カテゴリ:「皮膚の健康教室」抄録( 60 )
2011年7月26日教室『夏の皮膚のトラブル、アトピー、あせも、水虫、とびひ、などなど』
 北海道の夏は爽やかで過ごしやすいもの、と言われていましたが、どうも最近は暑い日が多くなってきているように感じます。とくに昨夏は北海道でも30℃を超える日が続きました。今年の夏はどうでしょう。夏に悪化しやすい皮膚のトラブルについて、アトピー、あせも、水虫、とびひ、などについて解説します。
 アップロードが遅れているうちに、残暑の季節となってしまいました。お盆前、札幌では34℃を記録する猛暑、酷暑の夏となりました。虫食われ・虫刺されでつらかった人、急な日焼けで痛くて痛くて寝れなかった人、かゆくて寝苦しくて思いっきり引っ掻いてしまったアトピーの人、アセモからトビヒになったお子さん、靴で蒸れて足のゆびの間がジクジクに靴ずれを起こした人、・・・・・・・。たくさんの方々がクリニックに来られました。古いビルの中の本院クリニックも蒸しぶろ状態。皆さまにはたいへんご迷惑をおかけいたしました。
 また来年、夏の皮膚のトラブル、スキンケアについて『皮膚の健康教室』で皆さまと一緒に学びましょう。
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by kobayashi-skin-c | 2011-08-24 18:24 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年6月28日教室 『スペイン、バスク・ピレネーの旅』
連休を利用して、スペイン、フランスにまたがるバスク地方、そしてスペイン・フランス国境に聳えるピレネー山脈を訪れてきました。バスク地方と言えば、バスク独立運動に代表されるよう、独自の言語を持ち、独特の衣装(ベレー帽発祥の地)、個性的な顔立ち(聖フランシスコ・ザビエルの出生地)など、一つの国のような地域です。大西洋岸の美しい町々(海バスク)、ピレネーから連なる深い山懐に抱かれた小さな村々(山バスク)を訪ねました。素朴で温かい人々、個性的で素晴らしい食べ物に感動しました。ピレネーのトレッキングでは今までに見たこともない山の姿を味わうことができました。その一端をご紹介いたします。

c0219616_19161363.jpg バスクと日本とは、ザビエル以来何かしらの縁で結ばれていたようです。司馬遼太郎もバスクを訪れた際に、その感慨を吐露しています。海バスクの街中、道端の軒先では炭火の七輪の網の上でサバが焼かれ、香ばしいにおいを放っていました。海バスクの料理には、タコやイカがふんだんにあしらわれていました。c0219616_14292017.jpg





ベレー帽はバスクが発祥の地。正装の時、赤いベレー帽に、真っ白なシャツ、真っ白なパンツ、そして赤いベルトを締めるのです。c0219616_14471742.jpgちなみにバスクの国旗(国ではない?)も、赤、白、緑。牛追い祭り(サンフェルミン祭)で有名なパンプロ―ナの町もバスクです。今年の祭りでもずいぶんたくさんのけが人が出たようですが、幸いに亡くなった方はいませんでした。かなり熱くなる人々なのですね。
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c0219616_14504528.jpg このバスク紀行の写真は、photo & essayにも掲載いたしました。そちらもご覧ください。
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by kobayashi-skin-c | 2011-06-29 19:18 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年5月24日教室『夏のお化粧、お肌の手入れ』
5月の札幌、まだまだ風は冷たく「春は名のみ」。しかし油断は大敵、すでに紫外線の量は真夏8月と同じ。空気が乾燥しているぶん、肌への影響は大きいと言えます。今から始めたい紫外線対策。今回の皮膚の健康教室では、アクセーヌ(株)の学術員、瀬戸陽子さんをお招きして『夏のお化粧、お肌の手入れ』についてお話しいただきました。

紫外線がおよぼす皮膚への影響は?
生活紫外線=UVA(紫外線A波):窓ガラス越しにも入ってくる紫外線。日焼けは起こしませんが、長く当たると皮膚の色が濃く黒くなったり、長年続くと皮膚のシワ・たるみの原因となります。
レジャー紫外線=UVB(紫外線B波):夏の海、冬のスキーなどで起こる日焼けを起こす紫外線。重症の場合、皮膚は真っ赤にはれあがったり、水ぶくれができたり、そしてその痕にはシミ。長年続くと皮膚がんのもとにもなる紫外線。
「光老化」という言葉があり、シミ、シワ、たるみなどの皮膚の老徴は、紫外線に長年当たり続けることが体内時計以上に皮膚の老化を進めることを意味します。
でも、太陽の光がなければ私達は生きていけません。すべての地球上の生命は、太陽の光から恩恵を受けています。太陽の光がなければ栄養源となる野菜も果物も育ちません。私達の体自体も、陽の光の一部である紫外線の働きで皮膚の中で大切なビタミンDを作っています。

陽の光と上手に付き合いながら、毎日の生活を送り、楽しむことが求められています。

夏のお肌の手入れ、その誤解

①日焼け止めは、SPFが高ければ高いほどよい?
 そうではありません。TPOが大切です。TPOとは、T(time、時間・季節)、P(place、場所)、O(opportunity、機会・行動)。普段の生活、通勤、通学、お買いものであれば、SPFの数値は、20-30で十分です。夏のレジャー、春スキー、長時間のスポーツ観戦のときには、40-50のものが必要です。SPF値が高ければ高いほど、化粧品としての白さが目立ち、伸びにくく、また洗顔しづらいものです。ことに敏感肌、ニキビ肌をお持ちの方では、皮膚のトラブルとなりやすく、SPF40-50のものを常時使用する必要はありません。
"SPF"って何?
 いまどき知らない人はいないかもしれませんが、"Sun Protection Factor"。レジャー紫外線であるUVBから、どれぐらい皮膚を守るかを表す指数です。数値が大きいほど日焼けを防ぎます。SPF1は、晴天の真夏の昼間で20分、何も塗らないと皮膚は赤くなります(個人差は大きい)。その20分を防ぐのがSPF1。SPF10の日焼け止めを塗ると20分x10=200分までは、日焼けを防ぎます、という意味です。しかし、黒くなることは防げません。
そこで"PA"?
 これも、いまどき知らない人はいないかもしれませんが、"Protection grade of uvA"。生活紫外線であるUVAからの防御指数です。(+)、(++)、(+++)の三段階です。普段の生活では(+)か(++)で十分です。

②日焼け止めはよく伸ばして使った方がいい?
 最近のフェイス用は、お化粧下地を兼ねている製品が多く、のびが良いために控え目によく伸ばして使いがちです。しかし日焼け止めクリームはSPF50の製品を半分の濃さで塗っても、SPF25の効力を発揮することはできません。SPF10以下になってしまいます。かならず使用説明書にある「適量」を守ってください。

③日焼け止めは一度ぬればOK?
 日焼け止めを下地にメイクアップした場合、少し汗をかいてお化粧崩れをしたからといって、お化粧直しをするのは面倒。でもどんなにSPF値が高くても、汗で、海で、プールで流れ落ちてしまったら効力を失います。理想的には、2~3時間ごとに塗り直しましょう。

④日傘は黒!?
 確かに紫外線をもっとも吸収して通さないのは、黒色。しかし白いものは紫外線を反射させます。ある実験によると黒い傘も、白い傘も、効果は変わらなかったとか。黒は熱も吸収するため熱くなってしまいます。

⑤紫外線は太陽からだけ?
 もちろん紫外線の発生源は太陽から。飲み歩いて「ネオン焼け」?それはないでしょう。紫外線は上からだけではなく、反射紫外線もあります。一番は、雪面。太陽光の70%を反射しますので、スキー場では1.7倍の紫外線を受けることになります。そのほか、砂浜、海、湖などの水辺も要注意です。

日焼け止めの正しい塗り方
①頬、あご、額、鼻(いちばん紫外線があたりやすい場所)に少量ずつ
 のせ、そこから手のひら全体を使って、むらなくなじませます。
②目のまわりなど、細かい凹凸のある部分は、薬指の腹を使ってなじませ
 ます。
③最後に、両手のひらで顔全体をやさしく包み込んで、肌にフィットさせ
 ます。
④「一度にたっぷり」ではなく、「適量を少しずつ」重ねます。

やさしい落とし方
①クレンジングをお使いください。日焼け止めは洗うだけでは落ちません。
 クレンジング製品をたっぷり目に使って、皮膚をこすらずにやさしく
 なじませて下さい。
②洗顔は、しっかりと泡だてた「豊かな泡」で顔全体を包み込み、強くこす
 らずに、やさしく落としましょう。

さて、講師の瀬戸陽子さんの最後の提案
「自分にあった日焼け止め、お化粧品を選んでくださいネ。自分以上に自分の肌を知る人はいません。適確に紫外線を防御、そして塗りやすく、やさしく落とせるもの、そんなお化粧品を一緒に探しましょう。」
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by kobayashi-skin-c | 2011-06-02 17:26 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年4月26日教室 『ステラーラ』
『ステラーラ』は、新しい薬剤。乾癬の治療に使われる一番新しい生物学的製剤(バイオロジックス)です。3か月に1回の皮下注射だけで乾癬の症状がコントロールされます。3月中旬に厚生労働省で認可され、使用可能となりました。どんな薬か、どれぐらいの効き目か、副作用は、値段は、・・・・・、乾癬の患者さんすべてに効くわけではなく、またすべての方が使えるわけではありません。しかしながら、3か月に1回の治療だけで、病院通いからも、毎日の軟膏塗りからも解放されることを考えると、治療の選択の一つとして考えてみることも良いでしょう。昨年、乾癬治療に待望の生物学的製剤(バイオロジックス)が『レミケード』、『ヒュミラ』登場しました。『ステラーラ』との比較は以前の資料(院長ブログ「よくある疾患Q&A」、生物学的製剤)を参照してください。

ステラーラを発売するヤンセンが発行するパンフレット(慈恵会医科大学、中川先生監修)のコピーを掲載します。ご参考としてください。

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by kobayashi-skin-c | 2011-05-15 00:00 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年3月22日教室 かゆみの起こるわけ、かゆみの治療
皮膚の病気でつらいのが、何といっても「かゆ~い!」、かゆみ(搔痒)。
ところが意外と「かゆみ」のメカニズムは分っていません。最新の情報を
お届けすると同時に、かゆい時の対処法、そして昨年の暮れに保険適応
(発売)となったばかりの新しい薬剤について解説しました。

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「かゆみ」がどのように起こり、どのようにして感じるのかをめぐる研究が活発になっています。まず「かゆみ」は、皮膚の表皮直下にある「かゆみ神経受容体」で「かゆみ刺激」をキャッチします。その刺激は神経C線維を伝わって、脊髄視床路→視床→大脳皮質へと伝わり、「かゆみ」として感じます。以前には、「かゆみ」は「痛み感覚の弱いもの」として考えられていましたが、「かゆみ刺激」も「神経経路」も「痛み」とは違うものであることが明らかになりました。さらに、「かゆみ刺激」、「かゆみ神経経路」にかかわる様々な物質、神経ホルモンなどが明らかになるとともに、「かゆみ」を抑制する新しい薬剤の開発が進んでいます。

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しかし、「かゆみ」の全容解明にはまだまだいたらず、適確に「かゆみ」を抑えることができません。たとえばじんましん(蕁麻疹)では、そのメカニズムがある程度簡単に説明されることから(上図を参照)、「かゆみ刺激」物質であるヒスタミンをブロックする薬剤を内服すると、蕁麻疹の「かゆみ」はピタッとおさまりますが、アトピー性皮膚炎のメカニズムは複雑であり、もっとも辛い症状である「かゆみ」をなかなか抑える手段がありません。

「かゆみ」治療には次のような手段があります。
1.皮膚の炎症を抑制する(最も重要かつ効果的)
①ステロイド外用
②タクロリムス外用
③シクロスポリン内服
2.抗ヒスタミン薬
3.冷やす
4.スキンケア
5.マイナートランキライザー
6.κ-オピオイド刺激薬

もっとも効果的な「かゆみ」治療は、
1.皮膚の炎症を抑制する(最も重要かつ効果的)
①ステロイド外用、②タクロリムス外用
③シクロスポリン内服、④紫外線照射治療など
・炎症部位ではリンパ球、好酸球から放出されるIL-2, IL-31, TNFαなどが痒みを起こす。
・T細胞機能を抑制するだけでも(タクロリムス、シクロスポリン)、痒みは軽減する。
・神経原性炎症(サブスタンスPなど)も抑制する。

次に有効な「かゆみ」治療が、
2.抗ヒスタミン薬
・最近は抗アレルギー薬(第二・三世代抗ヒスタミン薬)が主体。抗ヒスタミン作用に加え、多彩な抗アレルギー作用、抗炎症作用も有する。
・継続して内服したほうが効果が出る(アトピー)。
・副作用が少ない。抗コリン作用がなく、緑内障、前立腺肥大に悪影響を及ぼさない。
・効果・副作用には個人差があるので、1~2週間使って効果がない場合は変更する。

抗ヒスタミン剤は開発された年代により次のように分類されます。第二世代以降は抗アレルギー剤とも呼ばれています。新しいほど、かゆみ抑制効果が高く、眠気・だるさなどの副作用が少なくなっています。
第一世代
レスタミン、ペリアクチン、アタックス、ホモクロミン、ポララミン、タベジール、ニポラジン/ゼスラン
第二世代
ザジテン、アゼプチン、ダレン/レミカット、セルテクト
第三世代
アレジオン、ジルテック、アレロック、アレグラ、タリオン、エバステル、クラリチン、

・眠気の注意がないのは、アレグラ、クラリチン。
・「危険を伴う機械の操作する際には注意」:アレジオン、タリオン、エバステル。
・他のすべては、「危険を伴う機械の操作には従事させない」こととなっています。
・妊婦では、ポララミン、タベジールは比較的安全。
・肝機能障害者では、アレグラ、タリオン。
・腎機能障害者では、アレグラ、エバステル、ダレン。

xyzal(ザイザル)
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約10年の間わが国では、新しい抗ヒスタミン剤の発売がありませんでしたが、昨年12月「xyzal(ザイザル)」が発売されました。期待される薬剤です。














そのほかの「かゆみ」治療として
3.冷やす
・冷た過ぎないほうがよい。
4.スキンケア
・ドライスキンでは神経終末が皮膚表面まで伸長。
5.マイナートランキライザー
6.κ-オピオイド刺激薬
・μ-オピオイド受容体は痒みを増強し、 κ-オピオイド受容体は抑制する。最近κ-オピオイドアゴニスト(ナルフラフィン[レミッチ])が開発された。
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「かゆみ」を感じる大脳皮質で中枢性かゆみを抑制する新しい薬剤です。今までの「かゆみ」治療とはまったく違った種類の薬剤であり、その大きな効果が期待されています。ことに腎臓病のため人工透析を受けている方々の多くが、強い「かゆみ」で苦しんでおられますが、今まで抑えることができなかったそのつらい「かゆみ」を抑えることが確認されました。現時点で「レミッチ」は透析中の腎不全の方のみに保険適応となっています。今後、ほかの皮膚疾患(たとえばアトピーなど)でも使えるようになることが期待されます。

「かゆみ」は「引っ掻かざるを得ない『不快な感覚』」と定義されています。ところが、『不快』とばかりは言えないところに、「かゆみ」の奥深さがあります。それはかゆいところを掻くと「気持ちいい快感」が得られる所にあります。だから「掻く」のってやめられないんですよね。そもそも「かゆい」→「掻く」は反射的におこる当たり前の反応・動作なのです。動物だって足を使って、ときには口・くちばしを使って掻く動作を行っています。私たち動物は、昔から昆虫との戦いを続けています。蚊、ブヨ、ダニ、ノミ、・・・・・、最近でこそ防虫剤の発達で少なくなってきていますが、昆虫からわが身を守る必要があります。昆虫が媒介する病気もたくさんあります(たとえば日本脳炎、ウエストナイル病、マラリア、デング熱、ライム病、などなど)。それから守るのが「引っ掻く」ことなのです。引っ掻いて蚊を射止めることもできますし、引っ掻いて伝染性の病原体を取り除いています。

なのに皮膚科の病院に行くと、「引っ掻かないでくださいネ」、「引っ掻くから治らないのですよ」と耳にたこができるぐらい、みなさん注意されていませんか。無理ですよね、引っ掻くのを我慢するなんて。

さてさて今日の健康教室の結論、「かゆみ」メカニズムの研究から新しい治療法も開発されています。しかしながら、まだまだその全貌は明らかにされていません。確実に「かゆみ」を抑える手段はまだありません。「かゆみどめ」の薬なんてまだこの世の中にありません。でも、ひっかいて皮膚病を悪くさせることも事実。

「かゆみ」を和らげる工夫を行いながら、それでもかゆい時、
「引っ掻いてください、でも皮膚に優しくね」
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by kobayashi-skin-c | 2011-05-14 23:35 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(1)
2011年2月22日教室 『皮膚のできもの、ほくろ、腫瘍』
でもの、はれもの、ほくろ、イボ、がん、メラノーマ、・・・・・、皮膚にはいろいろな腫瘍があります。皮膚にはどんな種類の腫瘍があるのか、どんなサインが危ないのか、勉強しました。

腫瘍とは、本来の機能(働き)、形態(かたち)を失った細胞が無秩序に増殖したもので、ヒトの命まで脅かすものを悪性腫瘍と呼び、一定の大きさでとどまるものを良性腫瘍と呼び、その中間・境界線上にある上皮内がん、中間型があります。

腫瘍のでき方には、
1.発生の段階で(母親の1個の卵子細胞に父親の精子が結合することにより、人体を形づくる60兆個の細胞にまで分裂します)、複製ミスのためDNAに変異を起こし、胎児の間に腫瘍の元ができたもの(例:ほくろ、あざ、多くの小児がん)
2.生まれてから後、さまざまな外的・内的刺激により、DNAに変異を起こし腫瘍が生じるもの、 があります。

皮膚は人体の最外層にあるため、紫外線をはじめとしたさまざまな外的刺激を受けやすいことから、加齢とともに多くの腫瘍が生じます。また皮膚は表皮、メラノサイト、免疫細胞、毛、つめ、あせ、血管、神経、筋肉、皮下脂肪などさまざまな働き、細胞があるため、じつに多様な腫瘍が生じます。生命にかかわる腫瘍が生じることも事実です。

そして、皮膚はさまざまな働きをしています。体を守る、体温を維持する、黴菌・異物を排除する、汗をかく、毛を生やす、爪をのばす、痛い・かゆい・つめたい・熱いの感覚、・・・・。そのために特殊な構造をたくさん持っています。腫瘍はそのひとつひとつから生じます。
表皮は角化細胞(顆粒細胞、有棘細胞、基底細胞)、免疫細胞、色素細胞(メラノサイト)からなり、表皮からは、脂漏性角化腫・日光角化腫・基底細胞がん・有棘細胞がん・ボーエン病・ケラトアカントーマ・疣状角化腫・疣状がん、免疫細胞からは、ランゲルハンス細胞腫(組織球症X)、リンパ球腫、リンパ腫、菌状息肉症、ATL、色素細胞(メラノサイト)からは、色素性母斑(ほくろ)・青色母斑・悪性黒色腫(メラノーマ)などの腫瘍が生じます。汗の汗腺・汗管からは、・・・・・、毛の毛包からは、・・・・・、血管からは、神経からは、筋肉からは、・・・・・・・・、実にさまざまな腫瘍が生じます。その中から、どんな腫瘍であるのか、良性なのか悪性なのか、正確に判断することは専門医でも困難なことがあります。より専門性の高い大学病院の医師にその判断をゆだねることもあります。

みなさまにとって大切なことは、自分の皮膚の変化を見逃さないこと、変化を自己判断なしに専門医の相談を早めに受けること。その参考となるよう実際の皮膚のできもの、ほくろ、腫瘍の姿を認識して下さい(健康教室ではおおくの皮膚腫瘍の実際の姿を写真でみていただきました)。
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by kobayashi-skin-c | 2011-02-22 20:54 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年1月25日教室 『ニキビの原因と治療 -ニキビでお悩みのあなたへ-』
「たかがニキビ、されどニキビ」
一生のうちでけっして通り過ぎることができない皮膚のトラブルが「ニキビ」。だれしもが
経験する「ニキビ」。ニキビは、正確には「尋常性ざそう」とよばれます。
ほんとうに「たかがニキビ」と済ませて良いのでしょうか。お父さんも言うように「ニキビは
青春のシンボル、気にすんな!」で終わらせて良いのでしょうか。

けっしてそうではありません。ニキビが患者さん(悩む人)にとって重大なQOL障害となる
ことが分っています。QOLとは、"Quality of Life"。「生活の質」、「生きることの充実感」
と呼ばれています。ニキビが起こる年齢はちょうど思春期であり、子供の体が大人の体質に
変わるころです。男子であれば声変わりするころ、女子であれば初潮を迎えるころです。
この思春期には体の内外にたくさんの変化が起こると同時に、心・精神にも重大な変化が
起こり始めます。「自我の形成」です。「自分って何だろう?誰だろう?」、「お父さん、
お母さんに甘えたい、でもうっとうしい」などの感情が心の中で渦巻きはじめます。
そして、ついには「自我の確立」に至るのですが、自我の確立には「自らへの自信・自尊心」
が欠かせません。この「自らへの自信・自尊心」の形成をニキビが大きく損なわせることが
分っています。

人はだれしも"Body Image"を持っています。窓ガラスや鏡に映る自分の姿を確かめたり、
自分の影の足の長さを測ったり、自分を確かめながら、自分の理想の姿を心の中に描いています。しかしながら、理想の姿(ideal body image)と現実の姿(real body image)の
間には溝があり、その溝に苦しみます。好きな人ができたりすると、その苦しみはなお
いっそうのこと深まります。理想の姿を見て欲しいのに、自分の現実の姿はなんとかけ
離れているのだろうか、と。意外とその好きな人の瞳の中ではニキビなんて見えてない
のですが、でもBody Imageは自分の心の中のできごと。好きな人の気持ちも確かめない
まま、「自らの自信・自尊心」に障害を受けて自信を失ってしまいます。ことに顔の皮膚の
変化は心の中の重大なできごととなり、自我の形成に大きな悪影響をおよぼしてしまいます。
それがニキビの問題なのです。

「たかがニキビ」ではありません。

「されどニキビ」。世界のニキビ治療は大きく変わっています。 日本でも、やっと、
ニキビの治療が大きく変わりました。病院で処方される新しい外用薬がニキビの治療・予防に
役立ちます。日本皮膚科学会ではこの新薬の登場に合わせて「尋常性ざそうの治療ガイド
ライン」を作成しました。今まで以上に実証性をふまえた治療が可能となっています。
健康教室では、ニキビの起こるメカニズムとこの新薬(アダパレン、商品名ディフェリン
ゲル)についてお話しいたしました。

新薬の情報・使い方は、クリニックのパンフレット等でお知らせいたします。

ニキビはどうして起こるの?

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思春期、男性ホルモンの分泌が高まります(女性でも副腎で男性ホルモンは作られます)。男性ホルモンは皮膚にも、とくに毛嚢(毛包)、脂腺、アポクリン腺に働き、毛包出口(毛穴)の角質肥厚が起こり、同時に高まる脂腺の活動・皮脂の増加によってニキビが出現します。これが白ニキビ、黒ニキビです(面ポウ)。毛包にはニキビ菌が常在しているため、毛穴が閉じると同時にニキビ菌の活動が活発となり、炎症を起こしてしまいます(赤ニキビ)。さらに炎症のため毛包が破壊されると、強力な異物反応がおこり、大きく腫れたり、皮膚のひきつれが起こってしまいます(ニキビケロイド)。
 毛包出口(毛穴)の角質肥厚を改善させるのが新しいニキビ薬=アダパレン(商品名ディフェリンゲル)です。ニキビ菌を抑える薬としては抗菌薬であるミノマイシン、ルリッド、ファロムなどの内服薬、ダラシン、アクアチムなどの外用薬が使われます。

日常生活の中で気をつけること

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早い時期のニキビには主に外用剤(塗り薬)が用いられます。ことにディフェリンゲルが有効です。ダラシン、アクアチムの併用も効果をいっそう増します。しかし炎症が進んだり、化膿して痛いばあい、ミノマイシン、ルリッド、ファロムなどの内服薬による治療が必要です。外用のコツ、注意がありますので主治医・看護師の指示をよく聞いてください。それがニキビを治すコツです。
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ニキビで行うスキンケアの目的は、毛穴がふさがないようにすることです。洗顔は重要なスキンケアのポイントです。朝起きたときの洗顔はだれでもしますが、外出先から帰ってすぐの洗顔は面倒になりがちです。化粧品、汗やほこりなどで毛穴がふさがれないよう、習慣づけましょう。ごしごしこする洗顔はかえって毛穴を硬くしてつまりやすくさせます。またニキビの炎症を悪化させますので、やさしく洗顔しましょう。
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「ニキビはアンタッチャブルがいい」。ニキビをしぼったり、かさぶたをはがしたりするのは百害あって一利なし。ニキビ痕の原因となります。
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ニキビの原因となる毛穴の閉塞(つまり)を防ぐことがニキビ予防・スキンケアの基本です。
リキッドタイプのファンデーションを使っていませんか?セーター、マフラーなどで顎がこすれていませんか?髪の毛で額(おでこ)、頬がこすれていませんか?
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医学的には、ニキビだからと言って食べてダメなものは特にありません。チョコレート、コーヒー、ナッツ類などが「ニキビに悪い」とよく言われますが、根拠はありません。自分の経験をとおして「食べ過ぎた時にニキビが悪くなる」物だけ、控え目にしましょう。



以上のイラスト、日常生活の注意点は「にきびの治療と予防」(監修:京都大学大学院医学研究科皮膚科学教授 宮地良樹先生、提供:サノフィ・アベンティス)から、宮地良樹先生、サノフィ・アベンティス(株)のご好意により引用させていただきました。
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by kobayashi-skin-c | 2011-01-26 17:56 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2010年12月28日教室『抜け毛の悩み』
抜け毛の原因は、さまざまです。円形脱毛症、ホルモン異常による脱毛、症候性脱毛(内臓のお病気によって脱毛する)、薬剤性の脱毛(とくに抗がん剤)、休止期脱毛症、などなど、ありますが、最も多くの人(=男性?)が悩んでいるのが男性型脱毛症、いわゆる「若はげ」。最近流行の言葉でいえば「AGA (androgenic alopecia)」です。テレビコマーシャルで「抜け毛のことなら、お医者さんへ」の言葉が聞こえてきます。この皮膚の健康教室でも一度取り上げたかった『抜け毛の悩み』。最新の話題、治療法をお伝えします。

まずは、毛(髪)について少し勉強しましょう。
【毛の常識・非常識】
   ・唇、手のひら、足の裏をのぞく全身に、約500万本の毛がある。
   ・頭には、約10万本(髪)。
   ・1本の毛は一生伸び続けるわけではない。
   ・毛にはサイクル(成長期→退行期→休止期→成長期→・・・)があり、
     成長期は2~6年、退行期は2週間、休止期は3ヶ月。体、頭の部位に
     よってサイクル(成長期)の長さが異なる。このため、長い毛(髪)
     短い毛がある。
   ・髪の毛は成長期には一日0.3~0.4㍉伸びる。一ヶ月でだいたい1㌢。
   ・退行期、休止期になると(頭髪の約10%)、髪の毛は抜け落ちる
     (一日平均80~100本)。
   ・ヘアサイクルは多くのホルモンの影響を受ける(性ホルモン、副腎
     皮質ホルモン、甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン)
   ・毛髪の本数(毛穴の数)は生まれた時に決まっている。人種、性に
     かかわらず同じ。「毛が濃い、薄い」の違いは、髪の太さ、色の個人差。
   ・毛髪がもっとも活発に成長するのは20歳前後。その後は成長速度の
     低下、休止期毛の増加が起こる。そのスピードには個人差があり、
     遺伝的要因で決まる。
   ・毛の部位によって、加齢(老化)とともに成長速度が増加する
     (眉毛、鼻毛、耳毛)。
ここからは、非常識、みなさんいままでだまされていませんでしたか?
こんな非常識に。
  1.昆布をたくさん食べると黒々とした丈夫な髪の毛になる。
    その根拠は、海藻に多く含まれるヨード・ミネラルが髪を育てる 
                            ・・・・ 嘘
    実態は、昆布やワカメなどの形状がフサフサ、クログロとした髪を
    連想させるだけ。
    他にも特定のサプリメントが発毛・育毛に効果を与えることはない。
    ただし、急激なダイエットで脱毛は起こすことから、バランスのとれた
    栄養が大切であることは言うまでもない。
  2.一夜にして白髪になる
    その根拠は、フランス王妃マリー・アントワネットが処刑前日の一夜に
    して白髪になった、との言い伝えがある       ・・・・ 嘘
    カメレオンではあるまいに、髪の毛は死んだ細胞の塊であり、変わりようがない。
    実態は、強いストレスを受けた時、円形脱毛症を起こした可能性はある。
    円形脱毛症では白髪は抜けにくく、黒髪が減ったためこの言い伝えになった
    ものと推測される。
  3.白髪は抜くほど増える
    その根拠は、・・・、昔からよく言われているから ・・・・ これも嘘
    実態は、白髪年齢に達したからです。
  4.ストレスで禿げる、ストレスで白髪になる
    その根拠は、自律神経の乱れが毛の成長に影響を及ぼす ・・・・ 嘘
    実態は、男性も女性も抜け毛、白髪を気にする年代は40代以降のことが多く、
    社会生活、家庭生活でもストレスを感じやすい時期と重なるため、髪の
    変化とストレスが関連付けられたのでしょう。科学的根拠はありません。
    ただし抜け毛と関連深い毛の成長(へサイクル)にはホルモンが深く
    関わっています。また毛の色をきめるメラニン色素産生にもホルモン、
    自律神経が関わっています。やはり、ストレスは少ないに越したことは
    ありません。
  5.毛穴の脂が薄毛の原因
    根拠は、19世紀に立てられた学説、今でもテレビのCMで、・・・・ 嘘
    皮脂成分に男性型脱毛を起こす物質はありません。
    実態は、脂ぎったタイプの人に男性型脱毛症が多いから?
  6.ハゲに悪人なし
    根拠は、???????
  7.安いシャンプーを使うとはげる
    その根拠は、テレビCMで高級シャンプーを使っているモデルさんの髪は
    クログロ、フサフサ、サラサラ           ・・・・ これも嘘
    実態は、毛を作る毛根は、皮膚の表面から数ミリの深さ。シャンプーは
    そこまで届きません。ただし、洗いすぎは髪を傷めます。ドライヤーを
    使うとさらに髪は乾燥し傷みます。高級シャンプーと言われるものは、
    その保湿・保護成分を含んだもの。もったいないですね、高価なシャンプーで
    毎日毎日シャワー、シャワー。
  8.毛を剃ると濃くなる
    その根拠は、とくに女性の毛剃りが濃くする、とよく言われますね 
                             ・・・・ これも嘘
    実態は、剃ったあとに伸びてくる毛は、成長期の毛ですから太いままで
    伸びてきます。休止期を経て自然に抜けてふたたび伸び始める毛の毛先は
    細いので、その比較で濃くなったという錯覚を起こすのです。
このほかにも、なんら根拠がないにもかかわらず、増毛・育毛をうたった治療薬、栄養剤、
シャンプーなどが世の中に出回っています。健康被害も起こっています。詐欺まがいの
宣伝で、きわめて高額な商品を買わされている被害者もいます。みなさま注意しましょう。

【脱毛症の原因】
A. 先天性(うまれた時から):無毛症、乏毛症、先天性外胚葉形成不全症、など
B. 後天性(うまれた後から)
1.円形脱毛症:原因は不明。単発~数個の脱毛の場合治りやすいが、50%以上、
 全頭に及んだ場合は難治性
2.休止期脱毛症:原因不明。女性に多く突如全頭に脱毛を生じる。回復する。
3.薬剤による脱毛:抗がん剤、など
4.皮膚疾患に伴う脱毛:脂漏性皮膚炎、乾癬、アトピー性皮膚炎などでは回復する。
 扁平苔癬、円板状狼瘡では永久脱毛。
5.全身疾患に伴う脱毛:膠原病(SLE)、甲状腺疾患、急性熱性疾患、など
6.栄養障害に伴う脱毛:鉄欠乏、ビタミンD欠乏、急激なダイエットなど
7.精神障害、ストレス:抜毛癖
8.男性型脱毛症
9.女性型脱毛症

1.円形脱毛症
   ・発病率:2%
   ・遺伝的要因(30~40%に家族歴)
   ・自己免疫疾患
   ・アトピー性皮膚炎を合併しやすい(56%)
   ・他の自己免疫疾患(橋本甲状腺炎、膠原病、白斑など)
     を合併することもある

  円形脱毛症の治療
   ・軽症の場合(単発~2,3個)、ステロイド外用、塩化カルプロニウム外用、
     セファランチン、グリチルリチン酸内服など
   ・重症の場合(多発性、蛇行性、全頭性)
   ①ステロイド内服、②液体窒素凍結療法、③PUVA療法、④局所免疫療法
   ・精神的ケア
     患者会の存在(「円形脱毛症を考える会」http://www.hidorigamo.com/)
   ・かつら、ウイッグ
  小林皮膚科クリニックでは合併症の検査から、また症状に応じた治療を、
  上記のすべての方法を使って行っています。

ここからは
【男性型脱毛症(AGA androgenic alopecia)】について
  日本人男性の約3割が薄毛を自覚しています。調査の結果では、
  ・薄毛を自認している 1,260万人(30%)
  ・薄毛を気にしている 800万人(19%)
  ・薄毛への対処をしたことがある  650万人(15%)
  ・現在、薄毛に対して何かしている 500万人(12%)
  またAGAがおよぼす精神・心理的影響について、徳島大学皮膚科荒瀬先生の
  調査結果では、
  ・誰に対して気にしているのか
  職場・学校などの同僚  43%
  妻、ガールフレンド   40%
  友人、知人       38%
  家族、親戚       23%
  他人(女性)      44%
  他人(男性)      30%
  ・薄毛をどう思っているか
  異性に対して魅力的でない 65.4%
  薄毛はかっこ悪い     75.3%
  自分は魅力的でない    52.4%
  自信がなくなった     40.4%
  ほかの人たちが、私の頭の薄くなったところを見ているような
      気がする     50.6%
  ほかの人たちが、私の頭が薄いことについて話しているようだ
               21.7%
  頭のせいで仕事上の差別を受けていると思った 15.5%
  スポーツをするのをためらうようになった   19.3%

小林皮膚科クリニックでは、こうした抜け毛・薄毛でお悩みの方の相談とともに
プロペシアの処方を行っています。プロペシア治療には保険医療適応がありませ
ん。診療費・薬剤費ともに自費となります(薬代を含め1ヶ月約8000円)。

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by kobayashi-skin-c | 2010-12-29 17:33 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2010年11月30日教室 『塗り薬の使い方 ―その落し穴―』

落し穴―その1― 「ふたの開かない軟膏は効かない!」

 それはそうです。処方された薬は、飾っておくだけでは効きません。
 内服薬(飲み薬)を忘れることはあまりありません。飲むのは簡単です
 から。でも塗り薬は、「ついつい面倒だし」、「べとつくし」、
 「テカるのもいやだし」、・・・・・・・・・
 処方された軟膏は、かくして洗面所の片隅に、机の引出しの中に、
 忘れられたまま、とかくなるわけです。そして「軟膏は効かない!」。

 でもいったいそれって誰が悪いの?

 「もっと塗りやすい軟膏を」、「塗る必要性をもっと教えて」、「効い
 ている実感がしない」、「ステロイドの塗り薬は恐ろしい」などなど、
 皆さんの声が聞こえてきます。

 アメリカの乾癬患者組織(米国乾癬基金)に参加する患者さんを対象と
 した調査では、乾癬の範囲が全身におよび重症であるほど、あるいは
 乾癬のためにQOLの低下が著しいほど、軟膏を塗る回数が減ってしま
 う、という結果がわかっています。皮膚の病気を持っていることだけで
 さえ、大変なのです。それに加え「1日2回、軟膏を塗って下さいネ」
 の指示は酷というものかもしれません。

 欧米では塗り薬の種類の中に、スプレー、ムース、さらには薬を含んだ
 頭用のシャンプーまで発売されています。軟膏を頭に塗るなんて、
 大変であること極まりありませんが、毎日のシャンプーが治療であれば、
 こんな楽なことはありません。

「ふたを開かせる軟膏」を目指して私たち、患者である皆さん、そして
 製薬メーカーの協力が必要です。

落し穴―その2― 「軟膏はどう使う?」

 じつは、これが分っていないのです。患者さんが分っていないのでは
 なく、医者が分っていないのです。塗り方について、副作用について、
 などなど、どれぐらい説明を受けておられますか?
 医師から「これが正しい塗り方です」という処方箋はありません。
   1.一日何回?
    •塗る回数が多いほど効く。1ヶ所にしか軟膏がないと、
     ついつい忘れがち。軟膏は分けておいて置き、塗りやすい手
     などは機会があるごとに塗りましょう。
    •開発臨床試験では、ボンアルファハイ軟膏、抗真菌薬では
     1回と2回で差がない、という結果も出ていますが、結果を
     よく見ると2回の方がよく効いています。  
    •生活スタイルに合わせて種類を選び、塗る。
      頭、手はべとつかないものを頻繁に、
      体は長持ちするものを一日1回。
   2.一回にどれぐらい?
     目安は『finger tip unit (FTU)』
     1 FTU = 0.5㌘:手のひら2枚分=体の面積の2%
     (全身は、0.5㌘x50倍、25㌘)

   3.塗り方は?
    •単純塗擦:軽くのっける、擦りこむ。小さい部分は綿棒で。
     大きい範囲は手のひらで。難しいのが背中と、頭。
     そこでひと工夫。
     背中は? ご飯の「おへら(しゃもじ)」が最適です。
     「おへら」の先に軟膏を乗せ、鏡を見ながら患部に優しくすりこみ
      ます。
     頭は? 軟膏、ローションのチューブをそのまま頭にあてると、
     チューブの中の薬が汚染されてしまいます。手のひらに、あるいは
     小さなお皿の上に軟膏・ローションを置いて、そこから患部に優しく
     すりこみます。髪の毛に薬をあまり盗られないよう、地肌に塗りま
     しょう。
    •ガーゼ・包帯保護
    •ODT(occlusive dressing technique、密封療法):
     体はサランラップ、頭はシャワーキャップ
    •患部にピンポイント、保湿剤は広めに。
   4.いつまで?
    •もちろん、治るまで!その目安は、湿疹・乾癬では目をつぶって
     触ってつるつる肌になった状態。水虫・たむしではカサカサがなく
     なり、さらに1ヶ月。
    •目安は主治医とともに確認したほうが良い。病変が残っていると
     すぐに再発する。
   5.副作用は?
    •主剤によってさまざま。
    •量によっては全身への作用も起こりえる。ステロイドでは副腎
     抑制、ビタミンD3では高カルシウム血症、など。でも、ごくまれ
     です。
    •局所に生じた副作用のほとんどは、やめると元に戻る。

落し穴―その3- 「クスリはリスク」

『薬=くすり』は『リスク=危険』
 軟膏も、塗る必要性、薬の性質・副作用をよく知っておきましょう。
 せめて軟膏の名前ぐらいは、「小林さん、覚えておきましょう」。

以上、勉強しました。
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by kobayashi-skin-c | 2010-12-04 19:43 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2010年10月26日教室 『乾癬の最新情報 -日本乾癬学会の話題から-』
9月3-4日、山口県宇部市で第25回日本乾癬学会が開催されました。別府市城島高原のホテルで開かれた第1回乾癬研究会から四半世紀が過ぎたことになります。今回の学会を主催した山口大学皮膚科教授武藤先生も次のような言葉を、プログラムの巻頭言で述べられています。
「顧みますと、ここ十余年間に免疫学・細胞生物学はめざましい進歩を遂げ、免疫学の精緻な理論に裏付けられた生物製剤の開発・臨床応用が現実のものとなり、乾癬は不治の病ではなく、制御可能な疾患といえるようになりつつあることは、患者さんのみならず、皮膚科医にとっても大きな喜びであります。」

 武藤先生の言葉の中にあるように、今年の1月から乾癬治療の現場で使うことが可能になった生物学的製剤の登場が、この学会を特徴づけていました。昨年までは招待講演の中で、海外のデータが外国人の先生によって紹介されるぐらいにとどまっていましたが、今年の乾癬学会の一般演題では生物学製剤関連の報告がじつに25もの数に上りました。生物学的製剤の登場を待ちかねていたかのように、多くの患者さんで使用され、そしてその投与方法の工夫、効果、副作用が報告、討議されたわけです。一般演題のみならず、特別講演、シンポジウムなどで、7人の先生からの講演もありました。
 生物学的製剤の詳しい内容は、このブログ中「よくある疾患」の項を参照にしてください。さて、今回の報告の中では目立った大きな副作用もなく、生物学的製剤は安全に使われているようですが、効果の面ではかならずしも満点ではないようです。費用対効果の面からは、すべての乾癬患者さんにお勧めできる治療ではありません。いままでの外用治療、紫外線治療、内服薬による治療が大切であることに変わりありません。飛躍的に進んだ乾癬の発病メカニズムの解析から生み出された生物学的製剤ですが、かならずしもピンポイント治療にはなっていないようです。生物学的製剤が逆に、乾癬・膿疱性乾癬様の副作用を起こすこともあります。まだまだ分かっていないメカニズム、原因があるのです。
 生物学的製剤を乾癬治療の現場でいかに生かすか、そのことについて京都大学皮膚科教授、宮地先生が次のように述べられています。
乾癬治療を考える -これからの治療戦略- 「どこまで登る『乾癬』ピラミッド」
 「生物学的製剤をふくめて、いずれの治療もまだ対症的療法の域を出ていない。生物学的製剤は治療標的を次第に狭めつつあり、乾癬という高い頂きを目指してはいるものの、現実の日常診療ではいまだ麓にとどまっているのが実情であろう。・・・・・・・・、生物我的製剤が治療の選択を広げ、患者にとって大きな福音となったことは論を俟たないが、結局は、患者ごとに異なるピラミッド計画を策定し、外用剤から生物学的製剤までを併用あるいは使い分けることが皮膚科医の腕の見せ所である。」 会場からの「価値観、人生観がさまざまである患者さんと、互いにピラミッドの頂をながめながら、どのようなことをゴールとして目指すことを提案するのですか?」の質問に対し、宮地先生は「乾癬はコントロール可能な疾患であり、患者さんが幸せに生きることに障害とならないよう、いま手にすることができる最良の治療を選択することが大切である。」とお答えになっていました。

 今回の学会であったユニークな提案に、シンポジウム「乾癬治療のエキスパート育成を目指して」があります。なかでも、「乾癬患者会との関わり-患者の声を聞いて-」のテーマで、お二人の先生が発表された講演には感銘を受けました。
群馬大学、安倍正敏先生は「患者会と適切な距離感を保つ重要性」と題し、「・・・・、他方、患者との懇親の場ではとことん距離を近くする。患者と酒を酌み交わすことに異論もあろうが、私にとって患者のホンネを知る貴重な時間は「乾癬治療のエキスパート育成」の大切な課外授業である。」の内容を、そして大分県立病院 佐藤俊宏先生は、「患者は患者を救う、医師も救われる」と題して、「患者の気持ちは同じ病気に悩む患者が一番よく理解できる、患者はかたわらにいるだけで患者を救うことができるのである。そして患者会活動はその範囲にとどまらず、多くの方々が熱心に勉強し、最新の情報を共有している。この情報は医師にとっても有益であり、私は大いに救われてきた。また全国の患者会による署名活動のおかげで私たちは生物学的製剤の使用をいち早く手にすることができた。すべての患者、皮膚科医が救われている。」の内容をお話しされました。また医師のみならずエキスパートナースの重要性も、聖路加国際病院皮膚科看護師の金児玉青さんから報告されました。

 最後に東京慈恵医大から発表された「一般社会における乾癬に対する認識度調査」を紹介します。
乾癬の罹患がなく、家族にも患者がいない一般人1030名(20~60歳の男女)に対して、インターネットで調査を行なったとのことです。
結果① 「乾癬」 という病気を知っているか?
知っていた9.5%  聞いたことがある 40.9% 知らなかった49.6%
結果② 「乾癬」を認識していた50.4%(519名)の認知の内容は、
かゆみが激しい病気66.5%
皮膚がはがれる病気51.1%
原因は感染症33%
電車やレストランでの同席を避ける47%
入浴、水泳中の接触を避ける76%
自身が乾癬だったら肌を出したくない72%
自身が乾癬だったら精神的につらい61%
(結 語)日本社会一般での乾癬に対する認知度は低く、乾癬の特徴として「症状がうつる」、発症原因として「乾癬→かんせん=感染、伝染性」という誤解が根強い。乾癬患者のQoL向上の一環として、患者会と乾癬学会による正しい広報活動を行なっていくことが重要である 。

 生物学的製剤の登場により大きく様変わりすることが確実な乾癬治療ですが、やはり患者さんと一緒に歩みを進めながら治療法を選択したり、治療を続けたり、あるいは乾癬の正しい理解をふかめるための社会活動も繰り広げたり、もちろん生物学的製剤だけではなくさまざまな治療法に精通した乾癬治療エキスパートでありたいと実感した2日間でした。

 学会終了後には、全国患者会が主催した学習懇談会も開催され、山口大学の山口先生が参加された大勢の患者さんに乾癬を分かりやすく講演されました。その後の懇親会では、それこそ「とことん距離を近くする」宴会場で全国患者会の皆さんと懇談することができました。涙と笑いの連続でしたが、患者会の輪は山口県にも広がりそうです。
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by kobayashi-skin-c | 2010-10-27 15:24 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)