2023年8月 『ヨーロッパ卒業旅行パート4：ツールドモンブラン』 August 2023 "Retirement Vacation ④Tour du Mont Blanc"

７月～８月の40日間、ずっと思い描いていた夢の旅を実現させました。3月に引退し、四国遍路に続く私たちの卒業旅行です。旅は5つのパートに分かれ、

パート1：イタリア・ヴェローナ音楽祭（アレーナのオペラ）

パート2：イタリア・ドロミテのトレッキング

パート3：オーストリア・ザルツブルク音楽祭

パート4：イタリア・スイス・フランスにまたがるツールドモンブランのトレッキング

パート5：スイス・ルツェルン音楽祭

3ヶ所の音楽祭が2ヶ所のトレッキングを挟むように旅を計画しました。

ブログでは5回に分けて連載いたします。写真の枚数も多く、長文となってしまいましたがお付き合いのほど宜しくお願い申し上げます。

今回は、「パート4：イタリア・スイス・フランスにまたがるツールドモンブランのトレッキング」です。

過去2015年、2016年の2回、私たちはモンブラン山頂に立ちました。

1回目の登頂は、フランス人ガイドのクリストフに助けられながら、大変苦しい登山でした。2回目は日本人国際山岳ガイド宮下さんの支えがあり、かなり余裕をもっての登頂でしたが、この時はあくまでマッターホルンの前哨戦。マッターホルン登頂には失敗し、意気消沈。再び挑むにもあの頃の無謀さ、元気さはありません。

登頂できなくなったら「ツールドモンブラン Tour du Mont Blanc (TMB)」と決めていました。モンブラン山塊を一周するTMB（170km）! 夢に描いていました。天候は出たとこ勝負。とにかく楽しむことを第一に、無理をせず、疲れたら乗物も利用するぐらいの気持ちで計画を立てました。苦労したのは山小屋の予約。コロナ禍が明け、いっせいに皆が動き始めたのでしょう。ネットで予約は可能なのですが、なかなか目的の山小屋が押さえられません。押さえることができた山小屋と山小屋の距離がずいぶん離れているところもできてしまいました。これも出たとこ勝負、と腹をくくって出発です。

TMBはどこを出発点にしても良いのですが、多くの人はフランス・シャモニーを選びます。私たちはイタリア・クールマイユールを選びました。ヴェローナからバスで移動できたこと、それとお気に入りのホテルとレストランがあったからです。

モンブラン山塊、そして氷河がクールマイユールの町に迫っています。美しい町です。

そして、ここがお気に入りのレストラン。モンブランを見上げながらの食事。料理は絶品！
上から、ビーフタルタル（生肉）、ヤギのチーズと夏野菜サラダ、ポルチーニのタリオリーニ、ズッキーニとチーズのリゾット、特大のストゥリューデル(アップルパイ)とその向こうにグラッパ

ずっとここに居たいけれど、山が呼んでいる！
衣子が見上げる先、巨大なブレンバ氷河の上にモンテビアンコ（イタリア語のモンブラン）山頂。
フェレの谷の上にはグランジョラスとダンデジュアンの鋭峰このフェレの谷を辿りながらTMBに出発です。

1日目はボナッティ小屋へ。グランジョラスを間近に見上げる小屋の後ろには大きなカール地形。お花畑でのんびりとしました。

2日目はフェレの谷のさらに奥、山を越え谷を渡り、エレーナ小屋へ。風が強く気温が下がってきました。

翌日3日目、朝は晴れていましたが、イタリア・スイス国境のフェレ大峠にかかるころ、強風に霰、雪が混じってきました。スイス側のフェレの村に下りると晴れ間。ここからはシャンペ湖までバスを利用しました。シャンペ湖で一休みのためカフェに入ったところ、にぎやかな笑い声。ボナッティ小屋で一緒だったアメリカ三人娘でした。シャンペ湖をバックに記念撮影。この夜はGite Bon Abriに宿泊。スイスらしく夕食はフォンデュ。楽しく美味しい食事、デザートには「ジェネピー」。甘ーい山のリキュールです。

4日目はフォルクラ峠を越える長丁場。スイスアルプスを遠くに望む雄大な行程でした。途中、スイス・フランス国境を越えてアルジェンティエールの山小屋Gite Le Moulinへ。

5日目、フランス側からのモンブラン山塊に再会です。モンブラン山頂だけが、白い雲のベールに覆われていました。

いきなりはしご場。長いはしごがいくつか続きました。Aiguilles Rouges（赤い針峰群）を望むここまでは晴れていたのですが、Lac Blancでは雲が広がり、湖に映るモンブランを見ることは出来ませんでした。アルプスの女王は、恥ずかしがり屋なのですね。Lac BlancからFlegereに下り、山のハムで昼食。FlegereからPrazの村にはゴンドラで。そしてシャモニーの町までバスで移動し、ホテルにチェックイン。シャモニーではホテルに二泊し休養です。
Prazの村の教会とドリュー針峰

夕方、シャモニーのホテルに着くころ、なんとモンブランの山頂が姿を現し始めました。先ほどまでは白い雲のベールで包まれていた女王様も、少し頬を赤く染めながらの登場です。
シャモニー針峰群も赤く染まりました。

６日目、シャモニーでの休息日はCafe Floriaまでゆっくりお散歩。Cafe Floriaはその展望と、そしてブルーベリータルトが絶品！白い生クリームが乗っかったタルトは「モンブラン」と呼ばれています。

この日の夕焼け（アーベントロート、Abendrot）も最高でした。言葉を失います。日がゆっくりと傾き始め、やがて沈みマジックアワーを迎えるまでのスペクタクルショーをご覧ください。

７日目、朝、目を覚ますと、朝日を浴びたモンブランが「おはよう」と。シャモニーから、レズーシュへはバス、さらにゴンドラに乗ってBellevueへ。西側からのモンブランを眺めました。下の写真左の黒い岩壁がAiguille du Gouter、グーテ小屋も見えます。モンブラン山頂には雪煙が上がっています。あの稜線をたどって登頂したのです。右の鋭い山頂はAiguille du Bionnassay。そしてコンタミヌへ。この日は暑かった！途中で食べたガレットとクレープが美味しかったです。今日の泊まりはテント場のコテージ。いい雰囲気でした。

８日目、この日が長丁場。コンタミヌ 1170m から二つの峠（Col du Bonhomme 2329m, Col du Croix du Bonhomme 2480m）を越え、シャピュー Chapieux 1550mまで下らなければなりません。

まだ暗いうちに出発、Notre Dame de la Gorge寺院に無事を祈りました。

この日も快晴で気温がぐんぐん上がり、衣子はズボンを脱ぎ捨てタイツ姿のニューファッションへと変身。Col du Croix du Bonhomme 2480mの峠を越えるころは、かなりの消耗。本当は、下に見えるボンノム小屋に泊まりたかった！
しかし、なんと14:30にはシャピューの山小屋に到着！ ビールのなんと美味しかったことか！！

９日目、この日も長丁場。フランス・イタリア国境のセーニュ峠 Col de la Seigne 2515m を越えてイタリアのエリザベッタ小屋まで。朝一番にシャピューの山小屋を出発したのですが、なんと私はまったく逆方向に歩き始めてしまいました。20分も歩いたころ、地元の人に教えられて山小屋まで戻るはめとなりました。面目ない。

気を取り戻して歩き始めると、今度は牛たちが道をふさいでいました。ますます衣子はご機嫌ななめ😢　さらに牛をよけているうちに、衣子は糞をぐしゃり😮　後談ですが、フランスの言い伝えでは、右足で踏むと凶兆、左足で踏むのは吉兆、なのだそうです。衣子が踏んだのは「左足」でした😍

こんな日もあるのか、お天気も少しご機嫌ななめ。絶景で知られるセーニュ峠ですが、山の眺望はありませんでした。何とかエリザベッタ小屋に到着し、遅いお昼を食べて元気回復、夕方には虹のプレゼント。いよいよTMBも残すところ明日一日となりました。

10日目、私たちのツールドモンブラン最終日、素敵な朝が私たちを迎えてくれました。

そしてまた、山の友たちとの別れの日でもありました。

素敵な人とたくさん出会いました。語りつくせぬドラマもまだまだありました。

感傷を少し胸に、この日はエリザベッタ小屋から快晴の空と、モンブランを望みながらクールマイユールへと下っていきました。

長年夢に描いていたツールドモンブラン、歩き終えることができて感謝の気持ちでただただいっぱいでした。山々に、山小屋に、友に、衣子に、神に！

長々とつづったツールドモンブラン、お付き合いいただきありがとうございました。

次回はいよいよ最終章：スイス・ルツェルン音楽祭です。