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2018年4月教室 『アトピー性皮膚炎の新治療薬:デュピクセント』
待望のアトピー性皮膚炎の新治療薬、デュピクセントが発売になります。デュピクセントは世界初の抗IL-4/13受容体モノクローナル抗体で、乾癬治療では当たり前となった生物学的製剤の一つです。IL-4/13によるシグナル伝達を阻害し、アトピー性皮膚炎のかゆみ、炎症を強力に抑えます。開発試験時において重症の副作用はほとんど生じていません。課題はその値段にあります。生物学的製剤に共通した問題ですが、デュピクセントは300mgの注射が約8万円(3割負担の方で自己負担額が2.4万円)です。2週間に一度続ける必要があります。デュピクセントの作用機序、効果について皆様にお伝えいたします。

アトピー性皮膚炎を持つ方々は、ほぼ間違いなく、つらい痒みのため、不眠や勉学・勤務に集中できないという悩みをお持ちです。さらに引っかくことにより、皮膚炎の悪化を招き、よりかゆみが強くなりまた引っかくという悪循環に陥ってしまいます。日本皮膚科学会では「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」を作成し、治療の均質化を図っていますが、重症アトピー性皮膚炎の治療にはなかなか決め手がありませんでした。
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私たち皮膚科医は、症状をみながら外用薬の選択に努力します。しかし強いステロイド外用薬に対する不安感、不満を持つ患者さんも多く、さらに治療を難しくする現状があります。

近年アトピー性皮膚炎が皮膚バリアの破綻をきっかけとして、Th2型という免疫経路が強い痒み、皮膚の炎症を起こすことが明らかとなり、免疫経路にかかわるさまざまな物質も特定されるようになりました。このさまざまな物質をブロックする治療が今日の新薬です。分子標的薬あるいは生物学的製剤と呼ばれます。
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新薬デュピクセントはTh2免疫経路にかかわるIL(インターロイキン)-4、IL-13を標的とする生物学的製剤です。
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2週間に一度の皮下注射を行います。
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開発試験時のデュピクセントの効果です。ここでいうEASI-50とは、印象でいうと「かなり良くなった」、EASI-75とは「すごく良くなった」、EASI-90は「ほとんどなくなった」に相当するとお考え下さい。
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デュピクセントの効果は治療を始めてから早い段階で現れます(EASI変化率)。
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痒みに対しても早期から有効です。
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副作用(国際共同試験
3
試験集計)

403例(日本人62例を含む)において、副作用123例(30.5%)に認められました。

な副作用は、注射部位反応29例(7.2%)、頭痛12例(3.0%)、アレルギー性結膜炎7(1.7%) 。重篤な感染症はありませんでした。

※主な副作用:プラセボ群の発現率よりも1%以上高い頻度で認められた副作用のうち、発現頻度が高かった上位3つを主な副作用として記した。

デュピクセントは世界で初のアトピー性皮膚炎に対する生物学的製剤です。治療的意義はたいへん高いものがあります。しかしながら、新治療薬につきものの高額な医療費が問題として残ります。注射1本が約¥80,000であり、3割自己負担額は¥24,000、月に¥48,000という高額になります。目を丸くされる方が多いと思います。皮膚科医にとってもたいへん残念な気持ちではありますが、こうしてアトピー性皮膚炎の研究が進み、新薬が登場したことに大きな感慨を覚えます。これからも、さらに新しい生物学的製剤の開発が進みます。アトピー性皮膚炎の研究、治療が、けっして医療から置き去りにされてはいないこと、大きな希望があることを、デュピクセントの登場が如実に語っています。「つらいアトピーからの解放」には幾筋もの通り道があります。その一つにデュピクセント(生物学的製剤)を加え、精神的にも大きな支えとしていただきたいと思います。

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デュピクセント資料の一部は、サノフィ社「デュピクセント」ホームページから引用いたしました。




by kobayashi-skin-c | 2018-04-29 12:14 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
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