薬はクスリである以上リスクを伴います。 「クスリはリスク」 なのです。
最近、いろいろな薬が薬局で買えるようになってきています。今までは、医師の診断と処方箋がないと使うことができなかった薬剤が、次々と薬局で薬剤師の判断で売られるようになったのです。医療費削減のため、些細な病気程度では医療機関にかからずとも、保険を使わずとも薬を買える。すなわち健康保険・国民保険が使われないので、医療費が減るという政策です。そのうち「風邪や水虫では病院にかかるな」と言われそうです。些細な病気っていったいだれが判断するの?保険は使われないけど、いったいだれの懐からお金は出ていくの?と思いませんか。 今懸念されているのが、けっこう強めの薬までもが薬局で買えるようになってきたため、その薬で副作用・薬害が生じる可能性が高まっていることです。もちろん、十分な薬の知識をもった薬剤師さんが注意を払って患者さんに薬を売るわけですが、大切な病気の本質を見抜けなかったり、副作用の実際についての知識・経験に乏しかったりするかも知れません。またチェーン店のドラッグストアなど、売り上げ至上主義もまかり通ってしまうかも知れません。 皮膚科医からみた注意すべき薬の副作用について(とくに薬疹と呼ばれるもの)、皆さんに理解を深めていただきたいと思います。同時に、今の医療政策の流れがこれで良いのか、皆さんと一緒に考えていきましょう。 『スイッチOTC薬』 という言葉をご存知ですか? これまで医師の処方箋によらなければ使用できなかった指定医薬品(処方せん医薬品)指定の医療用医薬品の中から使用実績があり、副作用の心配が少ないなどの要件を満たした医薬品を薬局などで処方箋なしに購入できるよう、一般用医薬品として認可したものをスイッチOTC薬といいます。 ①1985年に解禁され、水虫治療用の抗真菌外用薬から始まり、イブプロフェン錠、にきび治療外用薬(ペアアクネなど)、ケトプロフェン外用剤、H2ブロッカー(ガスター10)などが1990年代までに市販化された。 ②2000年代に入るとニコレット☆、フェルビナク外用剤、フルコナゾールやテルビナフィンなど第二世代の水虫外用薬、ニコチネルパッチ☆、第二世代抗ヒスタミン薬、アシクロビル軟膏、肝斑改善を用途としたトラネキサム酸錠剤☆、ジクロフェナクナトリウム外用剤と拡充を続けた。 ③2011年にはロキソニン錠が解熱鎮痛剤として市販化されるまでに至っている(☆印は生活改善薬)。 ④2013年には、抗アレルギー薬であるフェキソフェナジン(アレグラ)が「アレグラFX」として、セチリジン(ジルテック)がコンタック鼻炎Zで市販された。これらの2剤は、抗アレルギー薬の処方量ベスト1,2であった。 スイッチOTC薬の価格は薬価によりメーカーの言い値が効かない医療用よりも高く、健康保険も適用されないが、医師の診察・検査料や処方せん料などが不要なため、同一の薬剤を処方されるのであれば安く済む事も多く、診察や調剤の待ち時間がかからず利便性が高い。厚生労働省は医療用医薬品のスイッチOTC化を推進しようとしており、さらに今後は高コレステロール、高血圧、高血糖に使用する医薬品もスイッチOTC化することが検討されている。(Wikipediaから引用) 最近発売されたアレグラFXがすでに安売り合戦の対象となっており、大手チェーンドラッグストアが攻勢をかけています。しかし、ほんとうにそんな売り方で安全なのでしょうか。 クスリはリスク 薬の本来の望まれる作用以外に生じる反応が副作用であり、副作用によって患者さんが大きな被害をこうむった場合「薬害」と呼ばれます。薬の副作用はおもに、1.非アレルギー性と、2.アレルギー性の機序で起こります。 1.薬の効果による副作用(非アレルギー性) ①薬の効き過ぎ(抗がん剤による血球減少・脱毛など) ②薬の望まれない効果(胃腸障害、抗ヒスタミン剤による眠気、抗生剤による菌交代現象など) 2.アレルギー性の副作用 ①一部の人だけに生じる。頻度は少ない(医者は、「まれに起こる」と説明するが、「まれ」っていったいどれぐらい?) ②薬疹、肝障害、血球減少など致命的な場合がある 副作用にる薬疹によって、命が危険にさらされることもあります。重症型薬疹です。3種類の病態が知られており、10-40%の方が亡くなってしまいます。 1.TEN 中毒性表皮壊死症 2.SJS スティーブンス・ジョンソン症候群 3.DIHS 薬剤性過敏症候群 以下の写真はインターネットから引用したものですが、重篤な皮膚症状であり、ショッキングな画像かもしれません。お許しください。 ご存知ですか?健康被害救済制度 医薬品の副作用などによる被害を受けられた方を救済する公的な制度です。 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 社団法人 日本医師会、社団法人 日本薬剤師会 薬の副作用によって生じた被害(薬害)を補償する制度です。病院で処方された薬剤のみならず、薬局で購入した薬剤で生じた薬害も補償されます。ただし一定のルールに従って使われた薬剤が対象であり、家族の薬を飲んだ、医師・薬剤師の指示に従わなかった、などの事例では補償を受けることはできません。 「クスリはリスク」 。薬剤の安易な使用は避けたいものですが、安易に薬剤を手にすることができるよう誘導するスイッチOTC、そして自己責任を押しつける国の医療施策には、批判の目を向けなければなりません。 高齢者の増加、不景気による税収不足から、医療費抑制政策がいまも進められています。アメリカ追従内閣としか言えない今の安倍内閣が進めているのは、TTP(環太平洋経済連携協定)への参加。自由貿易協定によっていやおうなしに、巨大製薬資本からの新薬購入圧力、巨大健康保険会社からの保険自由化圧力に日本はさらされるようななります。日本の国民皆保険制度は崩されるかもしれません。自らの健康を守るためにも、わが国が誇る保険制度を大切にしなければなりません。
by kobayashi-skin-c
| 2013-03-31 15:24
| 「皮膚の健康教室」抄録
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