いよいよ最終章へ。 エクラン山塊での訓練を終えて、 第8日目午前 クリストフともう一人のガイドLionel リオネルと共に、フランスのブリアンソンから、イタリアのチェルヴィニアへ 車で移動。途中ずっと雨、ときどき土砂降りとなり、稲妻が空を走る。チェルヴィニアに着いてからも雨。アブルッツォ小屋へは、4輪ジープで行くこととした。イギリス人の若者4人グループも一緒であった。この雨、山の上は雪だろうな。不安である。 アブルッツォ小屋到着後、クリストフとリオネルから荷物のチェックを受ける。3835mにあるカレル小屋では自炊なので、三食分の食料と3リットルの水を運ばなくてはならない。重くはしたくない、しかし水・食料不足にはなりたくない。結局ザックはかなりの重量となった。 第9日目 晴天の朝を迎えた。5:00am小屋を出発。山頂が見えている。新雪をかぶっている。すぐに急登となりジグザグの道となり、やがてクライミング。衣子とクリストフ、私とリオネルがザイルでつながった。両端がすっぱり落ちたコルを通過すると、ロープが張られた岩壁が続く。カレル小屋を目前にした岩壁が、この日一番の難所だった。約20mのほぼ垂直な壁。まずクリストフが登り出しで何か舌打ちをした。岩が凍っているのだ。登り出し2mの高さにまずカムを入れた。順番から言えば衣子が次に続くが、リオネルが先に登り、岩壁の上でクリストフ、リオネルの二人で私たちを確保するようだ。衣子が先に登り始めたが、凍った岩壁に苦労する。そして私の順番、まず最初のカムを岩壁からはずさなければならないが、凍った岩壁に足場が取れず、ロープで体を引っ張り上げながら片手でカムをはずそうとするがはずれない。ここで両腕の力を使いきってしまった。おまけにロープも凍っていたので手袋では滑る、カムははずれない、力を失った腕は凍ったロープをつかむことができない。 手間取っている間に、渋滞を作ってしまった。岩壁の下で待つ人々が激励してくれるが、苛立っている者もいるようだ。思わず上にいる衣子に向かって「もう、帰りたい!登れない!クリストフにそう伝えてくれ!」と叫び声を上げてしまった。そう叫ぶ自分を情けないと思ったが、とにかく万策尽きたと思った。しかし上からは降りようなどの声は聞こえない。少し回復した腕の力を使いながら、そして情けないことにクリストフとリオネルに引っ張られながら、何とか岩壁を乗り切ったが、精神的にやられてしまった。 ![]() ![]() 最初に現れた固定ロープ。 ![]() ![]() その日の夕食と翌日の朝食を準備。日本から持ち込んだ食料に皆興味津々。 ![]() 夕食のとき、明日の行動について話し合った。クリストフから「この雪と登山者の多さからは、登頂は難しい。行けるところまで行って、山を楽しもう」と告げられた。自信を喪失していた私は「登頂できないのなら、朝一番で下山したい」と弱気。衣子は「行けるところまで行こうよ!」と強気。 ![]() 夕食を終えて外に出ると、意外にも空が晴れ渡り、Pic Tyndallのピークまで見上げることができた。ピークに登れなくても、また次に挑戦するときのために、明日もう少し経験してみるか、登ってみるか!と勇気が湧いてきた。 ![]() 第10日目登頂日。朝4:00、ヘッドランプを点してカレル小屋を出発。約2時間登るころ、登山者による渋滞が顕著となってきた。体が冷える。クリストフから「そろそろ引き返そう」の合図があった。悔しかったが「体力、技術、気力不足」と自分に言い聞かせるほかはなかった。日が昇るころ、カレル小屋に向かって下山。 ![]() そして一気にアブルッツォ小屋まで下った。 ![]() クリストフ、リオネル、 こんな未熟な私たちを、よくぞ4000mの高みまで引き上げてくれて、どうもありがとう。 晴れ渡り、雪も薄くなったマッターホルンの頂上を、いくぶん恨めしくみつめながら、 「また、来るぜ!」(とは、衣子の一言)
by kobayashi-skin-c
| 2018-08-29 14:54
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