アトピー性皮膚炎の治療は長期にわたることが多く、使用している薬の副作用も大きな気懸かりとなります。アトピーの症状をもっとも適確に、すばやく改善するのはステロイド外用剤です。しかし長年使い続けることによって、皮膚が薄くなってしまい、かえって刺激症状を起こしやすくなり、痒みに対して敏感になってしまうこともしばしばです。このステロイド外用剤の副作用が社会問題となり、なんとかステロイド外用剤から抜け出すことはできないか、さまざまな工夫がなされています。脱ステロイドです。また最近ではステロイドではない保湿剤・ワセリンなどの外用も、自分自身の皮膚の保護力を弱めるので、いっさいの外用をしない方が良い、といった考え方も出てきています。
どの方法が良いのか、模範解答はありませんが、その人その人の皮膚症状に、またライフスタイルに、そして考え方に合ったものを選ぶのが最良の道と言えるでしょう。成人型アトピーの方達がもつお悩みについて語り合いましょう。
脱ステロイド、脱軟膏・脱保湿といわれる治療法は、「成人型アトピー性皮膚炎とは、ステロイド依存性皮膚症(皮膚が外用ステロイドなしには普通に機能しない状態)を合併するアトピー性皮膚炎で、その9割の患者は保湿環境に適応した皮膚の状態である保湿剤依存症(MD)を伴う。従って、ステロイド外用剤の副作用を伴ったアトピー性皮膚炎であり、ステロイド外用剤を中止しない限り本症からの離脱はあり得ない」といった考え方、あるいは「汗、垢、皮脂が自然の保護膜であり、保湿をすることで正常な保湿機能を喪失し、かえって自然の回復力を弱めるので、過度な保湿治療は避けるべきである」との考え方から始まった「アトピー性皮膚炎の治療法の一つ」です。しかしながら、これらの意見は偏った見方だと思います。アトピーにおける皮膚バリア機能の低下、あるいは遺伝子レベルで天然保湿成分のフィラグリン産生低下は明らかな事実であり、すべてのアトピー患者さんで、現在の保湿ケアが否定されるものではありません。むしろ冬季の乾燥した時期には、積極的な保湿ケアは推奨されるべきと思います。