賞式後に開かれる晩餐会、舞踏会会場となる赤いレンガの市庁舎、メーラレン湖のパノラマが広がり、あたかも映画のスクリーンを見ているような錯覚におちいる。
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ストックホルムは「水の都」。氷河が刻んだ複雑な入り江、湖の辺に町が広がる。空が広く、青く、白い雲が美しい。








第3回世界乾癬・関節炎会議のテーマは、
“Psoriasis – a global health challenge”
(乾癬 ‐ 地球的規模の健康への挑戦)


global(地球的規模)とは、乾癬は
乾癬に苦しむ個人から、家族・友人、そして皆を包む社会、地域、
国、そして全世界に広がるということ

health(健康)とは、乾癬は
皮膚の深さだけにとどまらず、関節炎を伴いやすく、精神・心理的な
負担、さらに心臓血管障害、糖尿病、クローン病など全身の健康に
関わるということ

challenge(挑戦)とは、乾癬は
医学的・科学的に解明を目指して、社会的・世界的な取組み、
もちろん患者個人としてのチャレンジが試される病気であること

会議の冒頭に、IFPA会長のEttarp氏から "a global health challenge" への意気込みが高らかに宣言されました。


学術面で最初の講演は、米国のJames Krueger教授による「Th1細胞,Th17細胞,Th22細胞が複雑なサイトカインネットワークによって、細胞レベル、分子レベルで乾癬を引き起こす」でした。その要約を示すスライドを幾枚か失敬します(Krueger先生、ごめんなさい)。

c0219616_1193592.jpg乾癬の原因究明、病態(病気の起こり方)解明の主役となった免疫学的研究の最先端を行くKrueger先生の、最新情報がコンパクトにまとまった素晴らしい講演でした。生物学的製剤の治療根拠となるサイトカインネットワークは、現在TipDC - Th17経路によって、きわめて明快に説明されるようになり、Th17細胞が放出するIL17が表皮細胞(ケラチノサイト)の乾癬化を起こします。現在使用されている抗TNFα製剤、抗IL12/23製剤が、より上流(免疫反応の根っこ)で免疫反応を抑制するのに比べ、IL17はより末梢における乾癬の原因サイトカインであることから、IL17の抑制は、より乾癬をピンポイントで、そして副作用もミニマムにすることが期待される。


c0219616_1110375.jpg現在、3種類のIL17抑制薬剤が開発され、治療研究が進められている。
①IL17A抗体(Secukinumab Novartis社)
②IL17A抗体(Ixekizumab Lilly社)
③IL17A受容体抗体(Brodalumab Amgen社)

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その一つ、Secukinumabの効果(PASI75)=すごく乾癬がよくなる)では、たった3回の注射で90%以上の患者がPASI75を達成する。

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PASI90(=乾癬がほとんどなくなる)でみても、60%の患者で達成されている。
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Secukinumabの臨床効果。上の段は「プラセボ(偽薬)」、下の段がSecukinumab。
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Ixekizumabの効果(PASI90)。約80%の患者で達成されている。驚異的である。
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Brodalumabの臨床効果
















印象深かった講演をもう一つ、詳細に紹介いたします。
米国のAnne Bowcock教授の"The genetics of psoriasis: Old risks, novel loci (乾癬の遺伝子研究:昔から言われていた異常、新しく見つかった場所)です。Bowcock教授は、乾癬の原因遺伝子について世界で最初に報告した研究者です。ここでも少し講演スライドを拝借(Bowcock先生、ごめんなさい)。

c0219616_1215920.jpgBowcock教授は1999年、乾癬家系の詳細な遺伝子調査から第17染色体に乾癬と関わり深い遺伝子異常があることをみつけ、科学雑誌Scienceに報告した。21世紀を迎える直前のことであり、遠からず乾癬の原因遺伝子が確定し、完治治療を開発することも夢ではないと、当時期待したものでした。
ところが、次々と関連遺伝子はみつけられるものの(現在は30種類以上)、肝心の原因遺伝子、特定のタンパク、メカニズムは不明のままでした。

c0219616_1224152.jpgBowcock教授の息の長い研究は、第17染色体上にあるCARD14と呼ばれるタンパクの、その異常が直接乾癬を起こすことを説き明かしました。CARD14は細胞膜上にあるタンパクで、細胞外で起こる炎症から生じる様々な刺激物質を、細胞の膜から細胞の中へ伝える役割を果たしています。その伝達経路はNFκBを介しています(乾癬ではこの経路が活発に動いていることが、高知大学の佐野教授により解明されました)。
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遺伝性膿疱性乾癬患者では、このCARD14遺伝子に点突然変異が起こっていることを発見しました。この点突然変異だけで、特殊タイプではありますが、乾癬の原因が特定されたのです。
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点突然変異だけではなく、CARD14遺伝子に起こりやすい変異も、ほかの遺伝子異常(PSORS1、MHC遺伝子)、あるいは環境変化が加わると乾癬を引き起こすことも証明しました。






大変感銘深い講演でした。
会議の模様、IFPA代表者会議の報告は、また後日掲載いたします(『2012年9月教室抄録』をご覧ください)。
ブログ「PHOTO & ESSAY」もご覧ください。
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by kobayashi-skin-c | 2012-07-26 09:55 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2012年6月教室 『白斑、あざ、シミのカバー:資生堂パーフェクトカバーファンデーション』
顔に現れた白斑、あざ、シミ。たいへん気になります。でもなかなか治療では改善されません。そんな時、さっとお化粧でカバーできたなら、人目を気にせず仕事に、学校に出かけられます。「スキンカムフラージュ」について以前ご紹介しておりましたが、資生堂からもパーフェクトカバーファンデーションが発売され、実用的になっています。資生堂学術指導員の村井様にお越しいただき、実技を踏まえながら、その製品・テクニックについてご説明いただきました。

たくさんの参加者があり、お化粧の説明ならではの華やいだ雰囲気のもとで健康教室は開かれました。

この資生堂パーフェクトカバーファンデーションは北海道内でも販売されています。詳細はクリニックにお問い合わせください。
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by kobayashi-skin-c | 2012-07-11 17:19 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2012年3月教室 『20周年目を迎えた乾癬の会』
全国に先駆けて始まった患者会「乾癬の会」が設立されて、今年で満20周年を迎えました。20年前のことを振り返りながら、いまや全国的なうねりとなった乾癬患者会のこれからの役割について、皆さんと一緒に語り合いました。医療はみんなの力で大切に、着実に育てるもの。これからの医療の方向に患者会はなくてはならない存在です。

参加していただいた方から、

「乾癬のつらさは、他人にはなかなか分かってもらえません。いちばん身近な家族でさえも、本当のつらさを分かってくれてはいないと思います。でも、乾癬患者同士はピタッと分かるのです。お互いが分かりあえるのです。その仲間の大切さを何よりも大事にしたいです。」

「自分は、通っていた病院のポスターでたまたま乾癬の会の学習懇談会の開催を知り、初めて参加しました。その時に、自分が求めていたものはこれだ、と確信し、以後すっかりはまってしまいました。」

「私はアウトドアやスポーツをやったりしてけっこう趣味が広いのですが、乾癬の会でみんなが集まるあのひと時がなによりも楽しい。」

「乾癬の患者は全国にもたくさんいます。ことに今たいへんなのは『3.11』で傷ついた仲間達です。宮城に乾癬患者会ができていますが、その会員の方のなかに、今も連絡が取れない方がいます。家族を失くした方もいます。福島にも乾癬患者会がありますが、原発事故のため住むところを失ったり、治療する場所が無くなったりした方がいます。けっして『3.11』を風化させてはなりません。乾癬の仲間としても、いっそう絆・連帯を深めていきたいと思います。」

といったお話しがありました。

また乾癬の会草創期に事務局長をされた岡部さんが、思い出の写真とともに、会の発展の歴史についてお話しされました。そして最後には、これからの患者会が目指す方向について以下のようにまとめられました。

①原因解明と完治・現状よりの改善・心の癒し(QOL)
 ―患者の努力、医師・コメディカルの支援、行政による救済―
②患者・会員が主役の患者会活動 
     全国的、全世界的規模の患者会を展望
③現代医学、東洋医学を結集して、完治をめざす研究の発展 
  ・新しい治療法の探求=医師と患者の協力・協同 
  ・人間が持つ治癒力を引き出す=温泉療法、リハビリの経験から
④どんな社会が難治性疾患から患者を解放できるか

4月14日(土)午後3時から『乾癬の会20周年記念学習懇談会』が
かでる2・7 820会議室で開かれます。
講演『皮膚は地球を救う』(大阪大学大学院教授 玉井克人先生)
そして皆さまからの質疑応答があります。皆さま奮ってご参加ください。
くわしくは、「お知らせ」の記事を参考にしてください。


昨年12月10日に発行された乾癬の会会報『陽だまり』に、乾癬の会の思い出をつづった「乾癬の会歴史ヒストリア、私が乾癬にいちばん近づいた日」を寄稿いたしました。長文ですが、お読みください。

「乾癬の会歴史ヒストリア、私が乾癬にいちばん近づいた日」
            相談医 小林皮膚科クリニック院長 小林 仁

 日々診察室の中では、乾癬の具合を診るため、皆さまにぐっと近づいて仔細に皮膚を観察したり、あるいは指で触ったり、そっと手でなでたりさせていただいています。ですから、いつも乾癬の皮膚にはたいへん近づいているのではありますが、私が乾癬にいちばん近付いた日は、1993年9月、初めての豊富温泉湯治ツアーのときだったように思います。今でこそ湯治ツアーはもう今年で19回目を迎え、乾癬の会になくてはならない年中行事となっています。私自身も初回以来連続参加の常連となり、ふれあいセンターの湯船では経験豊かな主(ぬし)の風情でおりますが、今となっても第一回目の湯治ツアーのあの時の光景が鮮明に頭によみがえります。

 1992年1月、凍てつく寒さの中、北海道大学医学部の旧校舎講堂で乾癬の会が発足しました。北海道新聞紙面にこのことが伝えられると、一気に会員の数が増え、その会員の中に「豊富温泉に行くと乾癬が治るよ」と教えてくれる方がいました。そのことを乾癬の会の役員の方々に伝えると、さっそく二人の女性役員が現地にとび、体験湯治を行ない、皮膚症状の推移を写真に収めて皆に披露してくれました。それから役員の皆さまの努力と、豊富町役場のご理解に支えられ、第一回目の湯治ツアーの準備はとんとん拍子で進められました。そしてそのツアー初日、北海道大学病院の駐車場に豊富町役場のバスが横付けされ、約50名のツアー参加者を迎えてくれました。乾癬の会第二代会長の高鍬さんを団長に出発です。初めての豊富湯治ツアー、初めて見る顔、私をはじめ皆さん一様に緊張していました。バスは日本海側の国道を豊富に向かって一直線に北上。左手に日本海を間近に見ながら、途中オロロン鳥で有名な天売、焼尻の島々を眺めたり、自己紹介をしながらお互いにうちとけていきました。やがて利尻富士の頂きがぽっかりと見えはじめ、天塩川を渡るころ、秋の陽は水平線に沈んでいきました。夕陽に照らされる利尻富士、橙色に染まる空を背景に、牧場と牛の黒いシルエット。今までに見たこともない北海道の景色であり、これから辿り着く豊富も、今までに経験したことがない未知の世界であろうと、期待と不安が、どちらかと言うと不安のほうが、私の心を大きく占めていきました。

 天塩川を渡ったバスは、海岸沿いから離れて北緯45度の目印を過ぎていきます。あたりには何にもなくなりました。家も畑も牧場も見えません。一面牧草地なのか、笹原なのか、とにかくナーーンニモナイ平原、丘陵をバスは走ります。外の気温がかなり下がってきたのか窓ガラスが曇り始めてきました。やっとポツン、ポツンと家の灯りが見え始めたころ、バスの運転手さん、そうそうバスの運転手さんをしてくださっていたのは豊富町役場職員の円谷さんとおっしゃる若い男性でした、が「豊富温泉に着きましたよ」と案内してくれました。そこには、登別でも定山渓でもない、かといって山の中の秘湯でもない、なにかウラ寂れた、そう場末のキャバレーと言ったら分かりやすいかもしれない、そんな町並みの豊富温泉が佇んでいました。ますます不安になってきたものでした。けれども宿のニュー温泉閣ホテルに案内されて入ると、支配人、女将さんが暖かく出迎えてくださり、テキパキと部屋に案内してくださいました。そしておいしい夕食をいただくころ、すこし気持ちも和らいできました。さあ、そして入浴です。

 豊富町営の「ふれあいセンター」がいわゆる源泉。みんな揃ってふれあいセンターに行きました。当時のふれあいセンターは、今とは違って、もう少し手狭でした。入ってすぐのところは食堂ではなく、休憩室でした。地元の農家の方たち、漁師の方たちが家族連れでくつろいでいました。その休憩室の奥に男用と女用の浴室。現在の湯治用の浴室だけしか当時はありませんでした。ふれあいセンターに入った時から感じていましたが、工事現場にいるような石油、アスファルトの臭いが漂っています。さあ、いよいよ入浴です。

 浴室も更衣室も、地元の人たち、観光で訪れた人たちでかなり混み合っていたように記憶しています。乾癬の会のみんなはどんな気持ちで、どうやって服を脱ぐか、乾癬の肌をどのように隠さなくてはならないか心配です。周りの人たちの視線が気になります。私は乾癬を持ってはいないのだが、すごく気になります。みんなが服を脱ぎ始めるころ、思わずまわりの人たちの顔色をうかがってしまいました。そして注がれたその視線にたじろぎました。びっくりしたような顔つき、すぐに眼をそらす人、そっと覗き込むようなまなざし、なにかしら不愉快そうなしぐさ?。そのように感じるのです。その全部がちくちくと私の心を痛めました。でも、口に出す人はいません。あらわな態度をとる人もいません。ホッと一安心。でもこそっ、こそっと、ちらっ、ちらっとみんなの肌を周りの人は気にしています。ちくちくと私の心は痛みます。だってみんなは私の仲間なんだから、私は乾癬の会の一員なんだから。私が乾癬に一番近づいた日、それがこの時でした。「みなさんと乾癬を共有した」、そんな第一回目の湯治ツアーだったと今でも懐かしく思い出します。

 ところで、あの時のみなさんの心持ちはどんなだったのでしょうか。最近の豊富温泉では、私もみなさんも、ぱっぱ、ぱっぱと服もパンツも脱ぎ捨てて真っ裸。あたりまえのようにフリチン(生まれたままの姿)になって、湯治用浴室に入っていきます。石油くささも心地良く感じます。周りの人の目なんか全然気になりません。だって浴室での会話は、「あんた大したことないね、十両なみだ。俺の桜吹雪、どうだい」、「生物製剤で乾癬は少なくなったけど、ここに来るためにこの乾癬は残しておきます」、「先生、乾癬がないね・・・・・・、アトピーかい?」。今のふれあいセンターの湯治用浴室では、乾癬がないことのほうが、みんなの仲間はずれみたいで「つらい」のです。素晴らしいですね。豊富温泉の効用は、もちろん乾癬が和らいでくれることにありますが、きっとそれと同じくらいに、浴室で、休憩室で、ホテル・旅館で一緒に語り合う仲間の存在にあると思っています。

 18年前のあの日、あの時。それがなければ、今の私の医師人生ももっと変わっていたようにも思います。私が乾癬に一番近づいた日、いや、近づき始めることができた時、と言ったほうがよいでしょう。それまでは病院の診察室でしか知らなかった乾癬のことを、この時から、皆さんの乾癬に近付き、皆さんの気持ちと触れ合い、皆さんと悩みを共有し、皮膚の深さだけにとどまらない乾癬の理解が始まったのだと確信しています。これからも、私も元気に豊富に行きたいと思っています。よろしくお願いいたします。皆さまも、どうか元気に豊富にいらしてください。

 余談ですが、まだ一度も湯治ツアーに参加されていない方、それは損ですぞ。ベテラン乾癬の仲間が、暖かい豊富のお湯が、優しい豊富の人たちが、おいしい海の幸が、雄大なサロベツの原野が、星降る空が待っています。医師と看護師も同行いたします。次回第20回目の豊富湯治ツアーは、平成24年10月6~8日の予定です。奮ってご参加ください。
(注、豊富温泉は弱アルカリ食塩泉に分類されます。たいへん濃い塩化ナトリウム=食塩分を含んでいます。しかしながら豊富温泉の最大の特徴はその原油成分。お湯の表面には油膜が張り、湯中には油泥が浮かんでいます。古典的皮膚科治療法であるタール治療に類似するものと考えられます。豊富温泉がすべての人の乾癬に効能を発揮するわけではありません。なかには塩分、油分が刺激となりかゆくなってしまう人もいます。乾癬が悪化する場合もまれにはあります。湯治ツアーは二泊三日で、この間で劇的な効果・効能はすぐには現れません。でも感触的に良かったとの印象を持たれる方が多いようです。豊富の原油を手に入れて、自宅で治療に使っておられる方もいます。しかしながら油成分によるニキビ・毛包炎、油やけも起こることから医師のチェックは必要です。湯治ツアーで現地の模様を知ることも大切です。)

第1回豊富温泉湯治ツアーの思い出の写真
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by kobayashi-skin-c | 2012-03-28 14:19 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2012年2月教室
2月28日開催予定であった教室は院長の怪我のため中止いたしました。
その内容は、このブログの『PHOTO & ESSAY』に掲載しております。
『2011年の思い出、憧れのスイスアルプスを訪ねて』
『2012年1月 神々が生まれ、神々の棲むところ』
をご覧ください。
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by kobayashi-skin-c | 2012-03-28 13:37 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年12月20日教室 『お顔の赤いトラブル、「酒さ」って知っていますか?』
お顔の赤らみで困っている方、意外と多くありませんか?お酒を飲んでいるわけでもないのに、「あらどうしたの?昼っ間からお酒を飲んで!」と友達から言われた経験はありませんか。皮膚のトラブルに「酒さ」と呼ばれる皮膚の変化があります。ここでもお酒の文字が出てきます、そして俗には「酒やけ」とも呼ばれるものの、必ずしもお酒とは関係なく生じる皮膚の病気があるのです。これが意外と多い!顔の赤みで悩んでおられる方、それって「酒さ」かも。そしてそこには落とし穴もあります。皆で勉強してみましょう、顔の赤らみを。

「酒 さ」
c0219616_1803542.jpg1.「酒さ」は、30代から60代の人に多い、炎症性かつ進行性の顔の慢性疾患です。
2.「大人のニキビ」と誤って呼ばれることもありますが、「酒さ」はまったくニキビとは違う疾患で、赤み、小さな吹き出物、顔面の毛細血管の拡張などといった症状を引き起こします。
3.「酒さ」は「酒やけ」と訳されますが、お酒を飲まない人にも起こります。皮膚の加齢現象の一つであり、ストレス、日光、飲酒などが悪化させます。

「酒さ」は症状の程度により軽症(第一度)、中等症(第二度)、重症(第三度)に分けられます。
第一、二度の症状は外用薬(塗り薬)、内服薬(飲み薬)でコントロールが可能ですが、第三度では根治が難しく皮膚手術が必要となります。早いうちに気付き、適切なケア・治療を早く始めることが大切です。

軽症(第一度)
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顔が赤らみやすくなり、顔の中心部に、なかなか消えない赤みが出現します。この赤みは、皮膚の表面に近い血管が広がることによるものです。




中等症(第二度)
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この段階では、赤みに加え、赤い発疹=酒さ性ざそう(ニキビ)が鼻、頬、額、顎などに現れます。



重症(第三度)
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重症になると、鼻や、時に頬の脂腺が拡張し、皮膚の組織が密集して赤みを帯びるようになります。









「酒さ」と区別が難しい疾患
・酒さ様皮膚炎(口囲皮膚炎) 多くの場合ステロイド含有外用剤の副作用で生じるが、「酒さ」との鑑別が困難な場合が多い。
・脂漏性皮膚炎
・アトピー性皮膚炎
・接触性皮膚炎(化粧かぶれ)
・SLE(蝶形紅斑)


「酒さ」の悪化要因
日光、カフェイン、アルコール、刺激の強い食べ物、ストレス、極端な高温・低温などの悪化要因を避けるようにしたほうが良いでしょう。人により悪化要因は異なります。自分にとっての原因を見つけるために、毎日の食事や行動などを記録すると役に立つかもしれません。詳しくは皮膚科医を受診しアドバイスを受けましょう。

「酒さ」の治療
「酒さ」を完治させる治療法はありませんが、病状のコントロールは可能です。「酒さ」は慢性の疾患であるため、治療は、症状を軽くすることと、症状が出ない状態を維持することを目的としています。皮膚科で処方される薬と、皮膚科医の推奨するスキンケアにより、症状をコントロールし、悪化を防ぎます。

「酒さ」治療の実際
エビデンスレベルの高い治療
1)テトラサイクリン、ミノサイクリン内服
2)メトロニダゾール外用
3)アゼレイン酸外用
4)免疫抑制薬(プロトピック軟膏など)外用
エビデンスレベルの低い治療
1)漢方薬、2)ビタミン剤、3)NSAIDs外用
4)手術治療(第三度に対し用いられる)
5)レーザー治療など
避けるべき治療
1)ステロイド外用・内服


治療に際しての注意事項
・「酒さ」は慢性の疾患であるため、良くなったり悪くなったりくりかえします。皮膚科医のアドバイスに基づいた適切な治療とスキンケアにより、悪化した時の症状をコントロールしましょう。
・「酒さ」は顔に表れるトラブルのため、精神心理的影響が大きいものです。逆に、そのストレスがさらに症状を悪化させます。主治医にしっかりと相談しましょう。


情報・画像の一部は、インターネット(www.galderma.jp/)から引用させていただきました。
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by kobayashi-skin-c | 2011-12-25 18:01 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年11月22日教室 冬のスキンケア、とくに注意は乾燥肌:砂漠皮膚にならないために
皮膚にとって最大の敵は「乾燥」
そもそも生物は海(水の中)で誕生しました。私たち人間も、
お母さんのおなかの中では、「羊水」と呼ばれる水の中で発生・
発育を遂げ、「おぎゃあ」のひと声とともに空気を肺に吸い込み、
乾燥した空気の中で生きることを始めます。乾燥した空気の中で
生きることができるよう、この「おぎゃあ」の瞬間から皮膚も
変容します。かたくとも潤いのある角質の形成、汗・皮脂の分泌
などです。しかしながら、年齢とともにこの能力は減弱し、
乾燥肌が顕著となり、皮膚のかゆみ・湿疹などのトラブルを起こ
したり、皮膚の老化を早めます。あるいは過度の清潔志向から、
若者の間でも乾燥肌による皮膚のトラブルが頻発するようになって
きました。とくにアトピーの悪化です。健康教室では、乾燥肌
予防について、実際の保湿剤の使い方も交えながら、みんなで
考えたいと思います。

乾燥肌のトラブル
①皮脂欠乏症(乾皮症)
皮膚の表面の皮脂膜、天然保湿成分が減少し、皮膚バリアが不完全と
なり、皮膚の水分量が減少し、乾燥肌となります。中高年者のすね、
腰、肩などによくみられます。女性は40代、男性は50代から
始まります。
②皮脂欠乏性湿疹(乾燥性皮膚炎)
乾燥肌が続くとかゆみが生じ、夜間など引っ掻くようになります。
とくに空気が乾燥し始める秋から冬に症状が悪化します。
特徴は、皮膚の表面が砂漠のようにひび割れます。引っかき傷からは、
ジクジクとしたリンパ液がもれ出し、貨幣状湿疹と呼ばれる状態と
なります。
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③アトピー性皮膚炎の悪化
アトピーは最近では皮膚バリア疾患とも呼ばれ、体質的に乾燥を起こし
やすい肌質を持っているため、秋から冬、春にかけてかゆみが悪化します。
④乾癬の悪化
乾癬の患者さんの多くは、冬に乾癬が悪くなることを経験しています。
夏に比べ日光浴ができないことも大きな要因ですが、乾燥による皮膚
バリアの破損がケブネル現象を起こしやすくさせていると考えられます。
すねの乾癬が頑固なのも、乾燥しやすい場所だからです。
また冬に多いのど風邪も乾癬の悪化につながります。

日常生活で気を付けること
①湿度を保つ。理想的には60%。
②ごしごし洗わない。ナイロンタオル、垢すりタオルは絶対だめ。
③石鹸を使い過ぎない。ボディーソープの方が乾燥肌を起こしやすい。
 冬の期間は1週間に1、2回の石鹸洗いで十分!タオルではなく
 手のひらで。
④バランスの良い栄養を。天然保湿成分はタンパク質。
⑤十分で快適な睡眠を。
⑥下着は綿が最適。汗をつなぎとめてくれます。
⑦暖房器具の使い方に注意。温風を直接当てない、ストーブに近づき
 過ぎない、暖房、電気毛布は寝る前にはスイッチを切る、など

おもな保湿剤とその薬理作用
①水分吸着保湿作用
 ヒルドイド、ビーソフテンなど
②水分吸着保湿作用+角質融解作用
 尿素製剤(ウレパール、パスタロン、ケラチナミンなど)
③表皮の新陳代謝改善
 ビタミン含有軟膏(ザーネ、ユベラなど)
④被膜形成により水分の蒸発を防ぐ作用
 ワセリンなど古典的外用剤
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by kobayashi-skin-c | 2011-11-23 19:06 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年10月25日教室『子供の皮膚のトラブル、そしてスキンケア、アトピーを中心に』
お子さんの皮膚のトラブルとしてもっとも多いのは、やはり湿疹、あせも。なかでもアトピーがお母さんを(お父さんも)悩ませます。いったい、なぜうちの子が?何が悪いの?食べ物?ダニ・ほこり?ストレス?明確な解答はだれも持っていませんが、みんなで考えてみましょう、お子さんのスキンケアを、心と体のケアを。

子供の皮膚の特徴
1.生命維持に不可欠な皮膚は、母胎内環境から外気環境に変わると同時に劇的な変化を遂げ、急速に皮膚バリア機能を成熟させる。
2.小児の皮膚も基本構造をすべて備える。
3.皮膚・皮下脂肪の厚さは大人に比べ薄く、細胞の水分含量が多い。
4.皮膚附属器(毛、爪、脂腺、汗腺)は未熟だが、単位面積あたりの個数が大人より多く、機能は十分にある。

子供の皮膚で気をつけなくてはならないこと
①皮膚の役割で一番大切な「体内を守るバリア機能」を十分に備えていることから、むやみに清潔保持のための消毒、清拭などを行わない。
②皮膚が薄く、水分含量が多いので、皮膚からの薬の吸収度が大人よりも大きい。外用剤(塗り薬)は大人よりも弱めにする。
③小児期の皮膚幹細胞の発生・発育過程はまだよく分かっていないが、幹細胞の遺伝子に傷がつくと、将来的な皮膚がんの発生が懸念されるので、DNA損傷をきたすような過度の日光浴、やけどには気をつける。

小児の皮膚のトラブル
神奈川県立小児医療センター皮膚科(馬場直子先生)の
報告(1994年)では、
1.湿疹・皮膚炎(アトピー性皮膚炎など)
2.母斑・血管腫(ほくろ、赤あざ、黒あざなど)
3.感染症 ①ウイルス性感染症(イボ、ミズイボ、はしか、風疹、手足口病、リンゴ病など)②細菌感染症(とびひ、おでき、SSSSなど)③真菌感染症(カンジダ症、みずむしなど)④虫による感染症(アタマジラミ、疥癬など)
4.良性腫瘍(毛母腫など)
5.薬疹・中毒疹
6.毛髪異常(円形脱毛症など)
7.蕁麻疹
8.そのほか、やけど、爪の異常、形成異常(副乳、副耳など)、魚鱗癬など角化異常症

小林皮膚科クリニックでの集計はありませんが、やはり圧倒的に多くの湿疹・皮膚炎(アトピー)のお子さんが受診されています。

アトピー性皮膚炎
<原 因>
 アトピーの原因はまだピンポイントには分かっていません。かつてはアレルギー一本槍に考えられていましたが、最近の研究では、肌質的に(生れつき)皮膚のバリア機能が弱い(乾燥肌を起こしやすい)ことが、アレルギーよりもさらに根っこの原因であることが明らかにされました。その詳しい内容は、2010年6月22日皮膚の健康教室『アトピー性皮膚炎の原因と治療』の抄録を参考にしてください。

<スキンケア>
 アトピー性皮膚炎のお子様を持たれるお母さんに、一番して欲しくないこと。それは「清潔が一番」と、毎日お風呂に入れさせたり、肌をごしごし洗ったりすることです。
 北海道のアトピー性皮膚炎の患者さんでは、夏よりも冬に悪化する人のほうが多く見られます。これはもちろん冬の空気のほうが、とくに室内では乾燥しているからです。毎日の入浴、石鹸による清拭は皮膚をますます乾燥させて、かゆみに拍車をかけ、皮膚を悪化させます。
 「保湿剤の使用はアトピー性皮膚炎のスキンケアに有用である」ことが医学的調査から明らかにされており、日本皮膚科学会のアトピーガイドラインでも治療の重要な項目と位置付けられています。ただし湿疹が重症な時は、保湿剤の使用がかえってかゆみを引き起こしたり、かぶれの原因になったりしますので、皮膚炎をきちんとコントロールしたうえで保湿剤を塗ることが大切です。とくに尿素が入った保湿剤は刺激を起こしやすく、皮膚バリアを壊してしまう作用を持ちますので、注意が必要です。

<治 療>
【根拠が高い治療】
1.ステロイド剤外用
2.免疫抑制剤外用
3.ステロイド内服
4.免疫抑制剤内服
5.スキンケア
6.紫外線治療

【根拠が少ない治療】
•抗ヒスタミン剤・抗アレルギー剤内服
•脱感作療法
•抗ダニ対策
•漢 方 薬
•非ステロイド・抗炎症薬外用
•心理療法
•消毒・抗菌治療
これはEBM(evidence based medicine 根拠に基づいた医療)の観点からみた治療の選択手段です。スタンダードな方法であり、小林皮膚科クリニックでも1~6の治療手段を用いています。しかしながら、大多数の患者さんにそうであっても、個々の患者さんではこれらが合わない場合もあります。その人その人に、そしてその時その時に合った治療方法を選ばなくてはなりません。

<医師によって言うことが違う?>
 ステロイド外用剤の使い方、食べ物アレルギーの気を付け方などで、ずいぶんと医師の説明に違いがあり、混乱された患者さん、お母さんがおられると思います。日本アレルギー学会、日本皮膚科学会のアトピーガイドライン策定後から、そうした混乱は減ったように思いますが、今でも小児科の先生と皮膚科の先生で多少温度差があるように感じます。

【小児科医vs皮膚科医の温度差】
1.小児科ではステロイド外用剤はマイルドなものを選ぶことが多く、NSAID外用薬も頻繁に使われる。
→ 私たち皮膚科医の考えた方
①NSAID外用薬はかぶれを起す(ブフェキサマック軟膏は発売中止)。
②NSAIDはTh1サイトカインを選択的に抑制し、
 逆にTh2(アトピー型のアレルギー反応)をたかめる。
③マイルドなステロイド外用治療は炎症を慢性化する。
④濃度を希釈しても副作用が減るわけではない。

2.小児科ではプロトピック軟膏を敬遠する傾向がある。
→ 私たち皮膚科医の考えた方
①プロトピック軟膏は免疫抑制からリンパ腫を懸念されたが、動物実験とじっさいの臨床は異なる。
②プロトピック軟膏は使用当初刺激症状があるが、初回処方時にきちんと説明すると、乗越えられる。
③プロトピック軟膏は眼への影響がないのでまぶたにも最適である。
④バリア機能が回復すると、プロトピック軟膏は経皮吸収されないので、より副作用を起しにくい。

3.小児科では、食物アレルギーを原因として重視する傾向があり、過度の食物制限がときにみられる。
→ 私たち皮膚科医の考えた方
①食物アレルギーは確かに存在する疾患であるが、アトピー性皮膚炎とは別疾患である。
②食物アレルギーはアナフィラキシー型がほとんどで、湿疹型への関与は少ない。
④行き過ぎた除去食はこどもにとって有害である。

以上、お子さんの皮膚のトラブル、スキンケアについて、アトピー性皮膚炎を中心に勉強しました。
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by kobayashi-skin-c | 2011-10-30 17:57 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年9月27日(火)教室『乾癬の最新情報、日本乾癬学会の話題から』
 第26回日本乾癬学会が9月9日・10日、大阪国際会議場で会長川田 暁(近畿大学)のもとで開催されました。今年のテーマは、「乾癬治療の新しいパラダイム」。
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 川田先生は、こう述べられました。「近年乾癬の病態が解明されると同時に、次々と新たな治療法が開発されてきました。現在三種類の生物学的製剤が日本において保険適応となり、使用されてきています。また紫外線療法においてもナローバンドUVB療法が急速に多くの施設で行われるようになりました。いままさに研究面でも、治療面でも考え方に大きな変換点(新しいパラダイム)を迎えています。今回の学会ではこの点について概要を把握するとともに、理解をより深め、日常の診療に生かしたいと思います。」

 会長の意図をくみ、学会の内容は、研究面において乾癬の起こり方(病態)の免疫学的研究の総括が、治療面では生物学的製剤の発表が相次ぎました。おもなプログラムを紹介しましょう。

特別講演
1.「乾癬の病態:免疫細胞の異常から表皮細胞への作用」 奥山隆平先生(信州大学)
2.「乾癬表皮における組織構築の変動と角化異常の再評価」飯塚 一先生(旭川医科大学)

シンポジウム
1.「乾癬の最新の光治療」ナローバンドUVB、エキシマーランプなど
2.国際シンポジウム 日本、ヨーロッパ、米国における生物学的製剤治療
3.「バイオロジクスを正しく使おう!」皮膚科、整形外科、内科

一般の発表は82題があり、うち52題は生物学的製剤に関連するものでした。生物学的製剤の使い方の点で、次の三つの項目の討議が多く聞かれました。

1.インフリキシマブの二次無効
インフリキシマブ(レミケード)を数回続けていると、効き目が急速に衰えてしまう例がある。とくにレミケード治療を一時的に中断したときに生じやすい。これはレミケードにマウスのたんぱく質が一部に含まれているため、ヒトの体の中では異物のたんぱく質として排除されてしまう機構が働く(中和抗体)ため。こうした例では、他の生物学的製剤に変更する必要があるが、二次無効を生じた例でもヒュミラ、ステラーラは有効である。
効果が衰えてしまったのか、副作用として乾癬の姿が変容しているのか、判断が難しい例もある。中和抗体の測定が有用であるが、検査費用が高価なことが問題である。

2.生物学的製剤によるパラドキシカル(矛盾)反応 paradoxical reaction
 リウマチ患者、クローン病患者で生物学的製剤治療中に、乾癬、掌蹠膿疱症が副作用として現れることがある。乾癬の治療薬でありながら、乾癬を引き起こすこの反応(副作用)をパラドキシカル反応と呼ぶ。今回の学会では、乾癬の治療中にも乾癬が変容する症例があることが報告された。乾癬が生じる病態が、TNFα、IL-12、IL-23などを介するTip-DC→Th17細胞→Stat3の活性化→角化細胞の増殖亢進→乾癬の発症という最近の学説のみではない複雑さを示すものである。

3.インフュージョン(点滴)反応 infusion reaction
 インフリキシマブ(レミケード)は点滴注射で行なわれる。この点滴中に、血圧が下がったり、気分が悪くなったりすることがある。レミケードは抗TNFαマウスモノクローナル抗体であり、マウス(ねずみ)のたんぱく質を注射薬に含んでいる。ヒトにとっては異物であるため、排除するための中和抗体が産生されることがあり、点滴中にレミケードと中和抗体が反応することにより、アナフィラキシー様の症状を引き起こす。
 予防のため、点滴前から抗アレルギー薬の内服、点滴中のステロイド混注が行なわれる。さらに中和抗体産生予防のため、メトトレキサート内服を続けておくことが望ましいとの意見もある。レミケードのリウマチ治療では、このメトトレキサート(リウマトレックス)治療が必須である。

印象に残った発表
1.アダリムマブ投与による乾癬皮疹軽快後に休薬または4週間隔投与へ減量した5症例の中長期経過(東京女子医大、聖母病院) 生物学的製剤も完治をもたらす治療薬ではありません。いったいこの高価な薬をいつまで続けなくてはならないのか、皆さん不安に思われていることでしょう。生物学的製剤がすでに以前から使われていた関節リウマチの患者さんでは、リウマチが軽快し、治療をやめてからも長くリウマチが再発しない方が報告されていました。乾癬でも、アダリムマブ(ヒュミラ)の休薬、減量が可能となった患者さんがあったとのことです。この点について、どうしたら止められるか、減らすことが可能か、さらなる研究が待たれます。
2.インフリキシマブ使用乾癬患者22例および切り替え5症例を含むウステキヌマブ使用患者10例の使用経験(JR札幌病院) JR札幌病院の主任医長である伊藤 圭先生が、学会の5番目に発表されました。全国的にも1,2の経験の多さです。小林皮膚科クリニックからも多くの患者さんが伊藤先生にお世話になっています。
3.皮膚科看護師の乾癬に対する認知度・意識調査(東京大学医学部附属病院看護部) 生物学的製剤の導入に伴い、以前のステロイド外用薬は光線療法を主体とした治療から、より効果のある治療を求めて皮膚科を受診する患者が増えるとともに、全国に乾癬患者の会が立ち上がり定期的な勉強会を開き、乾癬という疾患に対する認知度が高まってきている。病棟や外来で乾癬患者と接する機会多い看護師に対して、医師に遠慮して質問できないような内容について、患者から問われるケースが増えている。患者に対する十分な精神的支援を行なううえでも、皮膚科看護師が疾患、治療法(効果、副作用、通院頻度など)に加え、患者QoLの障害度に対する最低限度の知識を持っておくことが重要となる。
 東大病院の病棟、外来、連携するクリニックの看護師に対し、乾癬の認知度、意識調査をおこなった。認知度・意識ともにクリニックの看護師がもっとも高く、続いて東大外来、病棟看護師の順であった。病棟での仕事分担、多忙さ、各科のローテーションがスペシァリティを阻害しているものと思われた。医師との勉強会などを含めたコミュニケーションがより必要であると思われる、との結論でした。
4.尋常性乾癬患者である私自身の治療履歴と生物学的製剤の使用経験(筑波大学附属病院看護部、筑波大学) 20歳のとき頭から乾癬が発症し、3年後には全身に拡大し尋常性乾癬の診断を受けた。ステロイド軟膏、ボンアルファ軟膏、オキサロール軟膏の外用治療を続けたが徐々に悪化した。チガソン内服、PUVA療法でも改善なく、シクロスポリン内服で一時的にすべて乾癬が消失した。しかし、次第に効き目が悪くなり、血圧上昇、クレアチニン値が緩やかに上昇し始めた。昨年9月生物学的製剤の使用を決心し、アダリムマブ(ヒュミラ)の導入を開始した。開始当時PASIは11.6であったが、現在は0.8まで軽快している。
 乾癬があることにより、人との接触を主体に社会生活に大きな制限を感じながら、つねに「乾癬がなければ、乾癬がなければ」の思いが強く、乾癬があることで自分の人生のほとんどが振り回されてきた。しかし、ヒュミラでここまで改善し「人生が変わった」。こうして皆さんの前で自分の経験を話すことができるのも生物学的製剤のお蔭である。しかしながら、高額な治療費や今後の副作用の出現なども検討課題である、と発表されました。医療に携わる方からの貴重な発表で、大きな感動を参加者全員に与えました。多くの患者さんを集めた研究発表も大切ですが、個人の歴史・体験はより貴重であると考えさせられました。

生物学的製剤による副作用
ヒュミラ、レミケードによる肝機能障害
ヒュミラ注射部位に強い紅斑反応
レミケードにより掌蹠の皮疹が増悪
クローン病患者に生じたレミケードによる陰部乾癬
クローン病患者に生じたレミケードによる掌蹠膿疱症、乾癬、脱毛
レミケードによる多形紅斑型薬疹
レミケードによる扁平苔癬型薬疹
ヒュミラによる顔、足の紅斑型薬疹
ヒュミラで治療中に併用抗結核剤で薬疹
ヒュミラ治療中に1例の肺結核 治療前の検査で、X線検査、血液検査では問題なかったが、ツベルクリン反応が強陽性であったため、抗結核剤の併用を行ないながら、ヒュミラを開始した。しかし患者は医師の指示どおりに抗結核剤を内服していなかった。レミケード治療中に3例の間質性肺炎
レミケード治療中の2例に肺病変(咳とCT検査異常、胸の痛みとCT検査異常)
ヒュミラ治療中の1例に肺病変(血液検査異常≪クォンティフェロン、KL-6≫)
ステラーラ治療中に上気道感染症、好酸球性肺炎
レミケード治療により誘発された汎発性膿疱性乾癬

すでに昨年1月から使用可能となったレミケード、ヒュミラは、1,000名以上の乾癬患者さんに使われています。今のところ使用した患者さんすべてが調査対象となっており、その中の1名だけの結核ですので、危惧されたよりも少ない危険度と言ってよいと思います。しかしながら、はっきりと結核とは言えないものの、なにか変な肺病変が相次いでおり、今後もさらなる注意が必要と思われます。また生物学的製剤のガイドラインが変更になり、実施施設が今までの大病院から、一般クリニックまでと拡大されました。安易な使用に走るのではなく、ガイドラインの順守、未知の副作用への注意深い観察が求められます。

乾癬学会の終了後、今では恒例となった全国乾癬患者学習懇談会が、会長の川田先生のはからいにより、同じ学会会場内で開かれました。その内容については、日本乾癬患者連合会(http://derma.med.osaka-u.ac.jp/pso/JPA/)、大阪乾癬患者友の会(http://derma.med.osaka-u.ac.jp/pso/)に掲載されています。ご覧ください。会長の川田先生、そして群馬大学の安部先生のお話が集まられた100名以上の方たちに感銘を与えました。その後の全国から集まられた患者会のメンバー、相談医をされる先生方を交えた懇親会も、浪花の夜景を眺めながら素敵でした。この懇親会の中で、神奈川県には今年中に、そして岩手県にも近々乾癬患者会が発足する予定であることが報告されました。全国に仲間が増えています。
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by kobayashi-skin-c | 2011-09-28 18:59 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年8月23日教室『乾癬の最新治療、生物学的製剤の実際の使い方、効果などについて』
バイオロジックス(biologics 生物学的製剤)は、
2010年1月にアダリムマブ(ヒュミラ)、インフリキシマブ(レミケード)が保険薬として認可され、乾癬治療の主役として躍り出ました。保険薬認可に際しては、新薬試験の迅速審査を求めて全国の乾癬患者会が署名活動を行い、厚生労働省の決定を早めたことは画期的なできごとでした。さらに2011年3月には、ウステキヌマブ(ステラーラ)が登場し、バイオロジックスがさらに使いやすいくなりました。

現在まで、
小林皮膚科クリニックでは、ヒ ュ ミ ラ:2名、レミケード:9名、ステラーラ:6名、エンブレル:2名の治療を行っています。いずれの方もバイオロジックス治療が必要と判断され、患者さんと熟慮を重ねて開始されました。開始に当たっては、小林皮膚科クリニックでは実施できないため、認定施設である北海道大学病院、市立札幌病院、JR札幌病院の皮膚科、またバイオロジックス治療に精通するリウマチ科の先生(佐川昭リウマチクリニック、クラーク病院)に治療を依頼しました。バイオロジックス治療が必要と判断された何人かの事例を紹介いたします。
ヒュミラ① 60代男性.膿疱性乾癬・関節炎。48歳の時に角層下膿疱症を発症。その後皮膚症状に加え発熱も生じるようになり、膿疱性乾癬と診断された。チガソン30-50㎎の内服で症状は抑えられたが、チガソンを減量すると皮膚症状の悪化がある。50歳代半ばからは全身の関節痛を伴うようになり、抗リウマチ治療(プレドニン、リウマトレックス)も加わったが、日常生活の不自由度は大きかった。
 2009年6月、ヒュミラを開始。関節症状は著明に改善し、日常生活は楽になったが、皮膚症状にチガソンはまだ欠かせない。

ヒュミラ② 40代女性。18歳で尋常性乾癬を発症。外用PUVA療法、ナローバンドUVB治療が効果をあらわしたが、通院の負担、また若い女性であるだけに精神的な苦痛が大きかった。
 2010年4月、ヒュミラ治療を開始。半年はあまり効果が見られなかったが、最近ではほとんど乾癬が消失し、ヒュミラも1ヶ月一回に減量している。

レミケード① 30代女性.16歳の時に尋常性乾癬を発症。20代半ばからは関節痛が強くなり、指の変形、足首関節の脱臼・運動制限が現れるようになり、日常生活が大変となった。とくに子供の育児に支障を来たすようになった。プレドニン、リウマトレックス治療も効くには効いていたが不十分であった。
 2008年9月、レミケードを開始。関節痛が著明に改善し、子供も小学生となり、精神的にも大きく楽になった。皮膚の症状は残存するがわずかだけとなった。

レミケード② 70代女性.膿疱性乾癬・関節炎。55歳で尋常性乾癬を発症。全身に広がりたいへん重症であったが、さらに62歳の時に膿疱性乾癬となった。その頃から関節の痛みが激しくなり、日常生活が著しく不自由になった。チガソンは有効であるが、減量が困難であった。
 2010年11月、レミケード開始。第1回目の点滴の翌日から関節痛は著明に改善し、「夢のようだ」との感想。

ステラーラ① 20代女性。膿疱性乾癬・関節炎。11歳の時に乾癬を発症。外用PUVA療法、入浴PUVA療法を主体の治療を続けていたが、20歳の頃から膿疱を生じるようになり、発熱もあり膿疱性乾癬と診断された。チガソンは継続が難しく、ネオーラルの効果もあまりみられなかった。
 2010年11月、レミケードを開始。しかし、5回の点滴で無効。2011年6月、ステラーラに変更して乾癬は著明に改善した。

ステラーラ② 40代男性。尋常性乾癬・関節炎。20歳の時に乾癬を発症。入院・外来にて外用PUVA療法、ナローバンド療法を主体の治療を続けていた。紫外線治療はよく効いていたが、農家のため定期的な通院が困難であり、関節炎も伴うようになった。
 2011年7月、ステラーラを開始。2回目の注射終了時、乾癬はほぼ消失した。

バイオロジックスはたいへん優れた薬剤です。しかしまだこの新しい治療に参加された患者さんはまだごくわずか。皆さんにこの新しい治療法を説明する時、かならず皆さんから受ける質問は、「治るんですか?」。
 残念ながらこの新しい治療法もまだ対症療法に過ぎません。「いったい、どれぐらい続けなくてはならないんですか、しかもそんな大金を払って」という壁にぶつかります。
 その費用は、薬剤費だけみても
ヒュミラで初年度¥576,000、2年目以降¥555,000。
レミケードは初年度¥963,000、2年目以降¥842,000。
ステラーラは初年度¥640,000、2年目以降¥512,000。
いずれも高額です。高額療養費負担をはじめ、税の医療控除などいくつかの減免措置はありますので、バイオロジックス治療をお考えの方は、かならず医師、また保険事務所などに詳細をおたずねください。

そして、新しい治療法であるだけに副作用のことも皆さま気がかりです。新しい概念の薬剤であるだけに未知の副作用もあり得ますが、一番懸念される免疫抑制作用のうち感染症について、中間調査報告ではわずか一人の結核が出ただけでした。このお一人も飲むべき抗結核薬を患者さんが服用していなかったことが原因でした。もちろん、私達も皆さまも、この新しい治療法を大切に育てるために、ガイドラインをきちんと順守すること、また未知の副作用をいちはやく察知することが大切であると思います。
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by kobayashi-skin-c | 2011-08-24 19:16 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年7月26日教室『夏の皮膚のトラブル、アトピー、あせも、水虫、とびひ、などなど』
 北海道の夏は爽やかで過ごしやすいもの、と言われていましたが、どうも最近は暑い日が多くなってきているように感じます。とくに昨夏は北海道でも30℃を超える日が続きました。今年の夏はどうでしょう。夏に悪化しやすい皮膚のトラブルについて、アトピー、あせも、水虫、とびひ、などについて解説します。
 アップロードが遅れているうちに、残暑の季節となってしまいました。お盆前、札幌では34℃を記録する猛暑、酷暑の夏となりました。虫食われ・虫刺されでつらかった人、急な日焼けで痛くて痛くて寝れなかった人、かゆくて寝苦しくて思いっきり引っ掻いてしまったアトピーの人、アセモからトビヒになったお子さん、靴で蒸れて足のゆびの間がジクジクに靴ずれを起こした人、・・・・・・・。たくさんの方々がクリニックに来られました。古いビルの中の本院クリニックも蒸しぶろ状態。皆さまにはたいへんご迷惑をおかけいたしました。
 また来年、夏の皮膚のトラブル、スキンケアについて『皮膚の健康教室』で皆さまと一緒に学びましょう。
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by kobayashi-skin-c | 2011-08-24 18:24 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)