アンプ・ラプチャ峠トレッキング 今回の計画のそもそもの始まりは、アンプ・ラプチャ峠トレッキングへの憧れであった。テントに泊まりながら、エヴェレスト、ローツェを眼前にホンギュ谷を北上し、アンプ・ラプチャ峠を越えて、イムジャ谷へと向かう夢のようなコースだ。アルパイン的要素があり、人も少ないと聞く。 ここで、今回たどった道のりを地図で簡単にご説明しておきたい。エヴェレスト山群(クンブー山群)はネパールの北東部。その中国(チベット)国境には名だたる8000m峰が集まり、山好きにとっては息を呑むような景観が広がる。玄関口は飛行場のあるルクラの町。ここを出発点にいろんな方向に向かってトレッキングが始まる。今回のコースを赤の点線(・・・・・・)で、宿泊地を黄色の三角印、ハイライトとなったメラピーク、アンプ・ラプチャ峠、アイランドピーク、カラ・パタールを赤い三角印で、そして名だたる高峰を赤い枠で囲んである。 さあ、アンプ・ラプチャ峠トレッキングの始まりである。 Mera Peakに登頂したのち、10:20無事High Campまで下山。しばらくテントの中で横になった。12:30 Mera Peak High Campを出発、途中Mera Laでポーターの二人と合流し、いよいよAmphu Labcha La pass(5,845mアンプ・ラプチャ峠) へと向かった。MeraLaからは誰も歩いていない雪渓を進む。雪が緩み、膝まで埋まりながらの歩行で、とにかく疲れて苦しかった。 雪渓が終わると岩礫の間の道となり、雪目でかすむぼやけた視野のではたいへん怖かった。16:00 Kongma Dingma (4,850m)に到着。テントは快適。バッティの中で簡単な夕食を済ませ、早々と就寝、今日の行動時間、14時間45分! 4月22日(月)Kongma Dingma (4,850m) to Seto Pokhari (5035m)
今日は午前中早くから山には雲がかかり始めた。北上を続けるホンギュ谷の向こうには、エヴェレスト、ローツェが見えるはずなのだが、・・・。ちょっとした登りでも今日は息が切れる。一昨日、昨日の疲れがまだ残っているのだろう。誰もいない広い谷間に、忽然とテント村が現れた。 13:50 Seto Pokhariのテント場に到着。Pokhariは湖の意であるが、Amphu Labcha La pass Trekkingで期待されていたホンギュ谷に点在する湖はまだ全部結氷したままだった。残雪が多い。早々と就寝した。テント生活は快適である。 4月23日(火)Seto Pokhari (5035m) to Amphu Labcha Base Camp (South) (5,650m) 深夜01:30にトイレのため目を醒ましテントの外に出ると、満点の星空だった。そして山のシルエットがテント場を囲む。それから目がさえてしまって何度もテントの外に出る。04:00ごろ、下弦の月がChmalangの頂にかかり、山を照らす。05:50、いくつかの山の頂が朝日に照らされ紅に染まり始めた。北の方角にはまごうことなきエヴェレスト、ローツェが見える。南の方角にはPeak41。その美しい鋭鋒が真紅に染まっていた。 右端で光るのはローツェシャール。 南の方角には、たどってきたホンギュ谷とPeak41、Seto Pokhari。 まさにパラダイス! 07:00早目の朝食、そして出発。抜けるような青さの空、雪を被ったヒマラヤの峰々、行く手にエヴェレスト、ローツェを望みながら、夢見心地の気分であった。 写真を撮りながらのんびりと歩き、一番景色の良いところでピクニックランチをとることとした。お湯を沸かしてスープヌードルとゆで卵を作り、みんなで山を見ながら楽しい時を過ごした。 AmphuLabcha Base Campが近付いてからは一面の雪渓となり、緩んだ雪にずいぶんと苦しめられた。重い荷物を背負ったダワさん、アンビルさんはもっと苦しいに違いない。15:00 Amphu Labcha Base Campに着いたときにはずいぶん消耗していた。なんせ終始5000mを越えたところを歩いていたのだから。 Amphu Labcha BaseCampはすっかり雪に覆われ、わずかに土が出ている部分にはすでにチェコ隊がテントを設営しており、私はバッティの中でDikさん、ダワさん、アンビルさんとともに寝ることとした。真夜中12時ごろ、急な腹痛に襲われた。Khareを出てからのテント生活中、便秘を決め込んでいたので便意が強くきたのに違いない。意を決して雪の中へと進みお尻を出して排便。戸外での排便は子供のころにあったかも知れないが、記憶にある限りはない。それでもなんら支障なく、膝も耐えられたので、ほっとした。むしろ誇らしくもあった。これでどんな山でもどんな野外生活でもへっちゃらだと。しかし、バッティに戻ってシュラフにもぐりこんでしばらくすると、また腹痛が襲ってきた。Oh No!再度雪の中に突入。多少軟便であったがすっきりと排便。次に腹痛がくることはなかった。ますます誇らしい気分になり翌朝を迎えた。 4月24日(水)Amphu Labcha Base Camp(5,650m) to Amphu Labcha La pass (5,845m), and to Chhukung (4,750m) 今日も晴天の朝を向かえ、05:30朝食、06:00、日本隊の4人、チェコ隊の4人、総勢8人でBCを出発した。チェコ隊の二人には「私を気にせず先に行くよう」伝えておいたので、マイペースを心がける。 岩屑の急登から雪渓・氷河へと変わり、アイゼンを装着。振り返ると雪原の中のAmphu Labcha Base Campがはるか下に見えていた。 雪、氷、岩のミックスとなり、3m弱の垂直の岩壁越えも現れた。ロープが張ってあったが3歩目で足を滑らせて越えられず、Dikさんからハーネス装着の指示を受けた。素直に従い、ロープで引き上げられる。 迫力あるAmphuLabcha Glacierのアイスフォール帯の脇を抜けながら、09:45峠の頂上に到着。チェコ隊のLibor、Ladia、そしてDikさん、リンジーさんとがっちり握手。 峠の上からは、今までたどってきたホンギュ谷と囲む山々、峠の稜線に続く山々、そして峠の向こうのイムジャ谷をはさんで屹立するローツェ、ヌプツェ、エヴェレスト、無数のヒマラヤの峰々を見晴らすことができた。 Amphu Labcha Laのイムジャ谷側は斜度がきつく固定ロープが張られている。この壁を荷物を担いだポーターさんが下りることはできないので、Dikさん、リンジーさんが荷物だけをロープで懸垂下降。途中引っかかるので、何度も登ったり下りたりを繰り返した。すごい体力と技術だ。エヴェレスト登山にしても、こうしたシェルパの働きで登らせてもらっているのか、と実感する。Dikさんもさすがに息を切らして、口笛を吹くように息を長く吐く深呼吸を繰り返していた。荷物のあとから我々も確保器(ATC)を固定ロープに装着し、懸垂下降で下りる。雪が軟らかく足をとられてバランスを崩したが、約50mの壁を下って、今度は雪の急斜面をトラバースし難所を越えた。傾斜が緩み、雪と岩屑が混じった斜面を下ったが、足の疲れからか何度も転び、斜面にしゃがみこんだ。前を歩くチェコ隊との間には、近道となる雪渓が広がっていたので尻滑りで下りて行ったが、チェコ隊のリンジーさんは「やめろやめろ」の手振。かまわず滑っていったところ、リンジーさんは走って止めに来た。北海道の残雪期では当たり前の尻滑りなのだが。私自身はずいぶんと体力を節約できたと思った。 雪渓が消え、装備をはずす。振り返ると、写真上中央の三角形の岩塔が今越えたAmphu Labcha La。 イムジャ谷に下りてからの道のりはまだまだ遠く、疲労はけっこう極限状態となった(ガス欠、空腹が大きかった)。チュクンのロッジ群が見えたときにはほんとうに嬉しかった。17:00チュクンのYak LandLodgeに到着。行動時間11時間。疲れたー!、そして感激、感動の嵐。Dikさん、リンジーさん、そしてLibor、Ladia、ありがとう。夢を果たしたのが、夢のよう。 4月25日(木)、26日(金)チュクンにて休息日
by kobayashi-skin-c
| 2019-06-15 18:48
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