カテゴリ:「皮膚の健康教室」抄録( 55 )
2011年2月22日教室 『皮膚のできもの、ほくろ、腫瘍』
でもの、はれもの、ほくろ、イボ、がん、メラノーマ、・・・・・、皮膚にはいろいろな腫瘍があります。皮膚にはどんな種類の腫瘍があるのか、どんなサインが危ないのか、勉強しました。

腫瘍とは、本来の機能(働き)、形態(かたち)を失った細胞が無秩序に増殖したもので、ヒトの命まで脅かすものを悪性腫瘍と呼び、一定の大きさでとどまるものを良性腫瘍と呼び、その中間・境界線上にある上皮内がん、中間型があります。

腫瘍のでき方には、
1.発生の段階で(母親の1個の卵子細胞に父親の精子が結合することにより、人体を形づくる60兆個の細胞にまで分裂します)、複製ミスのためDNAに変異を起こし、胎児の間に腫瘍の元ができたもの(例:ほくろ、あざ、多くの小児がん)
2.生まれてから後、さまざまな外的・内的刺激により、DNAに変異を起こし腫瘍が生じるもの、 があります。

皮膚は人体の最外層にあるため、紫外線をはじめとしたさまざまな外的刺激を受けやすいことから、加齢とともに多くの腫瘍が生じます。また皮膚は表皮、メラノサイト、免疫細胞、毛、つめ、あせ、血管、神経、筋肉、皮下脂肪などさまざまな働き、細胞があるため、じつに多様な腫瘍が生じます。生命にかかわる腫瘍が生じることも事実です。

そして、皮膚はさまざまな働きをしています。体を守る、体温を維持する、黴菌・異物を排除する、汗をかく、毛を生やす、爪をのばす、痛い・かゆい・つめたい・熱いの感覚、・・・・。そのために特殊な構造をたくさん持っています。腫瘍はそのひとつひとつから生じます。
表皮は角化細胞(顆粒細胞、有棘細胞、基底細胞)、免疫細胞、色素細胞(メラノサイト)からなり、表皮からは、脂漏性角化腫・日光角化腫・基底細胞がん・有棘細胞がん・ボーエン病・ケラトアカントーマ・疣状角化腫・疣状がん、免疫細胞からは、ランゲルハンス細胞腫(組織球症X)、リンパ球腫、リンパ腫、菌状息肉症、ATL、色素細胞(メラノサイト)からは、色素性母斑(ほくろ)・青色母斑・悪性黒色腫(メラノーマ)などの腫瘍が生じます。汗の汗腺・汗管からは、・・・・・、毛の毛包からは、・・・・・、血管からは、神経からは、筋肉からは、・・・・・・・・、実にさまざまな腫瘍が生じます。その中から、どんな腫瘍であるのか、良性なのか悪性なのか、正確に判断することは専門医でも困難なことがあります。より専門性の高い大学病院の医師にその判断をゆだねることもあります。

みなさまにとって大切なことは、自分の皮膚の変化を見逃さないこと、変化を自己判断なしに専門医の相談を早めに受けること。その参考となるよう実際の皮膚のできもの、ほくろ、腫瘍の姿を認識して下さい(健康教室ではおおくの皮膚腫瘍の実際の姿を写真でみていただきました)。
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by kobayashi-skin-c | 2011-02-22 20:54 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年1月25日教室 『ニキビの原因と治療 -ニキビでお悩みのあなたへ-』
「たかがニキビ、されどニキビ」
一生のうちでけっして通り過ぎることができない皮膚のトラブルが「ニキビ」。だれしもが
経験する「ニキビ」。ニキビは、正確には「尋常性ざそう」とよばれます。
ほんとうに「たかがニキビ」と済ませて良いのでしょうか。お父さんも言うように「ニキビは
青春のシンボル、気にすんな!」で終わらせて良いのでしょうか。

けっしてそうではありません。ニキビが患者さん(悩む人)にとって重大なQOL障害となる
ことが分っています。QOLとは、"Quality of Life"。「生活の質」、「生きることの充実感」
と呼ばれています。ニキビが起こる年齢はちょうど思春期であり、子供の体が大人の体質に
変わるころです。男子であれば声変わりするころ、女子であれば初潮を迎えるころです。
この思春期には体の内外にたくさんの変化が起こると同時に、心・精神にも重大な変化が
起こり始めます。「自我の形成」です。「自分って何だろう?誰だろう?」、「お父さん、
お母さんに甘えたい、でもうっとうしい」などの感情が心の中で渦巻きはじめます。
そして、ついには「自我の確立」に至るのですが、自我の確立には「自らへの自信・自尊心」
が欠かせません。この「自らへの自信・自尊心」の形成をニキビが大きく損なわせることが
分っています。

人はだれしも"Body Image"を持っています。窓ガラスや鏡に映る自分の姿を確かめたり、
自分の影の足の長さを測ったり、自分を確かめながら、自分の理想の姿を心の中に描いています。しかしながら、理想の姿(ideal body image)と現実の姿(real body image)の
間には溝があり、その溝に苦しみます。好きな人ができたりすると、その苦しみはなお
いっそうのこと深まります。理想の姿を見て欲しいのに、自分の現実の姿はなんとかけ
離れているのだろうか、と。意外とその好きな人の瞳の中ではニキビなんて見えてない
のですが、でもBody Imageは自分の心の中のできごと。好きな人の気持ちも確かめない
まま、「自らの自信・自尊心」に障害を受けて自信を失ってしまいます。ことに顔の皮膚の
変化は心の中の重大なできごととなり、自我の形成に大きな悪影響をおよぼしてしまいます。
それがニキビの問題なのです。

「たかがニキビ」ではありません。

「されどニキビ」。世界のニキビ治療は大きく変わっています。 日本でも、やっと、
ニキビの治療が大きく変わりました。病院で処方される新しい外用薬がニキビの治療・予防に
役立ちます。日本皮膚科学会ではこの新薬の登場に合わせて「尋常性ざそうの治療ガイド
ライン」を作成しました。今まで以上に実証性をふまえた治療が可能となっています。
健康教室では、ニキビの起こるメカニズムとこの新薬(アダパレン、商品名ディフェリン
ゲル)についてお話しいたしました。

新薬の情報・使い方は、クリニックのパンフレット等でお知らせいたします。

ニキビはどうして起こるの?

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思春期、男性ホルモンの分泌が高まります(女性でも副腎で男性ホルモンは作られます)。男性ホルモンは皮膚にも、とくに毛嚢(毛包)、脂腺、アポクリン腺に働き、毛包出口(毛穴)の角質肥厚が起こり、同時に高まる脂腺の活動・皮脂の増加によってニキビが出現します。これが白ニキビ、黒ニキビです(面ポウ)。毛包にはニキビ菌が常在しているため、毛穴が閉じると同時にニキビ菌の活動が活発となり、炎症を起こしてしまいます(赤ニキビ)。さらに炎症のため毛包が破壊されると、強力な異物反応がおこり、大きく腫れたり、皮膚のひきつれが起こってしまいます(ニキビケロイド)。
 毛包出口(毛穴)の角質肥厚を改善させるのが新しいニキビ薬=アダパレン(商品名ディフェリンゲル)です。ニキビ菌を抑える薬としては抗菌薬であるミノマイシン、ルリッド、ファロムなどの内服薬、ダラシン、アクアチムなどの外用薬が使われます。

日常生活の中で気をつけること

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早い時期のニキビには主に外用剤(塗り薬)が用いられます。ことにディフェリンゲルが有効です。ダラシン、アクアチムの併用も効果をいっそう増します。しかし炎症が進んだり、化膿して痛いばあい、ミノマイシン、ルリッド、ファロムなどの内服薬による治療が必要です。外用のコツ、注意がありますので主治医・看護師の指示をよく聞いてください。それがニキビを治すコツです。
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ニキビで行うスキンケアの目的は、毛穴がふさがないようにすることです。洗顔は重要なスキンケアのポイントです。朝起きたときの洗顔はだれでもしますが、外出先から帰ってすぐの洗顔は面倒になりがちです。化粧品、汗やほこりなどで毛穴がふさがれないよう、習慣づけましょう。ごしごしこする洗顔はかえって毛穴を硬くしてつまりやすくさせます。またニキビの炎症を悪化させますので、やさしく洗顔しましょう。
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「ニキビはアンタッチャブルがいい」。ニキビをしぼったり、かさぶたをはがしたりするのは百害あって一利なし。ニキビ痕の原因となります。
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ニキビの原因となる毛穴の閉塞(つまり)を防ぐことがニキビ予防・スキンケアの基本です。
リキッドタイプのファンデーションを使っていませんか?セーター、マフラーなどで顎がこすれていませんか?髪の毛で額(おでこ)、頬がこすれていませんか?
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医学的には、ニキビだからと言って食べてダメなものは特にありません。チョコレート、コーヒー、ナッツ類などが「ニキビに悪い」とよく言われますが、根拠はありません。自分の経験をとおして「食べ過ぎた時にニキビが悪くなる」物だけ、控え目にしましょう。



以上のイラスト、日常生活の注意点は「にきびの治療と予防」(監修:京都大学大学院医学研究科皮膚科学教授 宮地良樹先生、提供:サノフィ・アベンティス)から、宮地良樹先生、サノフィ・アベンティス(株)のご好意により引用させていただきました。
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by kobayashi-skin-c | 2011-01-26 17:56 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2010年12月28日教室『抜け毛の悩み』
抜け毛の原因は、さまざまです。円形脱毛症、ホルモン異常による脱毛、症候性脱毛(内臓のお病気によって脱毛する)、薬剤性の脱毛(とくに抗がん剤)、休止期脱毛症、などなど、ありますが、最も多くの人(=男性?)が悩んでいるのが男性型脱毛症、いわゆる「若はげ」。最近流行の言葉でいえば「AGA (androgenic alopecia)」です。テレビコマーシャルで「抜け毛のことなら、お医者さんへ」の言葉が聞こえてきます。この皮膚の健康教室でも一度取り上げたかった『抜け毛の悩み』。最新の話題、治療法をお伝えします。

まずは、毛(髪)について少し勉強しましょう。
【毛の常識・非常識】
   ・唇、手のひら、足の裏をのぞく全身に、約500万本の毛がある。
   ・頭には、約10万本(髪)。
   ・1本の毛は一生伸び続けるわけではない。
   ・毛にはサイクル(成長期→退行期→休止期→成長期→・・・)があり、
     成長期は2~6年、退行期は2週間、休止期は3ヶ月。体、頭の部位に
     よってサイクル(成長期)の長さが異なる。このため、長い毛(髪)
     短い毛がある。
   ・髪の毛は成長期には一日0.3~0.4㍉伸びる。一ヶ月でだいたい1㌢。
   ・退行期、休止期になると(頭髪の約10%)、髪の毛は抜け落ちる
     (一日平均80~100本)。
   ・ヘアサイクルは多くのホルモンの影響を受ける(性ホルモン、副腎
     皮質ホルモン、甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン)
   ・毛髪の本数(毛穴の数)は生まれた時に決まっている。人種、性に
     かかわらず同じ。「毛が濃い、薄い」の違いは、髪の太さ、色の個人差。
   ・毛髪がもっとも活発に成長するのは20歳前後。その後は成長速度の
     低下、休止期毛の増加が起こる。そのスピードには個人差があり、
     遺伝的要因で決まる。
   ・毛の部位によって、加齢(老化)とともに成長速度が増加する
     (眉毛、鼻毛、耳毛)。
ここからは、非常識、みなさんいままでだまされていませんでしたか?
こんな非常識に。
  1.昆布をたくさん食べると黒々とした丈夫な髪の毛になる。
    その根拠は、海藻に多く含まれるヨード・ミネラルが髪を育てる 
                            ・・・・ 嘘
    実態は、昆布やワカメなどの形状がフサフサ、クログロとした髪を
    連想させるだけ。
    他にも特定のサプリメントが発毛・育毛に効果を与えることはない。
    ただし、急激なダイエットで脱毛は起こすことから、バランスのとれた
    栄養が大切であることは言うまでもない。
  2.一夜にして白髪になる
    その根拠は、フランス王妃マリー・アントワネットが処刑前日の一夜に
    して白髪になった、との言い伝えがある       ・・・・ 嘘
    カメレオンではあるまいに、髪の毛は死んだ細胞の塊であり、変わりようがない。
    実態は、強いストレスを受けた時、円形脱毛症を起こした可能性はある。
    円形脱毛症では白髪は抜けにくく、黒髪が減ったためこの言い伝えになった
    ものと推測される。
  3.白髪は抜くほど増える
    その根拠は、・・・、昔からよく言われているから ・・・・ これも嘘
    実態は、白髪年齢に達したからです。
  4.ストレスで禿げる、ストレスで白髪になる
    その根拠は、自律神経の乱れが毛の成長に影響を及ぼす ・・・・ 嘘
    実態は、男性も女性も抜け毛、白髪を気にする年代は40代以降のことが多く、
    社会生活、家庭生活でもストレスを感じやすい時期と重なるため、髪の
    変化とストレスが関連付けられたのでしょう。科学的根拠はありません。
    ただし抜け毛と関連深い毛の成長(へサイクル)にはホルモンが深く
    関わっています。また毛の色をきめるメラニン色素産生にもホルモン、
    自律神経が関わっています。やはり、ストレスは少ないに越したことは
    ありません。
  5.毛穴の脂が薄毛の原因
    根拠は、19世紀に立てられた学説、今でもテレビのCMで、・・・・ 嘘
    皮脂成分に男性型脱毛を起こす物質はありません。
    実態は、脂ぎったタイプの人に男性型脱毛症が多いから?
  6.ハゲに悪人なし
    根拠は、???????
  7.安いシャンプーを使うとはげる
    その根拠は、テレビCMで高級シャンプーを使っているモデルさんの髪は
    クログロ、フサフサ、サラサラ           ・・・・ これも嘘
    実態は、毛を作る毛根は、皮膚の表面から数ミリの深さ。シャンプーは
    そこまで届きません。ただし、洗いすぎは髪を傷めます。ドライヤーを
    使うとさらに髪は乾燥し傷みます。高級シャンプーと言われるものは、
    その保湿・保護成分を含んだもの。もったいないですね、高価なシャンプーで
    毎日毎日シャワー、シャワー。
  8.毛を剃ると濃くなる
    その根拠は、とくに女性の毛剃りが濃くする、とよく言われますね 
                             ・・・・ これも嘘
    実態は、剃ったあとに伸びてくる毛は、成長期の毛ですから太いままで
    伸びてきます。休止期を経て自然に抜けてふたたび伸び始める毛の毛先は
    細いので、その比較で濃くなったという錯覚を起こすのです。
このほかにも、なんら根拠がないにもかかわらず、増毛・育毛をうたった治療薬、栄養剤、
シャンプーなどが世の中に出回っています。健康被害も起こっています。詐欺まがいの
宣伝で、きわめて高額な商品を買わされている被害者もいます。みなさま注意しましょう。

【脱毛症の原因】
A. 先天性(うまれた時から):無毛症、乏毛症、先天性外胚葉形成不全症、など
B. 後天性(うまれた後から)
1.円形脱毛症:原因は不明。単発~数個の脱毛の場合治りやすいが、50%以上、
 全頭に及んだ場合は難治性
2.休止期脱毛症:原因不明。女性に多く突如全頭に脱毛を生じる。回復する。
3.薬剤による脱毛:抗がん剤、など
4.皮膚疾患に伴う脱毛:脂漏性皮膚炎、乾癬、アトピー性皮膚炎などでは回復する。
 扁平苔癬、円板状狼瘡では永久脱毛。
5.全身疾患に伴う脱毛:膠原病(SLE)、甲状腺疾患、急性熱性疾患、など
6.栄養障害に伴う脱毛:鉄欠乏、ビタミンD欠乏、急激なダイエットなど
7.精神障害、ストレス:抜毛癖
8.男性型脱毛症
9.女性型脱毛症

1.円形脱毛症
   ・発病率:2%
   ・遺伝的要因(30~40%に家族歴)
   ・自己免疫疾患
   ・アトピー性皮膚炎を合併しやすい(56%)
   ・他の自己免疫疾患(橋本甲状腺炎、膠原病、白斑など)
     を合併することもある

  円形脱毛症の治療
   ・軽症の場合(単発~2,3個)、ステロイド外用、塩化カルプロニウム外用、
     セファランチン、グリチルリチン酸内服など
   ・重症の場合(多発性、蛇行性、全頭性)
   ①ステロイド内服、②液体窒素凍結療法、③PUVA療法、④局所免疫療法
   ・精神的ケア
     患者会の存在(「円形脱毛症を考える会」http://www.hidorigamo.com/)
   ・かつら、ウイッグ
  小林皮膚科クリニックでは合併症の検査から、また症状に応じた治療を、
  上記のすべての方法を使って行っています。

ここからは
【男性型脱毛症(AGA androgenic alopecia)】について
  日本人男性の約3割が薄毛を自覚しています。調査の結果では、
  ・薄毛を自認している 1,260万人(30%)
  ・薄毛を気にしている 800万人(19%)
  ・薄毛への対処をしたことがある  650万人(15%)
  ・現在、薄毛に対して何かしている 500万人(12%)
  またAGAがおよぼす精神・心理的影響について、徳島大学皮膚科荒瀬先生の
  調査結果では、
  ・誰に対して気にしているのか
  職場・学校などの同僚  43%
  妻、ガールフレンド   40%
  友人、知人       38%
  家族、親戚       23%
  他人(女性)      44%
  他人(男性)      30%
  ・薄毛をどう思っているか
  異性に対して魅力的でない 65.4%
  薄毛はかっこ悪い     75.3%
  自分は魅力的でない    52.4%
  自信がなくなった     40.4%
  ほかの人たちが、私の頭の薄くなったところを見ているような
      気がする     50.6%
  ほかの人たちが、私の頭が薄いことについて話しているようだ
               21.7%
  頭のせいで仕事上の差別を受けていると思った 15.5%
  スポーツをするのをためらうようになった   19.3%

小林皮膚科クリニックでは、こうした抜け毛・薄毛でお悩みの方の相談とともに
プロペシアの処方を行っています。プロペシア治療には保険医療適応がありませ
ん。診療費・薬剤費ともに自費となります(薬代を含め1ヶ月約8000円)。

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by kobayashi-skin-c | 2010-12-29 17:33 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2010年11月30日教室 『塗り薬の使い方 ―その落し穴―』

落し穴―その1― 「ふたの開かない軟膏は効かない!」

 それはそうです。処方された薬は、飾っておくだけでは効きません。
 内服薬(飲み薬)を忘れることはあまりありません。飲むのは簡単です
 から。でも塗り薬は、「ついつい面倒だし」、「べとつくし」、
 「テカるのもいやだし」、・・・・・・・・・
 処方された軟膏は、かくして洗面所の片隅に、机の引出しの中に、
 忘れられたまま、とかくなるわけです。そして「軟膏は効かない!」。

 でもいったいそれって誰が悪いの?

 「もっと塗りやすい軟膏を」、「塗る必要性をもっと教えて」、「効い
 ている実感がしない」、「ステロイドの塗り薬は恐ろしい」などなど、
 皆さんの声が聞こえてきます。

 アメリカの乾癬患者組織(米国乾癬基金)に参加する患者さんを対象と
 した調査では、乾癬の範囲が全身におよび重症であるほど、あるいは
 乾癬のためにQOLの低下が著しいほど、軟膏を塗る回数が減ってしま
 う、という結果がわかっています。皮膚の病気を持っていることだけで
 さえ、大変なのです。それに加え「1日2回、軟膏を塗って下さいネ」
 の指示は酷というものかもしれません。

 欧米では塗り薬の種類の中に、スプレー、ムース、さらには薬を含んだ
 頭用のシャンプーまで発売されています。軟膏を頭に塗るなんて、
 大変であること極まりありませんが、毎日のシャンプーが治療であれば、
 こんな楽なことはありません。

「ふたを開かせる軟膏」を目指して私たち、患者である皆さん、そして
 製薬メーカーの協力が必要です。

落し穴―その2― 「軟膏はどう使う?」

 じつは、これが分っていないのです。患者さんが分っていないのでは
 なく、医者が分っていないのです。塗り方について、副作用について、
 などなど、どれぐらい説明を受けておられますか?
 医師から「これが正しい塗り方です」という処方箋はありません。
   1.一日何回?
    •塗る回数が多いほど効く。1ヶ所にしか軟膏がないと、
     ついつい忘れがち。軟膏は分けておいて置き、塗りやすい手
     などは機会があるごとに塗りましょう。
    •開発臨床試験では、ボンアルファハイ軟膏、抗真菌薬では
     1回と2回で差がない、という結果も出ていますが、結果を
     よく見ると2回の方がよく効いています。  
    •生活スタイルに合わせて種類を選び、塗る。
      頭、手はべとつかないものを頻繁に、
      体は長持ちするものを一日1回。
   2.一回にどれぐらい?
     目安は『finger tip unit (FTU)』
     1 FTU = 0.5㌘:手のひら2枚分=体の面積の2%
     (全身は、0.5㌘x50倍、25㌘)

   3.塗り方は?
    •単純塗擦:軽くのっける、擦りこむ。小さい部分は綿棒で。
     大きい範囲は手のひらで。難しいのが背中と、頭。
     そこでひと工夫。
     背中は? ご飯の「おへら(しゃもじ)」が最適です。
     「おへら」の先に軟膏を乗せ、鏡を見ながら患部に優しくすりこみ
      ます。
     頭は? 軟膏、ローションのチューブをそのまま頭にあてると、
     チューブの中の薬が汚染されてしまいます。手のひらに、あるいは
     小さなお皿の上に軟膏・ローションを置いて、そこから患部に優しく
     すりこみます。髪の毛に薬をあまり盗られないよう、地肌に塗りま
     しょう。
    •ガーゼ・包帯保護
    •ODT(occlusive dressing technique、密封療法):
     体はサランラップ、頭はシャワーキャップ
    •患部にピンポイント、保湿剤は広めに。
   4.いつまで?
    •もちろん、治るまで!その目安は、湿疹・乾癬では目をつぶって
     触ってつるつる肌になった状態。水虫・たむしではカサカサがなく
     なり、さらに1ヶ月。
    •目安は主治医とともに確認したほうが良い。病変が残っていると
     すぐに再発する。
   5.副作用は?
    •主剤によってさまざま。
    •量によっては全身への作用も起こりえる。ステロイドでは副腎
     抑制、ビタミンD3では高カルシウム血症、など。でも、ごくまれ
     です。
    •局所に生じた副作用のほとんどは、やめると元に戻る。

落し穴―その3- 「クスリはリスク」

『薬=くすり』は『リスク=危険』
 軟膏も、塗る必要性、薬の性質・副作用をよく知っておきましょう。
 せめて軟膏の名前ぐらいは、「小林さん、覚えておきましょう」。

以上、勉強しました。
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by kobayashi-skin-c | 2010-12-04 19:43 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2010年10月26日教室 『乾癬の最新情報 -日本乾癬学会の話題から-』
9月3-4日、山口県宇部市で第25回日本乾癬学会が開催されました。別府市城島高原のホテルで開かれた第1回乾癬研究会から四半世紀が過ぎたことになります。今回の学会を主催した山口大学皮膚科教授武藤先生も次のような言葉を、プログラムの巻頭言で述べられています。
「顧みますと、ここ十余年間に免疫学・細胞生物学はめざましい進歩を遂げ、免疫学の精緻な理論に裏付けられた生物製剤の開発・臨床応用が現実のものとなり、乾癬は不治の病ではなく、制御可能な疾患といえるようになりつつあることは、患者さんのみならず、皮膚科医にとっても大きな喜びであります。」

 武藤先生の言葉の中にあるように、今年の1月から乾癬治療の現場で使うことが可能になった生物学的製剤の登場が、この学会を特徴づけていました。昨年までは招待講演の中で、海外のデータが外国人の先生によって紹介されるぐらいにとどまっていましたが、今年の乾癬学会の一般演題では生物学製剤関連の報告がじつに25もの数に上りました。生物学的製剤の登場を待ちかねていたかのように、多くの患者さんで使用され、そしてその投与方法の工夫、効果、副作用が報告、討議されたわけです。一般演題のみならず、特別講演、シンポジウムなどで、7人の先生からの講演もありました。
 生物学的製剤の詳しい内容は、このブログ中「よくある疾患」の項を参照にしてください。さて、今回の報告の中では目立った大きな副作用もなく、生物学的製剤は安全に使われているようですが、効果の面ではかならずしも満点ではないようです。費用対効果の面からは、すべての乾癬患者さんにお勧めできる治療ではありません。いままでの外用治療、紫外線治療、内服薬による治療が大切であることに変わりありません。飛躍的に進んだ乾癬の発病メカニズムの解析から生み出された生物学的製剤ですが、かならずしもピンポイント治療にはなっていないようです。生物学的製剤が逆に、乾癬・膿疱性乾癬様の副作用を起こすこともあります。まだまだ分かっていないメカニズム、原因があるのです。
 生物学的製剤を乾癬治療の現場でいかに生かすか、そのことについて京都大学皮膚科教授、宮地先生が次のように述べられています。
乾癬治療を考える -これからの治療戦略- 「どこまで登る『乾癬』ピラミッド」
 「生物学的製剤をふくめて、いずれの治療もまだ対症的療法の域を出ていない。生物学的製剤は治療標的を次第に狭めつつあり、乾癬という高い頂きを目指してはいるものの、現実の日常診療ではいまだ麓にとどまっているのが実情であろう。・・・・・・・・、生物我的製剤が治療の選択を広げ、患者にとって大きな福音となったことは論を俟たないが、結局は、患者ごとに異なるピラミッド計画を策定し、外用剤から生物学的製剤までを併用あるいは使い分けることが皮膚科医の腕の見せ所である。」 会場からの「価値観、人生観がさまざまである患者さんと、互いにピラミッドの頂をながめながら、どのようなことをゴールとして目指すことを提案するのですか?」の質問に対し、宮地先生は「乾癬はコントロール可能な疾患であり、患者さんが幸せに生きることに障害とならないよう、いま手にすることができる最良の治療を選択することが大切である。」とお答えになっていました。

 今回の学会であったユニークな提案に、シンポジウム「乾癬治療のエキスパート育成を目指して」があります。なかでも、「乾癬患者会との関わり-患者の声を聞いて-」のテーマで、お二人の先生が発表された講演には感銘を受けました。
群馬大学、安倍正敏先生は「患者会と適切な距離感を保つ重要性」と題し、「・・・・、他方、患者との懇親の場ではとことん距離を近くする。患者と酒を酌み交わすことに異論もあろうが、私にとって患者のホンネを知る貴重な時間は「乾癬治療のエキスパート育成」の大切な課外授業である。」の内容を、そして大分県立病院 佐藤俊宏先生は、「患者は患者を救う、医師も救われる」と題して、「患者の気持ちは同じ病気に悩む患者が一番よく理解できる、患者はかたわらにいるだけで患者を救うことができるのである。そして患者会活動はその範囲にとどまらず、多くの方々が熱心に勉強し、最新の情報を共有している。この情報は医師にとっても有益であり、私は大いに救われてきた。また全国の患者会による署名活動のおかげで私たちは生物学的製剤の使用をいち早く手にすることができた。すべての患者、皮膚科医が救われている。」の内容をお話しされました。また医師のみならずエキスパートナースの重要性も、聖路加国際病院皮膚科看護師の金児玉青さんから報告されました。

 最後に東京慈恵医大から発表された「一般社会における乾癬に対する認識度調査」を紹介します。
乾癬の罹患がなく、家族にも患者がいない一般人1030名(20~60歳の男女)に対して、インターネットで調査を行なったとのことです。
結果① 「乾癬」 という病気を知っているか?
知っていた9.5%  聞いたことがある 40.9% 知らなかった49.6%
結果② 「乾癬」を認識していた50.4%(519名)の認知の内容は、
かゆみが激しい病気66.5%
皮膚がはがれる病気51.1%
原因は感染症33%
電車やレストランでの同席を避ける47%
入浴、水泳中の接触を避ける76%
自身が乾癬だったら肌を出したくない72%
自身が乾癬だったら精神的につらい61%
(結 語)日本社会一般での乾癬に対する認知度は低く、乾癬の特徴として「症状がうつる」、発症原因として「乾癬→かんせん=感染、伝染性」という誤解が根強い。乾癬患者のQoL向上の一環として、患者会と乾癬学会による正しい広報活動を行なっていくことが重要である 。

 生物学的製剤の登場により大きく様変わりすることが確実な乾癬治療ですが、やはり患者さんと一緒に歩みを進めながら治療法を選択したり、治療を続けたり、あるいは乾癬の正しい理解をふかめるための社会活動も繰り広げたり、もちろん生物学的製剤だけではなくさまざまな治療法に精通した乾癬治療エキスパートでありたいと実感した2日間でした。

 学会終了後には、全国患者会が主催した学習懇談会も開催され、山口大学の山口先生が参加された大勢の患者さんに乾癬を分かりやすく講演されました。その後の懇親会では、それこそ「とことん距離を近くする」宴会場で全国患者会の皆さんと懇談することができました。涙と笑いの連続でしたが、患者会の輪は山口県にも広がりそうです。
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by kobayashi-skin-c | 2010-10-27 15:24 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2010年9月28日教室 『乾癬と暮らす泣き笑いの25年』
乾癬、シャルコー・マリー・トゥース病を持ちながらも前向きに生き、乾癬患者会作りに、また乾癬の会を全国に広めるために奔走された岡部伸雄さんからお話をお伺いしました。岡部さんは、豊富温泉湯快宿の前管理人であり、その当時の思い出深い写真、短歌も交えながらのお話で、たいへん感銘深いものでした。

岡部さんの短歌のいくつかをご紹介させていただきます。
  持つすべを 人に捧ぐる喜びよ 知る人ぞ知る これぞ生きがひ
  黄昏の 海辺に遊ぶ 君たちに 笑いと夢を 僕はあげたい
  最北の 温泉郷に点る灯と いで湯に明日をたくしていやす

岡部さんが患者会を通して得たことには次のようなことがあったとのことで、前向きに生きること、病気をコントロールする力を得ることが大切とお話しされました。
•思いを語り合える場を持てたこと-交流・懇談会・会報・個別つながり・相談・湯治ツアー
•世界的、全国的な最先端医療を聴く事ができたこと-全国・地域的学習懇談会、会報、患者世界会議
•「自分だけなぜこんな目に」の孤立感から解放されたこと
•自らはもとより、他の人の幸せをも考えられる豊かさを持てたこと -活動持続の源泉
•病気を持っていても楽しく生きるすべを身につけられたこと

また岡部さんの経験から、これから望まれる良い医療とは、
•① 患者の話をよく聴く ② 治療方法を丁寧に話し患者の選択権を認める ③ 患者(会)と共によりよき医療を研究するー運動の中でつかんだ三つの判断基準
•これからの医療は「患者・医師の協力共同、患者は聞くばかりでなく語れ、全国に患者会を」(2003年飛騨高山での当時の日本乾癬学会理事長金子先生の談話)
•原点は「医療の民主主義」(2004年山形での米国カリフォルニア大学クー先生の講演)
•小林先生の全人的医療

岡部さんのこれらの短歌、写真、そして随想は自らのホームページ『乾癬と暮らす』をご覧ください。
http://www2.ocn.ne.jp/~nob300/
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by kobayashi-skin-c | 2010-09-29 14:23 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2010年8月24日教室 『乾癬の最新情報 -2010年乾癬国際会議(パリ)から-』
2010年7月1日-3日パリにおいて、Psoriasis 2010 Congress of The Psoriasis International Networkが開催されました。そして7月4日、5日にはIFPA(International Federation of Psoriasis Associations 乾癬患者組織国際連盟)年次総会があり、両者に出席してまいりました。この国際会議は第3回目を迎えますが、乾癬の実地診療に役立つ知識の交換を主な目的としており、最新の治療法の紹介ばかりではなく、古くからの治療を見直し工夫すること、長期間にわたる治療による副作用の喚起、また乾癬患者のQOLについても広く討議されました。わが国の乾癬の実情について、Psoriasis International Networkの一員でもある旭川医科大学教授、飯塚 一先生が講師として講演されました。
 いくつかの話題を紹介いたしましょう。特徴としては、何と言ってもBiologics(生物学的製剤)治療の講演、発表が圧倒的に多かったことです。展示コーナーでもBiologicsを開発した製薬メーカーのブースの数々が目を引いていました。とくに昨年ヨーロッパ、アメリカで相次いで発売開始となった抗IL12/23(p40)ヒト型モノクロナール抗体;ustekinumab(商品名:Stelara、ステラーラ)のブースにはいつも人があふれていました。
 現在分かっている乾癬発症メカニズムの根元部分と考えられているIL23を抑制するステラーラは、3か月に1回の皮下注射で中等症~重症の乾癬に対し高い有効性が実証されました。ヨーロッパ・アメリカの開発試験では(PHOENIX 1, PHOENIX 2)、その有効率はPASI 75(全身の乾癬がほとんどなくなる)で80%でした。また76週(PHOENIX 1)、52週(PHOENIX 2)の試験期間中、重症の副作用はほとんど起こりませんでした。またアメリカでの試験では、先発のBiologicsである抗TNF製剤;etanercept(商品名:エンブレル)よりも明らかに優れていることも証明されました。
 ステラーラの開発試験はわが国でもすでに終了しており、その結果が今回の会議の中で日本の開発研究班を代表してNTT病院関東の五十嵐敦之先生、慈恵医科大学の中川秀巳先生によって報告されました。早期の審査・承認が期待されます。
 さらに新しいIL12/23(p40)ヒト型モノクロナール抗体;briakinumabも開発され、その臨床試験結果がアメリカから報告されていました。ステラーラ同様、優れた効果と高い安全性が述べられていました。ただ小生の疑問として、治療がたいへん難しい中等症~重症の乾癬にたいし、これほど優れた効果をBiologicsが発揮するからには、全身においてかなりの免疫抑制状態が作られていることは間違いないと思います。臨床試験期間中における副作用はみられませんでしたが、やはり長期にわたる乾癬治療の中では、免疫抑制状態に伴う副作用の懸念がぬぐいきれません。ステラーラでは3カ月に1回の注射です。その3ヶ月間の間、たった90ミリグラムの薬液ですが、体の中にとどまり乾癬を抑える=免疫抑制状態を保つことになります。副作用が生じたときに、後戻りできない、その怖さを感じます。いっぽうで、先発のBiologicsはアメリカ・ヨーロッパでは発売されてすでに5年以上が経過しており、とくにエンブレルでは副作用がほとんど生じておらず、安全な乾癬治療薬として認められつつあるようです。
 Biologics治療で避けて通ることができない問題が、治療費です。ドイツから経済的観点からの研究報告もありました。入院して治療すると格段に経済的負担が増すこと、乾癬の治療には外来治療が基本であること、Biologics治療の費用は入院で30,199.7€、外来で11,600.85€にも及んでしまうことが述べられていました。各国の保険事情により患者さんの自己負担金の額に差があるでしょうが、どこの国おいてもBiologicsは高額です。次々に登場する新しいBiologicsが価格競争で安くなる、ということはあまり期待できません。医療・福祉行政(政治家)を私たちの手で・声で変えていかなくてはなりません。IFPA(International Federation of Psoriasis Associations 乾癬患者組織国際連盟)年次総会はそんな期待の中で始まりました。
 IFPAの役割は、“-Worldwide unity for people living with psoriasis(乾癬患者を世界で結ぶ)-”
•お互いの知恵と理想を寄せ合い、乾癬患者の治療改善を目指すこと。
•世界各国で乾癬患者がお互いに助けあることができるよう、各国の乾癬患者組織作りに協力すること。
•乾癬患者、医師、研究者が一緒になって繰り広げる国際的な学会の手助けをすること。
•乾癬患者、医師、研究者の緊密な連携を促進するよう国際的フォーラムで意思表明。
そして、主要な活動の一つとしてWorld Psoriasis Day October 29(世界乾癬デー 10月29日)のデモンストレーションを世界中で行うことがあります。世界乾癬デーは世界保健機構(WHO)で承認された日付です。今年の世界乾癬デーのテーマは「Childhood Psoriasis –Challenge for all- (子供の乾癬 -みんなのチャレンジ)」(図を参照)。今年の世界乾癬デーでは、
•乾癬は子供時代にも発症することを知ってほしい
•子供の乾癬は家族全員へのチャレンジ
•子供の乾癬の治療法開発を進めてほしい
•I can do anything with psoriasis; it won’t me back(乾癬があってもへっちゃらよ、何も気後れすることないわ)と子供が言えるようなサポートを
•学校、友達、両親・家族、医療従事者、政治家、市民などさまざまなレベルでの乾癬の理解を深めること
などを行うことが確認されました。また乾癬を持つ子供たち自身が、みずからの体験、心情を絵に表し、その絵を公表したいとしています。すべてのIFPA加盟国でその絵を公募します。優秀作品には素敵なプレゼントも用意されるそうです(アイスランドにある乾癬治療温泉ブルー・ラグーンに無料招待)。
 また全世界に影響力を持つ世界保健機構(WHO)に対し、さらなる乾癬の理解を求め、乾癬の克服へ向けた活動、研究が世界規模のものとなるよう働きかけを進めることが確認されました。
 5日間の国際会議、IFPA総会はたいへん充実した内容で、細かくその内容をこの場ですべてお伝えできません。私の毎日の診療の中で、少しでも皆さまの治療に役立てていきたいと思います。また日本の乾癬患者会の絆がさらに深まり、そして世界の患者組織と歩みをともに進めていくことができるよう、私も微力ながらお手伝いしたい、との気持ちを深めた体験でした。パリ滞在の7日間はお天気にも恵まれ、夏のヨーロッパの長い昼間の時間を使い、パリの街中をカメラ片手に存分に歩いてきました。その写真をブログの「PHOTO & ESSAY」に掲載しています。ご覧ください。
 たいへん残念なことに、あろうことか、散歩中「ワールドカップすり」の被害にあい、小型カメラを盗まれてしまいました。会議・IFPA総会の模様、ポスター発表の内容などを数多く撮影した後の盗難であったため、ほんとうに残念でなりません。ワールドカップ開催中のその時、その賊は「ジャポネーゼ、ナカムーラ」と話しかけながら、散歩する私の周りでサッカーのドリブルのまね、そしてタックルのまねをしながら私にまとわりついたのでした。私はなんの危険を感じることもないまま、「チャオ!」と笑顔で言い残した若い彼をみおくりましたが、ふと気がついたときワイシャツの胸ポケットにしまっていた小型カメラは無くなっていました。皆さんもお気を付けください。

今年のWorld Psoriasis Day(世界乾癬デー 10月29日)のテーマ
(乾癬のTeddy Bear坊や)
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by kobayashi-skin-c | 2010-08-25 12:04 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2010年7月27日教室『トスカーナの休日』
『トスカーナの休日』

2010年5月、イタリア中部のトスカーナを旅しました。その旅行記を写真とともにお伝えします。
トスカーナの魅力は、連なる丘陵に広がる豊かな大地、美しい町々と芸術・文化、そして人を楽しませるワインと食事。その歴史は、紀元前8世紀ごろからエルトリア人が定住を始め、ローマ帝国領へとなる。ローマから北へ伸びるカッシア街道沿いの町として発展を始め、今でもローマ遺跡が数多く残る。ローマの庇護のもと交易で発展を遂げた町はやがて自治都市として独立し始め、海洋都市として十字軍を率いたピサが1081年にイタリアで最初の自治都市宣言(コムーネ)を行なった。そしてトスカーナの町々は次々に自治都市を名乗り、まさに群雄割拠の場所となった。アレッツォ、コルトーナ、サンジミニャーノ、シエナ、フィレンツェ、モンタルチーノ、ピエンツァ、ルッカなどの町々である。
しかし、やがてこれらの町々は互いの利益のため争いを繰り返すようになる。ことにフィレンツェとシエナの争いは、当時ヨーロッパを二分していたローマ教皇派と皇帝派の争いも絡んで複雑なものとなり、他の町々を巻き込みながら、壮絶な戦いは400年にも及んだ。同時に、この二つの町には独自の文化が花開き、文化的にもその美しさを競い合った。15世紀以降フィレンツェの町で台頭した商人組織、なかでもメディチ家が豊富な財力で実権を握り、他の町々を征服し、長年のライバルであったシエナを1555年に陥落させ、シエナ最後の砦となっていたモンタルチーノを1559年に陥落させた。そしてそれ以降メディチ家の庇護のもと、芸術復興(ルネッサンス)がフィレンツェの町に花開いた。
 町を巡りながら、歴史に思いをはせ、そしてワインに酔いしれた7日間の旅だった。写真を数葉ブログ内の『photo & essay』に掲載しました。

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by kobayashi-skin-c | 2010-07-27 18:44 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2010年6月22日教室『アトピー性皮膚炎の原因と治療』
日頃の診察室での会話の中で、「アトピー性皮膚炎ですね」、「アトピーでしょう」とお話しすると、たいへんがっかりされ「本当ですか、アトピーですか、・・・・。・・・・、そしたら食べ物も制限しなくてはならないんですか」とお答えになる方がかなり多くいらっしゃいます。とくに、お子様の診察を終え、お母さまに説明した場面で交わされる会話の中で多く聞かれます。

アトピー性皮膚炎はけっして特別な病気ではないこと、ことに乳幼児では5人に一人は皮膚のトラブルがあり、そのうちの2人に一人は親兄弟にやはり皮膚が弱い人がいたり、鼻炎・花粉症の人がおり、アトピー性皮膚炎と診断されること、強い食物アレルギーを起こすお子様はきわめてまれで、検査でアレルギーがみつかったからと言って、必ずしもアトピー性皮膚炎の原因とは言えないこと、むしろお部屋の乾燥、入浴のし過ぎ・洗い過ぎ、過度の清潔志向が原因となっていること、またメンタルな部分が大きいこと、などをお伝えしています。

アトピー性皮膚炎の治療で一番難しいのは、「先が見えないのに、続けなければならない」こと。このことからお薬の副作用の懸念、治療に対する不信感がふくらんでいきます。アトピー性皮膚炎の原因は単一ではなく、また皮膚の症状からくる精神、身体、社会生活への影響もさまざまであることから、治療は患者さんの皮膚だけではなく、患者さんをとりまくバックグランドにも目を向けなければなりません。なかなか統合的な治療は難しいものですが、患者さんご自身がご自分のアトピーの分析をされながら、コントロールする力を養われることが大切かと思います。そこに「先の明かりが見える」はずです。健康教室ではみんなで考えてみましょう。

この数年間でアトピー性皮膚炎の考え方が変わってきています。ことに大きな変化は次の研究論文から始まりました。
Nat Genet. 2006 Apr;38(4):399-400. Common loss-of-function variants of the epidermal barrier protein filaggrin are a major predisposing factor for atopic dermatitis.
(皮膚バリアー蛋白Filaggrinの主要な機能喪失型変異がアトピー性皮膚炎の発症危険因子となる ⇒皮膚バリアー機能とアレルギー疾患の関連を示唆する新たな遺伝子の発見)という論文で、その要点は、
アトピー性皮膚炎はアレルギー疾患でありながら、本来の免疫アレルギー的な機序のみならず皮膚のバリアー機能の破綻が発症に重要であることが指摘されているが、今回そのバリアー機能に関わる新たな遺伝子がアトピー性皮膚炎の発症に関与していることが報告された。その遺伝子とはFilaggrin蛋白をコードするFLG遺伝子である。Filaggrinは皮膚の角層形成に重要な蛋白であり、FLGの変異(R501Xと2282del4)により尋常性魚鱗癬(ichthyosis vulgaris)が発症することが報告されたが、本研究では、この変異がアトピー性皮膚炎の発症とも関連していることを示した。この変異はヨーロッパの人々の9%に存在する。さらに興味深いことに、本遺伝子変異と喘息との関連をみると、アトピー性皮膚炎を合併している喘息においてのみ有意な関連がみられた。アトピー性皮膚炎を合併する喘息患者においては、皮膚を介したアレルゲン感作が重要であることが示唆される。
難しい内容ですが、生来(遺伝的に)皮膚のバリア機能が悪いため(乾燥肌を起こしやすい)、ダニやハウスダストなどアレルギー抗原(物質)が皮膚の中に入り込みやすくなり、アレルギーの症状の発端となってしまう、ということです。皮膚のバリア機能は、皮膚の一番表面にある角質層が正常に働くことによって保たれていますが、遺伝的に角質層の成分に欠陥があると、皮膚には重大な障害が起こってしまいます。その障害の種類には様々なものがあり、原因となる遺伝子の変化も次々にみつかり、アトピー性皮膚炎もその一つとして考えられるようになったのです。


さらに、アトピー性皮膚炎の原因について、外因性、内因性の違いなども言われており、アトピー性皮膚炎はひとくくりの病気ではなく、いくつかのタイプ、原因があると考えられるようになりました。アトピー性皮膚炎の正確な診断、そして的確なタイプ分けを行ったうえで、それに最適な治療を選ぶ、そんな時代をむかえつつあります。
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by kobayashi-skin-c | 2010-06-26 14:22 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2010年5月25日教室『素敵な女性は肌を焼かない!?』
「素敵な女性は肌を焼かない」は、現京都大学皮膚科教授の宮地良樹先生が紫外線の害をまとめられた本の題名としたもので、たいへん的を得たキャッチコピーです。以前には「小麦色の肌」がもてはやされたり、「日焼けサロン(ひさろ)」が人気を集めたものです。もっと前には「黒んぼ大会」なるものもありました。しかし、多くの皮膚のトラブル、ことに女性にとって悩ましいシミ、そばかす、小じわなどの原因として、紫外線が大きく関わっていることが明らかになってきました。また皮膚がんの多くにも紫外線が関与しています。過度の日光浴、露出は禁物でしょう。ただいたずらに怖がる必要もありません。骨の形成のために必須のビタミンDは、紫外線の働きを受けて皮膚で作られるからです。季節、場所、機会に合わせて紫外線からの防御を柔軟にすることが大切です。

小林皮膚科クリニックでは、紫外線から肌を守る知識をまとめたパンフレット、また敏感肌をお持ちの方へのサンスクリーン剤(日焼け止めクリーム)のサンプルなどをそろえておりますので、ご相談ください。
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by kobayashi-skin-c | 2010-05-26 10:16 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)