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2011年3月22日教室 かゆみの起こるわけ、かゆみの治療
皮膚の病気でつらいのが、何といっても「かゆ~い!」、かゆみ(搔痒)。
ところが意外と「かゆみ」のメカニズムは分っていません。最新の情報を
お届けすると同時に、かゆい時の対処法、そして昨年の暮れに保険適応
(発売)となったばかりの新しい薬剤について解説しました。

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「かゆみ」がどのように起こり、どのようにして感じるのかをめぐる研究が活発になっています。まず「かゆみ」は、皮膚の表皮直下にある「かゆみ神経受容体」で「かゆみ刺激」をキャッチします。その刺激は神経C線維を伝わって、脊髄視床路→視床→大脳皮質へと伝わり、「かゆみ」として感じます。以前には、「かゆみ」は「痛み感覚の弱いもの」として考えられていましたが、「かゆみ刺激」も「神経経路」も「痛み」とは違うものであることが明らかになりました。さらに、「かゆみ刺激」、「かゆみ神経経路」にかかわる様々な物質、神経ホルモンなどが明らかになるとともに、「かゆみ」を抑制する新しい薬剤の開発が進んでいます。

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しかし、「かゆみ」の全容解明にはまだまだいたらず、適確に「かゆみ」を抑えることができません。たとえばじんましん(蕁麻疹)では、そのメカニズムがある程度簡単に説明されることから(上図を参照)、「かゆみ刺激」物質であるヒスタミンをブロックする薬剤を内服すると、蕁麻疹の「かゆみ」はピタッとおさまりますが、アトピー性皮膚炎のメカニズムは複雑であり、もっとも辛い症状である「かゆみ」をなかなか抑える手段がありません。

「かゆみ」治療には次のような手段があります。
1.皮膚の炎症を抑制する(最も重要かつ効果的)
①ステロイド外用
②タクロリムス外用
③シクロスポリン内服
2.抗ヒスタミン薬
3.冷やす
4.スキンケア
5.マイナートランキライザー
6.κ-オピオイド刺激薬

もっとも効果的な「かゆみ」治療は、
1.皮膚の炎症を抑制する(最も重要かつ効果的)
①ステロイド外用、②タクロリムス外用
③シクロスポリン内服、④紫外線照射治療など
・炎症部位ではリンパ球、好酸球から放出されるIL-2, IL-31, TNFαなどが痒みを起こす。
・T細胞機能を抑制するだけでも(タクロリムス、シクロスポリン)、痒みは軽減する。
・神経原性炎症(サブスタンスPなど)も抑制する。

次に有効な「かゆみ」治療が、
2.抗ヒスタミン薬
・最近は抗アレルギー薬(第二・三世代抗ヒスタミン薬)が主体。抗ヒスタミン作用に加え、多彩な抗アレルギー作用、抗炎症作用も有する。
・継続して内服したほうが効果が出る(アトピー)。
・副作用が少ない。抗コリン作用がなく、緑内障、前立腺肥大に悪影響を及ぼさない。
・効果・副作用には個人差があるので、1~2週間使って効果がない場合は変更する。

抗ヒスタミン剤は開発された年代により次のように分類されます。第二世代以降は抗アレルギー剤とも呼ばれています。新しいほど、かゆみ抑制効果が高く、眠気・だるさなどの副作用が少なくなっています。
第一世代
レスタミン、ペリアクチン、アタックス、ホモクロミン、ポララミン、タベジール、ニポラジン/ゼスラン
第二世代
ザジテン、アゼプチン、ダレン/レミカット、セルテクト
第三世代
アレジオン、ジルテック、アレロック、アレグラ、タリオン、エバステル、クラリチン、

・眠気の注意がないのは、アレグラ、クラリチン。
・「危険を伴う機械の操作する際には注意」:アレジオン、タリオン、エバステル。
・他のすべては、「危険を伴う機械の操作には従事させない」こととなっています。
・妊婦では、ポララミン、タベジールは比較的安全。
・肝機能障害者では、アレグラ、タリオン。
・腎機能障害者では、アレグラ、エバステル、ダレン。

xyzal(ザイザル)
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約10年の間わが国では、新しい抗ヒスタミン剤の発売がありませんでしたが、昨年12月「xyzal(ザイザル)」が発売されました。期待される薬剤です。














そのほかの「かゆみ」治療として
3.冷やす
・冷た過ぎないほうがよい。
4.スキンケア
・ドライスキンでは神経終末が皮膚表面まで伸長。
5.マイナートランキライザー
6.κ-オピオイド刺激薬
・μ-オピオイド受容体は痒みを増強し、 κ-オピオイド受容体は抑制する。最近κ-オピオイドアゴニスト(ナルフラフィン[レミッチ])が開発された。
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「かゆみ」を感じる大脳皮質で中枢性かゆみを抑制する新しい薬剤です。今までの「かゆみ」治療とはまったく違った種類の薬剤であり、その大きな効果が期待されています。ことに腎臓病のため人工透析を受けている方々の多くが、強い「かゆみ」で苦しんでおられますが、今まで抑えることができなかったそのつらい「かゆみ」を抑えることが確認されました。現時点で「レミッチ」は透析中の腎不全の方のみに保険適応となっています。今後、ほかの皮膚疾患(たとえばアトピーなど)でも使えるようになることが期待されます。

「かゆみ」は「引っ掻かざるを得ない『不快な感覚』」と定義されています。ところが、『不快』とばかりは言えないところに、「かゆみ」の奥深さがあります。それはかゆいところを掻くと「気持ちいい快感」が得られる所にあります。だから「掻く」のってやめられないんですよね。そもそも「かゆい」→「掻く」は反射的におこる当たり前の反応・動作なのです。動物だって足を使って、ときには口・くちばしを使って掻く動作を行っています。私たち動物は、昔から昆虫との戦いを続けています。蚊、ブヨ、ダニ、ノミ、・・・・・、最近でこそ防虫剤の発達で少なくなってきていますが、昆虫からわが身を守る必要があります。昆虫が媒介する病気もたくさんあります(たとえば日本脳炎、ウエストナイル病、マラリア、デング熱、ライム病、などなど)。それから守るのが「引っ掻く」ことなのです。引っ掻いて蚊を射止めることもできますし、引っ掻いて伝染性の病原体を取り除いています。

なのに皮膚科の病院に行くと、「引っ掻かないでくださいネ」、「引っ掻くから治らないのですよ」と耳にたこができるぐらい、みなさん注意されていませんか。無理ですよね、引っ掻くのを我慢するなんて。

さてさて今日の健康教室の結論、「かゆみ」メカニズムの研究から新しい治療法も開発されています。しかしながら、まだまだその全貌は明らかにされていません。確実に「かゆみ」を抑える手段はまだありません。「かゆみどめ」の薬なんてまだこの世の中にありません。でも、ひっかいて皮膚病を悪くさせることも事実。

「かゆみ」を和らげる工夫を行いながら、それでもかゆい時、
「引っ掻いてください、でも皮膚に優しくね」
by kobayashi-skin-c | 2011-05-14 23:35 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(1)
Commented by ルイヴィトン 店舗 at 2013-07-08 10:31 x
今日は~^^またブログ覗かせていただきました。よろしくお願いします。
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