2018年9月6日未明、広島市内のホテルのベッドで寝ていた私は、何気なく目を覚ましiPhoneの画面を覗いた。「北海道で大地震」の文字が目に飛び込んできた。
9月5日、私たち北海道広島県人会の一行は「西日本豪雨災害義援金」を湯崎広島県知事に届けた。知事に豪雨災害のお見舞いを述べ、知事からは労いの言葉を頂戴した。そしてその夜は広島マツダスタジアムで広島カープ松田オーナーを表敬訪問し、カープの試合を観戦した。カープは惜しくも試合に敗れたが、私たちは義援金を届けた安堵感とともに、楽しくやすらいだ気分でホテルにもどった。 6日未明から地震のニュースはテレビで流され続け、被害がとてつもなく大きいことに愕然とした。札幌市内でも震度6を記録したとのこと、また北海道全域の停電が生じたことに大きな不安を感じた。家族、クリニックスタッフの安否が気遣われたが、連絡はなかなか取れなかった。電話がつながったスタッフに、まず自分の身の回りの安全を確保し、集まれるものだけで皆の安否、クリニックの様子を確認するよう伝えた。私自身も気が動転し、電話でうまく伝えられたかどうか不安であったが、それ以上に札幌にいる家族・スタッフはどんなに不安であったろうか、どんなに怖かったであろうか、と思うと申し訳なく現場に居合わせなかった自分を歯がゆく思った。 9月6日は北海道のほぼ全域が終日停電であり、新千歳空港は閉鎖、JRもすべて運休の模様であった。さいわいに家族もスタッフも全員が無事であることが確認できたが、今度は自分たちがどうやって札幌に帰ることができるのか心配になった。7日に入って少しずつ電気の復旧があり、新千歳空港も午後から再開する模様であることがテレビで伝えられたので、朝からまず広島空港に向かった。驚いたことに、新千歳への10:50発直行便は定刻どおりの運行であった。ただ新千歳空港へのJR、バスすべてが運休であるとのアナウンスがあった。息子に「空港まで迎えにくることはできないか」との電話を入れたが、「ガソリンがない!」とのことであった。 9月7日13:00、新千歳空港に到着し驚いた。空港全体が難民収容所の体。待合室にもロビーにも、廊下にも、さらに空港外の歩道にも人が座りこみ寝転がっていた。アナウンスどおりJR、バスはすべて運休。ただ車は空港内にたくさん乗り入れていた。「タクシー?」と思っていたところに、空港係員が「札幌ご希望ですか?」と声を掛けてくれ、もう一人の方と一緒に三名でタクシーに乗り込むことができた。札幌までの道中、信号機のほとんどが作動しておらず、交差点内での事故も幾度か目撃したが、1時間あまりで無事自宅に辿り着いた。電気の復旧を期待していたが、自宅マンションはまだ停電のままであった。 さて自宅はマンションの39階、真っ暗な非常階段を、携帯の灯りを頼りにエッチラオッチラと登った。ところどころに人が休んでいる。声を掛け合う。普段のマンション生活ではない人とのふれあいである。日ごろから山に登っている私たちは、さほどの疲れもないまま一気に39階を登りきった。「部屋の中はどうなっているのだろうか、家具は倒れ、食器は散乱・・・?」とおそるおそる玄関を開けると、意外にも本棚の絵皿が一枚床に落ちて割れていただけで、食器棚も、本棚も、すべて元のままであり、ほっと安堵した。 日頃から緊急時への対策は、????、まったく怠っていた。ただ山行の道具、食料はあったので、あとは水のみ。また39階を下り、避難所の水を分けていただき、コンビニを訪ねたが食料品は皆無で、39階に戻った。日が暮れて、あちこちの灯りがともり始めたが、わがマンションは停電のままで、山用のヘッドランプ、カンテラを用意して「さあ、万全」と思っていたところに電気が回復した。現代生活の便利さ、危うさを再認識するとともに、広島の豪雨にしても、北海道の大地震にしても、災害は誰にでも、どこにでも起こりえるものであることを身をもって実感した。大自然の恩恵を受けながら私たち人間は生きている。しかし反面、大自然の脅威とともに私たちは生きている。大自然に感謝、畏怖し、謙虚であることが大切であると、深く思った。 「西日本豪雨災害」、「北海道胆振東部地震」被災者の皆さまに心からお見舞い申し上げます。 9月7日、なんとか札幌に戻り、停電で真っ暗な自宅マンションの階段を、携帯の灯りを頼りに登った。 その夜の我家の全財産。山行のための食料、コンロ、ヘッドランプ、カンテラがあり不安は感じなかった。
by kobayashi-skin-c
| 2018-11-16 13:23
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