NHKなどのニュースでも報道されたアトピー性皮膚炎の新しい治療薬、抗IL31療法。いったいどんな治療法でしょうか。アトピー性皮膚炎の原因として皮膚バリア機能の低下が明らかとなり、保湿スキンケアの重要性が分かりました。しかし、保湿だけでアトピー性皮膚炎のつらさが改善されるわけではありません。アトピー性皮膚炎患者のだれもがかゆみの苦しさにつらい思いをしています。このかゆみのメカニズムに効果を発揮するのが「抗IL31療法」です。最新の話題をお届けしたいと思います。
今年の3月2日、3日の報道をご覧になった方も大勢おられることと思います。
京都大学医学部皮膚科教授の椛島先生が主体となって行った研究成果が、米国の医学雑誌に掲載されました。その概要は次のとおりです。
アトピー性皮膚炎で痒みは必発であり、痒み→ひっかく→皮膚炎の悪化→痒みの悪化→さらにひっかく→・・・・の悪循環が生じます(itch scratch cycle)。アトピー性皮膚炎の治療においては、痒みのコントロールが最大の目的となります。
アトピー性皮膚炎の病態研究が進むにつれて、痒みにかかわってくる様々な原因が明らかになってきました。
なかでもIL-31と呼ばれる物質が重要であり、IL-31の働きをとめる薬剤(ネモリツマブ)の開発が行われたのです。
ネモリツマブはモノクローナル抗体と呼ばれる製剤で、生物学的製剤の一つです。乾癬の治療ではすでに10年前から実用化されていましたが、アトピー性皮膚炎の治療でも近々使えるようになります。ネモリツマブ以外にも生物学的製剤をはじめ新薬の開発が相次いでおり、ことに重症のアトピー性皮膚炎のため苦しまれている患者さんにとって、大きな福音となることが期待されます。