日本アルプスの盟主、槍ヶ岳に登り、残雪の槍沢を滑った。好天に恵まれ思い出深い山行となった。
1日目早朝、上高地バスターミナルを出発。いつもは観光客でごった返す「河童橋」。この季節、早朝、人はまばらで、森の新緑、梓川の清流、そして残雪の穂高の山々が、静かに目の前に広がっていた。
横尾までの遊歩道沿いの森の中はニリンソウ、ツバメオモト、シロバナノエンレイソウが白い絨毯のように一面咲いていた。スキー、スノーボードを担ぐ私たちに、みんなが好奇の目を向ける。会う人、会う人がほぼ間違いなく、「まだ雪はあるの?」、「どこを滑るの?」、「どこから来たの?」と聞いてきた。そして「もの好きねえ」と言葉で言わないものの、目がそう語っていた。そう、まさに「もの好きなのですよ」。
1日目は、上高地から5時間で、昼過ぎに槍沢ロッジに入り、明日の登山に備え、のんびりと過ごした。
ババ平を過ぎるとまもなく雪渓歩きとなった。スキーブーツに履き替え、アイゼンを装着する。
苦しいグリーンバンドへの急坂を登りきると、眼前に槍の穂先が目に入った。しかしまだ遠い。空気も薄い。喘ぎながら、重いスキーを担いで、一歩一歩ゆっくりと登った。
槍の肩の山荘にスキーを置いて、再び夏靴に履き替え、山頂への岩壁を登った。そしてついに山頂へ(3180m)。誰もいない!独り(四人)占めの天空の世界を満喫した。
槍の肩に戻っていよいよ、スキー滑走。少し緩めのザラメ雪。表面にデコボコが多く、ところどころに岩が露出している。
真っ青な空、白い雪、青々とした峰々、そして山頂からのシュプールを眺めながら、満足感、達成感がない交ぜになった幸せな気持ちに浸った。山に、天気に、そして案内してくれたノマドの小田さんに感謝した。