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2019年1月教室 『食物アレルギーと皮膚』
近年に至るまで食べ物のアレルギーでアトピー性皮膚炎が悪くなる、あるいは蕁麻疹が現れる、あるいはニキビが悪化する、といった説明がなされたりしていましたが、最近の研究で、「皮膚は食物アレルギーの結果」と言うよりも、「皮膚は食物アレルギーの原因を作る」と言うことが分かってきました。

かつて1980年~2000年の頃、「アトピー性皮膚炎の原因は食物アレルギー」と言い切る医師が少なからず存在し、アトピー性皮膚炎治療に極端な食事制限が行われていました。栄養不足で発育・成長に異常をきたしたお子さんを診ることもありました。そして食事制限を厳密に指示されるあまり、母親が大きなストレスを抱え、家庭がこわれてしまった事例にも遭遇しました。


食物アレルギーで困っている方はたしかに大勢おられます。しかし、アトピー性皮膚炎=食物アレルギーではけっしてないのです。

食物アレルギーには次のような症状があります。
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原因食物の頻度は、
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そして食物アレルギーを起こす食物は年齢とともに変化し、症状も変わっていきます。
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食物アレルギーがどうして起こるのか、
米国の小児科学会でも2000年に発表された指針で、

・妊娠中、授乳中のアレルギー食品の摂取を避けること
・乳製品を与えるのは1歳以降、卵は2歳、ナッツや魚は3歳以降
などの食事制限が指示されていました。ところが、与えていないはずの卵や、ピーナッツなどで、1歳未満の乳児ででも血液検査でIgE特異抗体がみつかることが指摘され、2003年、英国から画期的な研究成果が発表されました。

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ピーナッツアレルギーがなぜ起こるか、それは食べ始めてからアレルギーを起こすようになるのではなく、赤ん坊のときに日常的に使われていたピーナッツオイルを含むスキンケアクリーム、あるいはテーブルや床に落ちているピーナッツ食品が原因であり、皮膚に湿疹や掻き傷が多い子供に起こりやすいことが、調査結果からわかったのです。ピーナッツを食べ始めて腸でアレルギーが認識されるのではなく、皮膚に付着したピーナッツ成分が皮膚でアレルギー起こすようになり(経皮感作)、食品としても受け付けなくなるというメカニズムでした。

この研究者はさらに、むしろ赤ん坊のときから積極的に早めに口にしたほうが、ピーナッツアレルギーを起こしにくくなることを見つけました(経口免疫寛容)。
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同様の事例が、わが国でもみつかりました。ただし、事件として。
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石鹸の泡立ちをよくするために混ぜられていた小麦粉成分が、皮膚や粘膜でアレルギーを起こすようになり、小麦食品を食べると蕁麻疹を起こしたり、重症の人ではアナフィラキシーを起こすことが見つかったのです。

お分かりいただけましたでしょうか。食物アレルギーの概念が大きく変わったのです。
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アトピー性皮膚炎をもつ赤ん坊、お子様、そして乾燥肌をもつ大人にも口をすっぱくして「石鹸使うな!皮膚をこするな!」とお伝えしているのはこのことからです。皮膚は人体を外界から守る最前線。健康な皮膚を保つことが大切であり、石鹸の匂いをふりまくことが健康な皮膚でも、美しい肌でもありません。
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北海道は今が冬。厳しい寒さとともに、室内の湿度は低下の一方。乾燥肌が気になるところですが、乾燥肌があっても皮膚バリアが壊されているわけではありません。なんでも保湿クリームさえ塗っていれば安心だ、という風潮がはびこっていますが、それは間違い。

皮膚バリアの破壊に直結するのは、こすること、ひっかくこと、そして石鹸(ことに液体石鹸)の使いすぎ!

いま一度、生活を見直してみませんか、「きれい」、「かわいい」がはばをきかす今の風潮を。厳しい寒さの折、くれぐれもご自愛のほどを。


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by kobayashi-skin-c | 2019-01-23 11:33 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
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