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2017年1月教室 『蕁麻疹について』
毎日の診療の中で、蕁麻疹の患者さんをみるとき難しいのが、なかなか原因を特定できないことです。突然体中に蕁麻疹が広がった急性蕁麻疹の患者さんから、「なにも変わったものは食べていないのに、昨夜のおかずが悪かったのでしょうか」との質問。もう10年も通ってこられている慢性蕁麻疹の患者さんからは、「先生、いったいいつになったら治るの?どこか内臓でも悪いんですか?」との質問。残念ながら、私は的確にお答えすることができません。でも「治ります」、「よくなります」とお答えして、内服薬をお渡ししています。

その難しい『蕁麻疹』とはいったい、
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『蕁麻疹』はかゆい病気の代表的なものですが、多くの皮膚疾患の中から、その特徴的な皮膚変化と時間経過から、視診と問診でほぼ確実に診断されます。
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でも『かゆい!』ってつらいですよね。
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『蕁麻疹』の症状は、ちょうどこの蚊に食われたときの皮膚変化とよく似ています。
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掻いたとおりに皮膚が盛り上がる蕁麻疹、まぶたがはれ上がる蕁麻疹もあります。
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『蕁麻疹』がどのように起こるのか、おおむね下の図のような機序が分かっており、マスト細胞から出されるヒスタミンといわれる化学物質が、皮膚の痒み、皮膚の腫れを作ります。
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では、なぜマスト細胞がヒスタミンを出すのか。はっきり分かっているのはIgEを介するアレルギーですが、これはまれです。食物アレルギーが証明される患者さんはほとんどいません。
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たしかに、青魚を食べた後に蕁麻疹が出ることはよく聞きますが(小生は「カツオのたたき」で経験あり)、かといってほとんどの蕁麻疹の方では、とくに食べ物が指摘されるわけではありません。
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原因として挙げられているものは数多くありますが、実際のところはっきりとした原因はつかめないことのほうが多く、一番下に挙げられた「疲労・ストレス」が、もっとも関連深いように思います。


最近、化粧品などが原因となってアレルギーが誘導され、蕁麻疹やアナフィラキシーといった重症症状を引き起こすことが明らかにされています。
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こうした研究が進むと、もっともっと蕁麻疹の原因が分かってくるのかも知れませんね。

さて治療については、ここに書かれた薬剤、治療法が使われます。H1拮抗薬(抗ヒスタミン・抗アレルギー薬)がもっとも効果的で、例外的な方を除いて、内服により蕁麻疹は消失します。
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しかし、内服を中断するとまた蕁麻疹が生じる『慢性蕁麻疹』の方からは『いったいいつ治るんだ』とよくお叱りを受けます。そのときは、『蕁麻疹は体内からの信号、ちょっと疲れていませんか?ストレスが続いていませんか?無理をなさらないようにしてください』とお答えしていますが、『10年も疲れ続けてなんかいませんよ』とつっこまれることも。そうすると、迷医の私は困ってしまって『山にでも登ってみませんか』とつぶやいたり、『運気が変われば治ります!』と口走ってしまいます。申し訳ありません。『かならず治りますよ、よくなりますよ』。
by kobayashi-skin-c | 2017-01-28 16:18 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
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