アイランド・ピークIsland Peak (6,189m) イムジャ谷の奥、島のように浮かんでいるので、ちょっとさえないネーミングだが、アイランド・ピークIsland Peakと呼ばれている。シェルパさんたちは「アイスランド・ピーク」と発音している!雪と氷に覆われた山だから「アイスランド」とのことであった。最近では「イムジャツェ:イムジャ・コーラ(イムジャ谷)の最奥にある山」の意が使われている。やりがいがある山だ。6000mの高度感の中でアルパインクライミングが必要とされる。 4月27日(土)Chhukung (4,750m) to Island Peak Base Camp (5,200m) 今日も晴天。09:20 Yak Land Lodgeを出発。Amphu Labcha Laから下ってきた道をイムジャ谷の上流に向かってたどる。ヒマラヤ襞の美しいカンレヤムウを右に見ながら、左にはローツェ南壁を仰ぎながら、上流へ上流へと向かう。 Amphu Labcha Laへの道を右に分けながら、Island Peakへの道はやがて広い谷間を歩くようになり、正面にはアイランド・ピークが姿を現す。8000m峰には及ばないが、岩と氷の美しい山である。11:50 BCに到着。広い谷間に20‐30張のテントが立ち並ぶ。 午後はテントでのんびりと過ごしながら、Dikさんから明日の指示を受ける。18:00スパゲティの夕食をお腹いっぱいにとった。すぐに就寝。 4月28日(日)Island Peak Base Camp (5,200m) to Island Peak (6,189m), and back to Chhukung(4,750m) 0:00起床。ぐっすりと眠ることができた。体調はすこぶる良い。高山病症状はまったく現れない。0:30温かいスープとポップコーン、フライドライスの朝食を摂る。1:00予定通りBCを出発。空は満天の星。暗闇の中、先行するパーティーのヘッドランプの灯りが見える。最初の30分は平坦な道を歩いたが、やがてジグザグの登りとなりスピードが鈍る。今日はチェコ隊とともに5人で隊列を組んで進むこととなった。少しプレッシャーを感じるが、ビスターリ、ビスターリとみずからに言い聞かせる。喘ぐほどのスピードに絶対ならないよう、少しだけ苦しいぐらいのゆっくりとした足取りで、しかし絶対止まらないように、ヘッドランプの灯りで照らされるDikさんの足元だけを頼りに登っていった。岩屑の道から岩壁の道へ、そして空が少し明るくなり始めるころ、道は雪に変わり、広い氷河の末端に到着。ここでアプローチシューズから冬靴へはきかえ、アイゼン、ハーネス、クライミングギアを装着した。周りの景色が見えはじめてきた。氷河のど真ん中にいる。氷河が少し赤みを帯びてきた。空は宇宙の青さ。あまりの荘厳さに心が震える。今から挑むアイランド・ピークへの挨拶に、思わず大きな雄叫びを上げる。 5人、コンティでロープを結び、先頭がリンジー、そして私、Libor、Ladia、そしてDikさんの順で登りはじめた。まずは細い雪稜、次に一番目のクレバスを梯子で渡る。少しバランスを崩し、腰を落として慎重に渡った。 次に細いクレバスをジャンプ、続いて深いクレバス上にかろうじて残るスノーブリッジを慎重に渡り、80度はあろうかという3段のアルミ梯子が連結されたクレバスを越え、さらにもう2回梯子をわたったところで頂上直下の広い雪田に出た。雪田の向こうに100mほどの雪壁がそそり立つ。その上が頂上だ。雪壁をすでに数人が登り始めている。 我々もユマールをセットして登りはじめる。今度はDikさんがすぐ前に来てサポートしてくれる。それにしてもユマールをセットしたフィックスロープのなんとみすぼらしいこと。クライミングに使うロープとは違って、荷造りに使うビニール紐みたい。それも少し毛羽立っている。30-40mごとにアイスバーが打ち込まれており、ユマールとビレーカラビナを次のフィックスロープにセットしなおす。面倒くさい作業だ。70‐80度の斜度の登りはきつい。 ユマールを両手で掴んで体を引き上げる。しかし原則は脚の力で登ること。腕に頼ると大きく息が切れる。数歩登っては深呼吸を繰り返し、喘ぎ喘ぎまた数歩登る。また止まって深呼吸。アドレナリン全開でみずからを鼓舞しながら、そして頂上稜線に立った。Dikさんが嬉しそうに祝福してくれる。頂上稜線からの絶景にふたたび雄叫びを上げる。 そして07:50、狭い頂上に立った。 Dikさんと、続いて登ってきたLibor、Ladia、そしてリンジーと抱き合う。立っているのも難しいぐらい疲れていたので、安全のためにも座り込んだ。呼吸が落ち着いてからあらためて周囲を見渡す。すごいところへ来たもんだ! 下りは楽だった。登頂の歓びをかみしめながら、絶景を楽しみながらBCへと下っていった。12:00、BC帰着。すぐにテントに倒れこんだ。ランチを食べるよう言われたが、疲れすぎているのか、まったく食欲がわかずアンビルさんに食べてもらうこととして、小一時間は眠った。14:20、BCをあとにしてチュクンに向けて下山開始。16:30やっとの思いでチュクンのロッジに到着。先に着いていたチェコチームと、健闘をたたえあった。今日の行動時間、15時間30分!お目当てのヤクステーキは品切れだったが、チキンステーキ、ローストポテト、ビール、ラム酒で乾杯した。人生で何度もない歓喜の日であった。みんなに感謝したい。 残す行程は、カラ・パタール! やはりエヴェレストに挨拶しておきたい。
by kobayashi-skin-c
| 2019-06-16 12:50
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