「内臓」を包むのが「皮膚」、「皮膚」に包まれているものが「内臓」。当然、そこには密接なかかわりがあります。肝臓が悪い時、腎臓が悪い時、糖尿病の時、皮膚には何らかの兆候が現れます。その「兆候」を「デルマドローム」と呼びます。「デルマドローム」を知っておくことは、内臓の病気のいち早い察知につながります。同時に、むやみな心配を不要とする安心感にもつながります。「皮膚は内臓の鏡」。知っておきましょう、その姿を。講師は、10月から赴任した新副院長、有田 賢医師が担当いたしました。
「デルマドローム」とは、 デルマ(皮膚)+シンドローム(一連の症状の集まり) 内臓の症状が皮膚の症状として出現してくること、つまり皮膚の症状から内臓疾患がわかる場合があります たとえば、全身の皮膚がだんだんと黒ずんできて、そして口の中にも、くちびるにも黒ずみが出てきたら、 ![]() ![]() 体がだるくありませんか、なんだかとっても疲れやすくなっていませんか、髪も抜けやすくありませんか? アジソン病と言います。「副腎皮質ホルモン」といって生きていくうえで必須のホルモンが少なくなってしまう病気です。 たとえば、 ![]() 何だか急に体中に「いぼ」が増えてきたと感じたら、『要注意!』 「Leser-Trelat(レゼル-トレラ)徴候」と言われています。 ・内臓悪性腫瘍に伴うデルマドローム ・中高年の脂漏性角化症が突然短期間(6ヶ月)で その数と大きさが増す 数百から2000個 ・胃癌>大腸癌>肺癌>乳癌>菌状息肉症(皮膚リンパ腫) ・腫瘍から産生される何らかの因子が皮膚の増殖を刺激する ![]() どんな種類があるのでしょう、 1.内臓悪性腫瘍と皮膚 ①腫瘍が皮膚に直接転移 乳がんの皮膚転移 ![]() 乳がんの皮膚転移は 他のがんより比較的多い。 Sister Mary Joseph結節 ![]() 胃、膵、大腸、卵巣など 腹腔内悪性腫瘍の 臍部(へそ)への転移 ②腫瘍が分泌する物質に対する反応 悪性型黒色表皮腫 ![]() わきの下など襞になる部分を中心に 皮膚が黒ずんでごわごわしてくる。 がんが分泌する増殖因子が関与 ③腫瘍による免疫応答の変化 腫瘍随伴天疱瘡 ![]() ![]() 皮膚の細胞をつないでいる接着板が 異常免疫で破壊される。 全身の皮膚がむけてくるが、 とくに粘膜の症状が強い 皮膚筋炎 ![]() ![]() 関節の伸側が角化、背中などに痒みの強い紅斑。 上まぶたが赤紫に腫れる。筋力低下を伴う。 膠原病の一種だが、高率に悪性腫瘍を伴う。 2.糖尿病と皮膚 ①循環障害 ![]() 糖尿病性壊疽 ②細胞障害 好中球の機能障害(遊走力、貪食能、殺菌作用の低下) →免疫力低下 →易感染性 口腔内カンジダ症 ![]() 線維芽細胞、組織球の機能障害 →浮腫性硬化症 →リポイド類壊死症 ![]() 3.肝臓と皮膚 ①胆汁分泌の閉塞 ・黄疸 ・皮膚掻痒症 ②肝炎ウイルスに対する免疫反応 ・蕁麻疹の特殊なタイプ ③代謝反応の低下(肝硬変) 女性ホルモン(エストロゲン)の蓄積による変化 ・手掌紅斑 ・くも(蜘蛛)状血管腫 ・女性化乳房 ![]() 4.腎臓と皮膚 腎では代謝産物を排泄する機能があり、それが障害されると 血中に貯留する ①血中カルシウム、マグネシウムの上昇→皮膚瘙痒症 ②代謝産物が皮膚に蓄積し、汗腺、脂腺の機能異常、発汗減少 →皮膚乾燥 ③カロチン、ウロクローム、ヘモジデリンなどの沈着が関与 →色素沈着 ④変性した膠原線維を排出 →反応性穿孔性膠原線維症 5.内分泌と皮膚 ホルモンの異常分泌から来る皮膚の異常 ①Addison病:副腎皮質ホルモンの分泌低下 →皮膚や粘膜の色素沈着 ②Cushing病:副腎皮質ホルモンの分泌亢進 →多毛、皮膚線条、ニキビなど ③Basedow氏病:甲状腺ホルモンの分泌亢進 →脛骨前粘液水腫、脱毛症 ![]() 6.妊娠に伴う皮膚変化 ・色素沈着 ・妊娠性肝斑 ・多毛 ・妊娠線状萎縮 ・クモ状血管腫 ・手掌紅斑 ・妊娠腫瘍 ・下腿の浮腫、静脈瘤 まとめ ・皮膚疾患はその多くが皮膚自体の異常によるもので、 すべての症状を内臓疾患と関連付ける必要はありません。 ・しかし皮膚疾患の中には、その特徴的な症状で 内臓疾患を示唆するものもあります。 ・皮膚は単なる衣ではなく、重要な役割をもつ一つの臓器です。 ・皮膚は体の内面の変化を反映するとともに、皮膚の変化 そのものも体の内面に影響をおよぼしえます。 皮膚の変化から全身状態の変化を察知するのも、皮膚科医の 重要な責務です。皮膚の表面に「おやっ」と感じたら、早めに、 ご相談ください。私たち皮膚科医は、皮膚の奥にひそんでいる かもしれない変化を見逃しません。
by kobayashi-skin-c
| 2012-11-28 13:03
| 「皮膚の健康教室」抄録
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