少し欲張りな小旅行、札幌から車にテント積んで、阿寒摩周国立公園にあるオンネトーへ。
雌阿寒岳の大噴火で堰き止められてできた湖。オンネトーはアイヌの言葉でその意は「年老いた沼」。
天気が素晴らしく、青空と山と紅葉が湖面に映えていた。色とりどりの紅葉が見事だった。ただただ見惚れる。
紅葉の中で野営しながら、かつて1981年、アメリカ留学時代に観た映画「Golden Pond(和名:黄昏)」を思い出していた。主演がヘンリー・フォンダとキャサリン・ヘプバーン、二人の娘にジェーン・フォンダが扮した。老夫婦が住む湖畔の別荘に娘と孫が訪ね、静かな時間を過ごす物語。父と娘の和解、祖父と孫との心の触れ合いが描かれていた。夕日を浴びて湖が黄金色に輝く情景を忘れない。Golden Pondに人生最後の輝きが載せられていた。ヘンリー・フォンダはいくつもの映画の主役を演じながらアカデミー賞に縁がなかったが、この映画で主演男優賞を獲った。そして受賞後まもなく他界した。いっそう人生最後の輝きが際立ったとも言える。
そんな感傷を抱きながら、夕日に輝くオンネトーの湖畔にテントを張り、日暮れてからは焚火を見つめて秋の夜長を二人で過ごした。
翌日も快晴の朝を迎えた。放射冷却のためか霜が降りるほどに寒かったが、湖畔で夜が明けるのを待った。朝日が差し込むころ、ふたたび湖面が鏡となり、青空と山と紅葉を映し出した。「今まで生きてきたのは、この瞬間のためにあったのか」と、思わず人生とあなたに感謝する。
私の最後の輝きはいつあるのだろうか。その輝きに誰も気づかなかったら、少し寂しいだろうな。