カテゴリ:「皮膚の健康教室」抄録( 56 )
2010年5月25日教室『素敵な女性は肌を焼かない!?』
「素敵な女性は肌を焼かない」は、現京都大学皮膚科教授の宮地良樹先生が紫外線の害をまとめられた本の題名としたもので、たいへん的を得たキャッチコピーです。以前には「小麦色の肌」がもてはやされたり、「日焼けサロン(ひさろ)」が人気を集めたものです。もっと前には「黒んぼ大会」なるものもありました。しかし、多くの皮膚のトラブル、ことに女性にとって悩ましいシミ、そばかす、小じわなどの原因として、紫外線が大きく関わっていることが明らかになってきました。また皮膚がんの多くにも紫外線が関与しています。過度の日光浴、露出は禁物でしょう。ただいたずらに怖がる必要もありません。骨の形成のために必須のビタミンDは、紫外線の働きを受けて皮膚で作られるからです。季節、場所、機会に合わせて紫外線からの防御を柔軟にすることが大切です。

小林皮膚科クリニックでは、紫外線から肌を守る知識をまとめたパンフレット、また敏感肌をお持ちの方へのサンスクリーン剤(日焼け止めクリーム)のサンプルなどをそろえておりますので、ご相談ください。
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by kobayashi-skin-c | 2010-05-26 10:16 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2010年4月27日教室『ここがポイント、4月から始まる医療制度改革』
「崖っぷちの日本の医療を救う」と名うったマニフェストで始まった医療制度改革ですが、最近決定された診療報酬改定では0.19%増だけにとどまり、20%増をうたっていた鳩山総理の約束はまったく実現されませんでした。とにもかくにも、この数字の中でやりくりする以外にはありませんが、この改革によってどうみなさまの日頃の医療が変わるのか、そのポイントについて解説します。
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by kobayashi-skin-c | 2010-05-12 16:35 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2010年2月23日教室 『新しい乾癬の治療薬、生物製剤の使い方』
バイオロジックス(生物学的製剤)

 2010年1月、新しい乾癬の治療薬が登場しました。すでにお聞きの方も多いかと思いますが、2009年、全国の患者会有志が、この薬を必要とする方たちに一刻でも早く使っていただくことができるよう、厚生労働省に迅速審査の要望書の提出・署名活動を行い、早期の承認が実現したものです。皆さんがこのバイオロジックス(生物学的製剤)をより理解していただけるよう、その効果、副作用などについて、ご説明したいと思います。

バイオロジックスとは
 これらの薬が、生きた細胞(動物、植物、細菌、真菌を含む)で作られることから、バイオロジックス(生物学的製剤)と呼ばれています。今に限ったことではなく、北里柴三郎先生が破傷風やジフテリアの治療薬として開発したワクチンは、当時ウマを使って作られましたが、これも立派なバイオロジックスなのです。
ステロイドにしろ、ビタミンDにしろ、大半の薬剤は工場の機械の中で合成されて作られています。これら大量生産可能な薬と違って、今作られているバイオロジックスは細胞というたいへん、たいへん小さな生き物の中で作られることから、作られる量が少ない割に膨大な手間とコストがかかります。
その工場となる生きた細胞は、抗体と呼ばれるタンパクを作るためだけに特化したもので、一つの抗原(タンパク、ペプチド)だけに対して、一つの抗体だけを作らせることができます。この作られた抗体をモノクローナル(単クローン)抗体と呼びます。現在のバイオロジックスのほとんどが、このモノクローナル抗体です。何の抗原(タンパク、ペプチド)を標的にして無力化させるのか、その目的によってさまざまなモノクローナル抗体の創薬が可能です。最近ではがん細胞が持つタンパクを狙ったバイオロジックスも作られています。

乾癬の病気メカニズム、そして、そのピンポイント治療
 乾癬が起こるメカニズムが近年の研究で急速に進み、免疫の異常な働きが明らかにされてきました。とくに、免疫の主役となるT細胞にその元があることが、図1のように分かってきました。そのT細胞の働きを調節する分子(タンパク)、T細胞が出す免疫作用物質(サイトカイン)をピンポイントで無力化させると、理論・実験的には乾癬が治ることになります。ピンポイント攻撃を可能とするのが、バイオロジックス=モノクローナル抗体です。バイオロジックスは、選択的標的療法とも呼ばれています。乾癬の病気メカニズムの研究で分かってきたいろいろな分子(タンパク)やサイトカインをその標的として、図2、表1のようにバイオロジックスが作られてきました。
 その中でとくに良い効果を発揮したのが、TNFαというサイトカインを無力化させるバイオロジックスでした。現在、厚生労働省で審査中のInfliximab(インフリキシマブ、商品名:レミケード)、Adalimumab(アダリムマブ、商品名:ヒュミラ)です。そしてもう一つ、熱い注目を浴びているのが、T細胞の中でもTH17と呼ばれる細胞の働きを抑えるUstekinumab(抗IL-12/23 p40モノクローナル抗体)です。現在わが国でも開発試験中です。この三つのバイオロジックスの特徴を表2にまとめます。

Infliximab(インフリキシマブ、商品名:レミケード)
 インフリキシマブ、商品名:レミケードは、TNFαを無力化させるために作られたモノクローナル抗体です。この抗体はマウス(ネズミ)の細胞を工場として作られています。ただし、ネズミの抗体をそのままヒトに注射すると拒絶反応を起こしますので、TNFαを無力化させる部分はそのままですが、その他の部分はヒト型のタンパクに置き換えられています。それでも、一部にネズミのタンパク部分があるので、弱い拒絶反応が起こる場合があります(点滴注射中の発熱、吐き気など)。また長く使っているとヒトの体の中に中和抗体が生じ、抵抗性となってしまいます。
 点滴注射で最初の2回は2週おきに、それ以降は2ヶ月に1回の注射を続けます。PASI 75という効果指標(注釈を参考)で、73~82%という高い効力を発揮します。わが国では、関節リウマチ、クローン病で使われています。

Adalimumab(アダリムマブ、商品名:ヒュミラ)
 アダリムマブ、商品名:ヒュミラは、TNFαを無力化させるために作られたモノクローナル抗体です。この抗体はヒトの細胞を工場として作られているので、拒絶反応はなく、また皮下注射できますので、自宅での治療が可能です。ヒトの細胞を工場として作られたヒトのモノクローナル抗体であることから、インフリキシマブよりも若干効果が劣ります(PASI 75は、53~80%)。
 専用の注射器で2週間に1回、皮下注射を続けます。2008年から関節リウマチの患者さんに使われています。

Ustekinumab(抗IL-12/23 p40モノクローナル抗体)
 乾癬の病気メカニズムの観点から、いま一番注目されているバイオロジックスです。最近行われた開発試験では、優れた効果と、高い忍容性(副作用が少ないこと)が確認されました。わが国での開発試験は現在進行形で、認可までにはあと数年は要するでしょう。
 ヒト型のモノクローナル抗体であり、2~6ヶ月に1回の皮下注射でよいと言われています。

バイオロジックスの副作用
 バイオロジックスは、乾癬病気メカニズムに即したピンポイント攻撃可能な治療法ですが、乾癬の病気の部分だけではなく、体全体の免疫力にも影響を与えます。いちばん懸念されるのが、免疫力低下よる感染症です。インフリキシマブを使っていたリウマチ患者さんで、約3%の頻度で重症感染症が起こっています。肺炎、カリニー性肺炎、結核などです。とくにわが国では、結核を潜在的に持っている人が多いため、バイオロジックス治療前にはツベルクリン検査を含め、注意をすることが大切です。
 また、予測もしていなかった副作用が生じていることも事実です。関節リウマチ、クローン病患者さんのバイオロジックス治療中に、乾癬、掌蹠膿疱症(限局性膿疱性乾癬)が生じた症例が報告されています。そのほかにも、心臓(うっ血性心不全)、脳細胞への影響(脱髄性疾患、多発性硬化症など)も指摘されています。
 バイオロジックスはまったく新しい治療法であり、免疫反応の全容もまだまだ分かっていない部分が多いことから、今までの知識で予想できない副作用が生じることがあるのです。バイオロジックスを始めるに当たっては、治療を受ける患者さんも、また治療を行う私たちも、細心の注意と緻密な検討が必要と思われます。

バイオロジックスのコスト
 バイオロジックスを作るには膨大な手間とコストがかかっているため、治療の際の費用も大きなものです。症状・体重により若干の差はありますが、一年間で約200万円(詳細は表を参照)がかかります。乾癬の病気の性質上、症状を抑えるために治療は長期にわたります。この費用上の問題点をいかに克服するか、みんなの知恵が必要です。乾癬のつらさに分け隔てはありません。治療に分け隔てが生じることがないよう、みんなで考えましょう。

注釈
PASI 75とは、Psoriasis Area Severity Index 75%改善、のことを表します。PASIスコアが治療以前の75%以下になることを指し、寛解に近い状態を得ることと言ってよいでしょう。

図・表付きのパンフがクリニックに準備されています。ご希望の方はクリニックでお申し出ください。
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by kobayashi-skin-c | 2010-02-26 19:00 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2010年1月26日教室 抄録 『これからの医療 -民主党政権になって変わること-』
 2009年のキーワードは、「政権交代」でした。8月に行われた衆議院選挙で、わが国で初めてといわれる「民意による政権の交代」が成し遂げられました。マニフェスト政治を旗印に選挙を勝ち抜いた民主党ですが、わが国を覆っている財政不況が、理想の実現を困難にしており、さらには鳩山総理大臣自身の献金問題から政治基盤を弱めており、今後の連立政権の維持さえも危うい気配が感じられます。
 わが国の医療は、世界随一とも言えるレベル、国民の高い満足度を保っていましたが、相次ぐ医療費の削減、ことに小泉内閣以来の政策により「崩壊寸前」とまで言われるようになってしまいました。救急病院での搬送拒否、産科・小児科医師の激減、病院・病棟の閉鎖などが地方のみならず、大都市でも進行しています。この「崖っぷちの日本の医療を救う」と名うった民主党のマニフェストでしたが、最近決定された診療報酬改定では0.19%増だけにとどまり、20%増をうたっていた鳩山総理の約束はまったく実現されませんでした。とにもかくにも、これからの2年間はこの数字の中でやりくりする以外にはありませんが、日本の医療の未来は、民主党政権下でも明るくないようです。
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by kobayashi-skin-c | 2010-01-29 13:42 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2009年12月22日教室 『アトピーでお悩みの方に、-脱ステロイド、脱軟膏ってどういうことなの?-』
 アトピー性皮膚炎の治療は長期にわたることが多く、使用している薬の副作用も大きな気懸かりとなります。アトピーの症状をもっとも適確に、すばやく改善するのはステロイド外用剤です。しかし長年使い続けることによって、皮膚が薄くなってしまい、かえって刺激症状を起こしやすくなり、痒みに対して敏感になってしまうこともしばしばです。このステロイド外用剤の副作用が社会問題となり、なんとかステロイド外用剤から抜け出すことはできないか、さまざまな工夫がなされています。脱ステロイドです。また最近ではステロイドではない保湿剤・ワセリンなどの外用も、自分自身の皮膚の保護力を弱めるので、いっさいの外用をしない方が良い、といった考え方も出てきています。
 どの方法が良いのか、模範解答はありませんが、その人その人の皮膚症状に、またライフスタイルに、そして考え方に合ったものを選ぶのが最良の道と言えるでしょう。成人型アトピーの方達がもつお悩みについて語り合いましょう。
 脱ステロイド、脱軟膏・脱保湿といわれる治療法は、「成人型アトピー性皮膚炎とは、ステロイド依存性皮膚症(皮膚が外用ステロイドなしには普通に機能しない状態)を合併するアトピー性皮膚炎で、その9割の患者は保湿環境に適応した皮膚の状態である保湿剤依存症(MD)を伴う。従って、ステロイド外用剤の副作用を伴ったアトピー性皮膚炎であり、ステロイド外用剤を中止しない限り本症からの離脱はあり得ない」といった考え方、あるいは「汗、垢、皮脂が自然の保護膜であり、保湿をすることで正常な保湿機能を喪失し、かえって自然の回復力を弱めるので、過度な保湿治療は避けるべきである」との考え方から始まった「アトピー性皮膚炎の治療法の一つ」です。しかしながら、これらの意見は偏った見方だと思います。アトピーにおける皮膚バリア機能の低下、あるいは遺伝子レベルで天然保湿成分のフィラグリン産生低下は明らかな事実であり、すべてのアトピー患者さんで、現在の保湿ケアが否定されるものではありません。むしろ冬季の乾燥した時期には、積極的な保湿ケアは推奨されるべきと思います。
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by kobayashi-skin-c | 2009-12-25 14:53 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2009年11月24日『アトピーでお悩みの方に、最新の治療から 
 成人型アトピー性皮膚炎の治療として、昨年10月からネオーラル(シクロスポリン)内服治療が保険適応となり、重症症状に悩まされている方々の症状改善に大きな役割を果たしつつあります。ネオーラルは免疫抑制作用を持つ薬剤で、本来は臓器移植手術後の拒否反応を抑える目的で使われていましたが、最近ではさまざまな免疫の異常にかかわる病気にも使われるようになっています。
 このネオーラルの内服の際には、副作用予防のため注意も必要です。どのようなときに、ネオーラル内服治療が役立つのか、どんな注意が必要なのか、皆さんと一緒に勉強したいと思います。
【ネオーラル治療の対象となるアトピー性皮膚炎】
・16歳以上のアトピー性皮膚炎の患者さんで
・これまでの治療で十分な効果が得られず、
・強い炎症を伴う湿疹が広範囲にある患者さんに使用されます。
【ネオーラルの服用方法、服用量】
・通常1日量を2回に分けて、朝、夕に服用します。
・服用量は患者さんの湿疹の症状、体重によって異なります。1日3mgx体重(kg)が目安です。
【ネオーラルの服用期間】
・湿疹が悪化している時期に、一時的に服用します。
・改善されればネオーラルを中止し、外用薬を中心とした治療を行います。
・長期間継続して服用するお薬ではありません。
・最長でも3ヶ月間服用したら、いったんは中止します。
(NOVARTIS発行「大人のアトピー性皮膚炎の適切なケア」川島 眞先生著から引用)
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by kobayashi-skin-c | 2009-12-03 08:06 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)