2021年4月-5月 『故郷広島へ#2 途中山陰に寄り道』 April-May 2021 "On the Way to My Home, Hiroshima #2"

故郷広島への旅は、瀬戸内海から山陰へ。

どうして山陰へ？「そこに山があるから」。

大山（だいせん）は、中国地方の最高峰であり、古代から信仰の山である。高校1年生の冬休み、学校では希望者だけのスキー合宿が大山でおこなわれた。バレー部にいた私は、監督が発する「怪我をするからだめだ」との警告を破り、スキー合宿に参加。そしてスキーに魅了された。北海道大学に進学したのも、この大山スキー合宿に少なからぬ縁がある。そして、北海道に来て、またまたスキーが縁で衣子と出会い結婚して、そのまま北海道に居ついた。そのことを大山に登りながら話すと、「ご愁傷さま」と一言返事。いえいえ、大山の神様・仏様に感謝です。

大山では、大山寺宿坊に泊まった。宿坊の部屋からは、大山北壁が美しく見えた。胸が高鳴る。精進料理をいただき、座禅を組み、身も心も調（ととの）えて山に備える。般若湯もいただいたが。宿坊の部屋から観る大山北壁。伯耆平野に聳える独立峰ながら、アルパイン風の尾根が連なっている。

宿坊の夕食は精進料理。春の山菜が並ぶ。お米は赤米。タンパク質のほとんどが豆腐を含め大豆料理。何よりも大山で採られた山菜尽くしであったのが嬉しかった。
下は般若湯！

山に出発する日の早朝、座禅を組んだ。自然と相対しながら無我の境地、とはいかず、山の天気、風の音に心が飛んだ。警策がパチリ！　有難かった。
さて、身も心も調え、大山さんの懐へ。
用意していただいたお握りをリュックに入れて、出発。まず大山寺山門をくぐり、本堂で祈りをささげた。歩き始めること2時間半、上の写真の右側稜線、7合目に出たところから爆風。上から戻ってきた先行者からは「這って進もうとしましたが、それでも無理でした」と。ここで断念、無念。

大山を下りて、またまた芸術。安来市にある有名な足立美術館を訪れた。噂にたがわぬ見事な日本庭園と横山大観の蒐集でした。

足立美術館の近くには牡丹で有名な「由志園」がある。牡丹は今が見頃ではないか。

小雨の中、訪れるとまさに満開の時、庭園中央の大きな池は、切り落とした牡丹の花房ですべて覆われていました。なんとも、なんとも、豪華というか ...............

旅は、松江に寄って、そして出雲大社へ。

まずは国宝松江城。数少ない現存天守閣のお城。風格、趣がある。城内のレストハウスでは「出雲そば」と「ぜんざい」をいただいた。「ぜんざい」はここ出雲が発祥の地。しかし「北海道産小豆使用」と書かれていたのに違和感を感じる。

出雲大社。言わずと知れた大国主命が祀られる大神社。大国主命は愛深く多くの愛人を持っていたとの謂れがあり、それゆえに「縁結び」の神様とされるのだとか。現代であれば後ろ指をさされそうだけれど。私たちに今更「縁結び」は必要ないが、大国主命はよろずの願いもかなえてくれるとのことで、「コロナからの救国」を祈った。
日本古来の神は自然の中に宿る。山や、岩や、川や滝などに畏怖を、神を感じるのだ。古代は自然そのままを社としたが、時代と共に豪族による集権化が進むと、権威の象徴して社には立派な建物が建てられるようになった。仏教が伝来してからは、寺院に対抗するかたちで、より一層荘厳な神社が建立されるようになった、と何かで読んだ気がする。

私は神社・仏閣・教会を訪れるのが嫌いではない。一宗教を信じてはいないが、心の中には、生きることへの願い、自然の恵みへの感謝の気持ちがあり、毎日の生活が巡礼のようであり、ときにその気持ちを旅で訪れる神社・仏閣・教会で確かめる。しかし、もちろん、自然の中で、その気持ちを大いに膨らませることのほうがずっと好きだ。だから旅が好きだ。

もう少し、旅を続けよう。