2.Mera Peak (6476 m) メラピーク 日本を出発してからはや10日、いよいよ目標に挑む時だ。 朝日に照らされたメラ山群。左端に目指す中央峰、すぐ右隣が北峰、右端が西峰。 急坂を登って振り返ると、手前にKhareのロッジ群。屹立する山は左がKyashar(6769m)、右にカンテガ(6783m)、タムセルク(6618m) 登りはじめるとすぐに高度を実感する。苦しい、一歩一歩がつらい。後から出発してきた約10名のドイツ隊に追い越される。ただただ下を向いて「ビスターリ、ビスターリ(ゆっくり、ゆっくり)」とつぶやきながら、呼吸を整えながら、歩みを進める。「足が前にさえ出れば、いつかは必ず頂上に立てる!」。 目指すメラピーク中央峰はまだまだ遠い。氷河上に積もった雪を踏みしめ、ビスターリ、ビスターリとつぶやきながら登る。 4月21日(日)Mera High Camp (5,780m) → Summit Mera Peak(6,461m)→ Mera High Camp (5,780m) →Mera La, trek to Kongma Dingma (4,850m/15912ft) 01:45起床。ポリッジと紅茶で朝食を簡単にとり、ヘッドランプを灯してDikさんとともに闇の中を出発。我々の前に灯りはない。我々が一番先に出発したようだ。寒い!とくに手が冷たくなる。手袋の中で指を曲げたり伸ばしたり、血行を良くするように頑張るが、暖かくなるまでに1時間は要した。そのうち今度は目がちかちかしてきた。まつげが凍ったのだろうと思い、軽くこすってみるがちかちかしたままで、だんだんと痛くなり、目には涙が溢れるようになった。東の空が明るくなるころ、Dikさんに目を見てもらったが「氷ついていない」とのこと。「ああ、雪目だ!くそっ!サングラスをはずすことは決してしていない。ヒマラヤの紫外線の強さは半端じゃなかったのか、昨日ずっとうつむきながら雪渓、氷河の上を歩いていたからか、くそっ!」。呼吸は苦しいし、目は痛いし、涙でかすんで景色が見えないし、・・・。でもとにかく登頂のことだけを念じながら一歩一歩進んだ。 傾斜が増した頂上ドームも、ユマールなしで登り、そして06:30山頂フラッグをこの手でつかんだ。「Dikさん、ありがとう」、二人で抱き合った。目はかすんで見えていなかったが、写真に収めておけばあとで振り返ることができるだろうと思って、こっちがマカルーの方角、こっちがエヴェレスト、こっちはチョーオユー、とまさに「めくらめっぽう」にシャッターを押した。そして二人で交互に頂上の記念撮影を済ませ、最後にピタンバルさんが用意した大きな記念フラッグをDikさんが取り出して、さあ写真、と思ったら、Dikさんが「先生のiPhoneがない!」、「さっきリュックの上に置いたよ」、「ない」。Dikさんはリュックの底の底まで確認したが、「ない」。iPhoneはリュックの上から雪の上に落ちて、あっという間に氷河の底まで滑って行ったのだろう。涙、涙のMera Peakとなった。
by kobayashi-skin-c
| 2019-06-03 06:57
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