カテゴリ:「皮膚の健康教室」抄録( 63 )
2012年11月27日教室 『内臓と皮膚』
「内臓」を包むのが「皮膚」、「皮膚」に包まれているものが「内臓」。当然、そこには密接なかかわりがあります。肝臓が悪い時、腎臓が悪い時、糖尿病の時、皮膚には何らかの兆候が現れます。その「兆候」を「デルマドローム」と呼びます。「デルマドローム」を知っておくことは、内臓の病気のいち早い察知につながります。同時に、むやみな心配を不要とする安心感にもつながります。「皮膚は内臓の鏡」。知っておきましょう、その姿を。講師は、10月から赴任した新副院長、有田 賢医師が担当いたしました。

デルマドロームとは、

デルマ(皮膚)+シンドローム(一連の症状の集まり)
            
内臓の症状が皮膚の症状として出現してくること、つまり皮膚の症状から内臓疾患がわかる場合があります


たとえば、全身の皮膚がだんだんと黒ずんできて、そして口の中にも、くちびるにも黒ずみが出てきたら、

c0219616_13192149.jpgc0219616_13194631.jpg




















体がだるくありませんか、なんだかとっても疲れやすくなっていませんか、髪も抜けやすくありませんか?
アジソン病と言います。「副腎皮質ホルモン」といって生きていくうえで必須のホルモンが少なくなってしまう病気です。


たとえばc0219616_13212882.jpg











何だか急に体中に「いぼ」が増えてきたと感じたら、『要注意!』

「Leser-Trelat(レゼル-トレラ)徴候」と言われています。
・内臓悪性腫瘍に伴うデルマドローム
・中高年の脂漏性角化症が突然短期間(6ヶ月)で
 その数と大きさが増す
 数百から2000個
・胃癌>大腸癌>肺癌>乳癌>菌状息肉症(皮膚リンパ腫)
・腫瘍から産生される何らかの因子が皮膚の増殖を刺激する



c0219616_13225017.jpg皮膚は内臓の鏡である








どんな種類があるのでしょう、

1.内臓悪性腫瘍と皮膚
 ①腫瘍が皮膚に直接転移
     乳がんの皮膚転移 c0219616_13234440.jpg
     

     乳がんの皮膚転移は
     他のがんより比較的多い。








     Sister Mary Joseph結節c0219616_13311677.jpg


     胃、膵、大腸、卵巣など
     腹腔内悪性腫瘍の
     臍部(へそ)への転移











 ②腫瘍が分泌する物質に対する反応

     悪性型黒色表皮腫c0219616_1338478.jpg


     わきの下など襞になる部分を中心に
     皮膚が黒ずんでごわごわしてくる。
     がんが分泌する増殖因子が関与





 ③腫瘍による免疫応答の変化

     腫瘍随伴天疱瘡c0219616_13442416.jpgc0219616_13444312.jpg








     皮膚の細胞をつないでいる接着板が
     異常免疫で破壊される。
     全身の皮膚がむけてくるが、
     とくに粘膜の症状が強い


     皮膚筋炎c0219616_141625.jpgc0219616_1412367.jpg










     関節の伸側が角化、背中などに痒みの強い紅斑。
     上まぶたが赤紫に腫れる。筋力低下を伴う。
     膠原病の一種だが、高率に悪性腫瘍を伴う。


2.糖尿病と皮膚
 ①循環障害c0219616_1473058.jpg

         糖尿病性壊疽





 ②細胞障害 好中球の機能障害(遊走力、貪食能、殺菌作用の低下)
                 →免疫力低下 
                 →易感染性 口腔内カンジダ症c0219616_14172162.jpg






         線維芽細胞、組織球の機能障害
                 →浮腫性硬化症
                 →リポイド類壊死症c0219616_14195821.jpg











3.肝臓と皮膚
 ①胆汁分泌の閉塞   ・黄疸  ・皮膚掻痒症
 ②肝炎ウイルスに対する免疫反応  ・蕁麻疹の特殊なタイプ
 ③代謝反応の低下(肝硬変)
    女性ホルモン(エストロゲン)の蓄積による変化
    ・手掌紅斑 ・くも(蜘蛛)状血管腫 ・女性化乳房
c0219616_1423596.jpg







4.腎臓と皮膚
   腎では代謝産物を排泄する機能があり、それが障害されると
   血中に貯留する
 ①血中カルシウム、マグネシウムの上昇→皮膚瘙痒症 
 ②代謝産物が皮膚に蓄積し、汗腺、脂腺の機能異常、発汗減少           
                 →皮膚乾燥
 ③カロチン、ウロクローム、ヘモジデリンなどの沈着が関与
                  →色素沈着 
 ④変性した膠原線維を排出 →反応性穿孔性膠原線維症


5.内分泌と皮膚 ホルモンの異常分泌から来る皮膚の異常
 ①Addison病:副腎皮質ホルモンの分泌低下
                →皮膚や粘膜の色素沈着
 ②Cushing病:副腎皮質ホルモンの分泌亢進
            →多毛、皮膚線条、ニキビなど
 ③Basedow氏病:甲状腺ホルモンの分泌亢進
           →脛骨前粘液水腫、脱毛症c0219616_14353134.jpg










6.妊娠に伴う皮膚変化
  ・色素沈着   ・妊娠性肝斑  ・多毛
  ・妊娠線状萎縮 ・クモ状血管腫 ・手掌紅斑
  ・妊娠腫瘍   ・下腿の浮腫、静脈瘤



まとめ

・皮膚疾患はその多くが皮膚自体の異常によるもので、
 すべての症状を内臓疾患と関連付ける必要はありません。

・しかし皮膚疾患の中には、その特徴的な症状で
 内臓疾患を示唆するものもあります。

・皮膚は単なる衣ではなく、重要な役割をもつ一つの臓器です。

・皮膚は体の内面の変化を反映するとともに、皮膚の変化
 そのものも体の内面に影響をおよぼしえます。

皮膚の変化から全身状態の変化を察知するのも、皮膚科医の
重要な責務です。皮膚の表面に「おやっ」と感じたら、早めに、
ご相談ください。私たち皮膚科医は、皮膚の奥にひそんでいる
かもしれない変化を見逃しません。

[PR]
by kobayashi-skin-c | 2012-11-28 13:03 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2012年10月23日教室 『永遠の若さと美しさ:シミ、しわの治療』
人類永遠の課題とは?「不老不死」、「永遠の若さ・美しさ」。
神代の昔から現代にいたるまで、「永遠の若さと美しさ」を得るために私たち人類は、幾多の労苦も、幾多の犠牲も顧みずいかなる努力も惜しまなかった。あらゆる食物から、薬草から、はては動物の糞にいたるまで、口に入れ、肌に塗り、若く美しくあり続けることを願望してきた。
 現代医学・科学の発展は、その願望・欲望をかなりのところまで満たすにいたっている。シミに対しては各種レーザーの発達が、しわに対してはボツリヌス菌毒素、レチノイン酸がたいへん有効である。
 どのような方法が現在可能であるのか、そしてどんな注意が必要なのか、はたまた「永遠の若さ・美しさ」を問う人生観について、一緒に語りましょう。

c0219616_16472761.jpg

さて、私の結論は?
上の写真を見てなんだか変だと思いませんか。この美女の顔は、じつは人工皮膚。現代科学・技術はまさに永遠の若さと美しさを可能にしています。けれども、一生仮面をかぶった人生って、いったいなんでしょう。
 美しさに絶対的な永遠はありません。美しさは私たちの心の中に、そして、愛する人の瞳の中に存在します。つまり、美しい心と、愛しい人を持ち得ることが、人生における永遠の美しさではないでしょうか。
 そして、往きとし死せる生きものにとって、永遠の若さはありません。顔に刻まれるしわの一つ一つは、私たちの人生の歩みであり、私たちそのものではないでしょうか。
[PR]
by kobayashi-skin-c | 2012-11-14 17:02 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2012年9月25日教室 『psorias is more than skin deep,・・・・・』
かつて、米国の乾癬患者組織 National Psoriasis Foundation (NPF) の冊子に “Psoriasis is more than skin deep, (乾癬は皮膚の深さにとどまらない、)”と始まる言葉がかかげられており、その後ろには “leaves emotional scar. (心の傷を残す)” と書かれてありました。皮膚の外面だけではない、乾癬のつらさが適確に言い表された言葉です。
 いまふたたび“Psoriasis is more than skin deep, (乾癬は皮膚の深さにとどまらない、)”が強調されています。それは、乾癬の3割の方には関節炎の症状があり、乾癬患者さんの生涯で一度でも関節炎の症状が現れる率は7割に達すると見積もられています。さらに、乾癬とメタボリック症候群(メタボ)、さらには糖尿病、高脂血症、心血管系障害、またクローン病などの内臓疾患の合併率が高く、寿命にも影響を及ぼしていることが疫学調査から明らかにされてきたからです。
 7月に開かれた世界乾癬・関節炎会議の話題から、そして9月7,8日に開催される日本乾癬学会の話題から、“Psoriasis is more than skin deep, (乾癬は皮膚の深さにとどまらない、)” について皆さんと一緒に考えたいと思います。

c0219616_14395380.jpg 
















乾癬は皮膚だけにとどまらない。「乾癬」を中心として、上から時計まわりに「関節炎」、「メタボリック症候群」、「心臓・血管異常」、「糖尿病」、「うつ病」、「神経症」、「アルコール依存症」、「肥満」が関係することが図に示されている。世界会議の講演、発表の中でこれらのひとつひとつの危険性、注意点が報告された。印象的であった発表をいくつか紹介します。

c0219616_144758.jpg左:乾癬患者、右:正常人のPETスキャン画像。乾癬患者では脚の血管などが濃く染まっており、血管に炎症を生じていることを示す。動脈硬化、炎症を起こしやすく、心筋梗塞など重大な心臓・血管障害の元となる。






c0219616_14503499.jpg棒グラフの緑が正常人、オレンジが乾癬患者。すでに30代のころから「心臓・血管異常」が起きやすく、40代、50代では約2倍の頻度であることが示されている。








c0219616_1453129.jpg日本人ではあり得ないほどの肥満。スペイン・バルセロナの肥満治療病院の前のビーチで。








c0219616_14591682.jpgスペインの乾癬患者(左の円グラフ)と一般国民(右)の肥満度。青が正常(BMIが25未満)、赤が肥満傾向(BMIが25~30)、緑が肥満(BMIが30以上)。
BMIは、"body mass index"。国際的な肥満基準として用いられている。計算方法は、BMI=体重㌕÷身長㍍÷身長㍍。乾癬患者では正常体重が明らかに少なく、肥満者が多い。



c0219616_158149.jpgまた体重が重いほど、治療効果が減弱することも報告された。生物学的製剤治療の効果が不十分あるいは減弱する率は、肥満傾向のもので14%増、さらに肥満患者ではさらに14%も高まることが示された。



c0219616_15145931.jpg関節炎の頻度は高い。その症状には様々なものがあるが、手・足の指の関節に起こりやすく、そのほかに背骨、腰骨におこるタイプ、腱の付着部炎、指全体が腫れる指炎タイプがある。



c0219616_15183551.jpg乾癬患者の2-3割に関節炎が合併しているが、患者生涯期間中の関節炎発症率は7割に達すると推測されている。その中でわが国(Japan)の発症率が1%と際立って低いことが紹介された。小生はその理由について質問を受けたが、日本乾癬学会で行っている乾癬患者登録方法の不備による数字であり、実際はわが国でも関節炎の頻度は高いことを説明した。

c0219616_15235397.jpg新しい関節炎の分類に基づき、治療指針が示された。すべてのタイプに有効なのは、生物学的製剤の中の抗TNFα製剤である。






c0219616_1525543.jpg"Let's talk psoriasis"という企画があり、英国人の医療ジャーナリストが司会し、スウェーデンの患者と米国の皮膚科医(アラン・メンター博士)が受け答えするという、国際色豊かでユニークな試みがありました。鋭い質問に答えるメンター先生の適確かつ優しい態度が印象的でした。日本の学会でも試みたい企画である。



c0219616_15312844.jpg乾癬患者QOLの調査で、
約1割の患者は年間に約16日、仕事や学校を休まざるを得なかった。とくにかゆみが強い患者でその傾向がみられた。わが国の調査でも、かゆみの頻度が以前よりも増していると報告されているが、今回の報告では乾癬患者の85%にかゆみが症状があると指摘された。



c0219616_1537287.jpg乾癬患者QOL調査から、患者の1/3は「医師との関係」について、ネガティブな見方をしていることが分かった。期待どおりの治療の説明がない(36%)、だれも自分の乾癬の助けになりそうもない(35%)、医師はどの治療が効き、どれが効かないか知らないようだ(33%)、医師は乾癬の話題を避けたがる(32%)、医師は私の乾癬について真剣ではないようだ(30%)、医師はほんとうに私の乾癬を治す気があるのだろうか(28%)、医師に乾癬について相談することをためらってしまう(21%)。



c0219616_1545119.jpg抗IL-17療法については、前回の7月の教室で話したとおり、現在の生物学的製剤以上の効果が得られている。
c0219616_15471260.jpg
















c0219616_15474766.jpgさらに新しい治療法として、細胞の中で情報伝達(シグナリング)に大切な物質であるJAK、PDE4を抑える治療薬(内服)が開発中であり、良い結果が得られていることが報告され、大きな期待が寄せられる。
c0219616_155184.jpg















c0219616_1622580.jpg五日間の会議の間、ストックホルム市庁舎を使ってレセプションが開かれました。会長のエタップ氏による開会挨拶の場面です。この会場ではノーベル賞受賞者の公式記念晩餐会が開かれます。




c0219616_16264478.jpg
c0219616_16234737.jpg世界会議が終了して、IFPAメンバーによる「世界乾癬デー」の取組み会議、そしてWHO(世界保健機構)へのアピール活動協議が行われました。この中で、IFPAが推進する"Under the Spotlight"プロジェクトに、日本がぜひとも協力してほしいとの要請がありました。またWHOへのアピール活動においても、日本国外務省、厚生労働省の協力が不可欠であるとの要請があり、IFPAという国際協調の中で、日本の乾癬患者会も大きな役割を期待されていることを感じました。世界のみんなと手を携え、乾癬への克服に向かって、日本でも是が非にも頑張っていきたいと決意を新たにさせられました。この素晴らしい世界会議を企画・運営したIFPAの役員の皆さま、そして協力を惜しまなかったアラン・メンター先生をはじめとする医師・研究者の仲間たちに、心から感謝したいと思います。また世界的製薬企業の絶大なる支援にも感謝いたします。
下の写真は、PsorAsia(アジア連合)の面々(左から、マレーシア、フィリピン、ニュージーランド、インド、オーストラリア、米国、インドネシア、フィリピン、そして日本)


帰国後、"Under the Spotlight"への参加をお願いしたところ、東京地区乾癬患者友の会(P-PAT)の方が勇気を持って名乗りを上げてくださいました。日本乾癬患者連合会、P-PAT、そして日本アボット社の絶大な協力を得て、ビデオ映像が完成しました。世界乾癬デーの10月29日から、この映像は全世界で観ることができるようになっています。
http://www.underthespotlight.com をご覧になって下さい。
"Japan Masayuki"です。日本乾癬患者連合会HPからも簡単に観られるようになっています。
[PR]
by kobayashi-skin-c | 2012-11-14 14:56 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2012年8月28日教室 『水虫、とびひの注意』、『夏山の涼』
夏に多い皮膚の感染症。その代表的なものが『水虫』、『とびひ』ですが、じつは夏の真っ盛りよりも、夏の終わりから秋にかけて流行・悪化します。その症状とはどんなものか、治療はどうするか、日常生活の中でどんな注意が必要か、健康教室では皆さまと一緒に勉強しました。異例の厚さが続く札幌ですが、この夏に訪れた山々の写真、思い出がphoto & essayに綴られています。『夏山の涼』はそちらでお楽しみください。

皮膚の感染症には、

•ウイルス感染症
イボ、ミズイボ、ヘルペス、みずぼうそう
はしか、風疹、リンゴ病、………
•細菌感染症
とびひ、吹き出物、毛包炎、蜂窩織炎、梅毒、結核、・・・・
•真菌感染症
水虫、たむし、インキン、カンジダ、………
•動物・寄生虫感染症
頭虱、毛虱、ノミ、疥癬、………
など様々なものが含まれます。症状もいろいろです。

私達の体はつねに、これらの感染症から守られるよう、免疫力を発揮しています。皮膚では、「皮膚そのものが免疫組織」と言って過言ではなく、皮膚(表皮)細胞自身が、抗生物質様の物質を作って皮膚を守っています(自然免疫作用、β-デフェンシンなど)。そして皮膚には抗原提示細胞、リンパ球、組織球などの免疫特殊部隊が常駐し、がっちりと皮膚・体内を守っています。しかし、夏から秋にかけて、夏バテ気味の体では免疫力が低下して、感染症が起こりやすくなっているのです。

代表的で、注意が必要な皮膚の感染症を知っておいて下さい。

細菌感染症1.伝染性膿痂疹

 c0219616_12311315.jpg・「とびひ」と呼ばれています。
  「火」が飛ぶようにうつっていくからです。
 ・黄色ブドウ球菌感染症です。黄色ブドウ球菌は
  もともと皮膚の常在菌ですが、免疫力の低下と
  ともに、とくに皮膚の弱ったところ(湿疹、むしく
  われ。けがの場所など)で繁殖し病気をおこし
  ます。



c0219616_12334851.jpg ・治療は、抗生物質内服と保清(シャワーなどで良く洗う)。
 ・大人ではきわめてまれです。子供同士で移って
  しまうので、学校・幼稚園・保育園を休む必要は
  ありませんが、直接の接触、とくにプールは避け
  るべきです。
 ・黄色ブドウ球菌の10-20%に耐性菌が存在しま
  す(MRSA)。治りづらい時、再発しやすい時は、
  耐性菌の検査が必要です。
 ・黄色ブドウ球菌の毒素で重症化するとSSSSと
  呼ばれる、全身が真っ赤に痛くなり、発熱、倦怠感が生じる状態になります。

皮膚の細菌感染症2.毛包炎、癤(せつ)、癕(よう)
 c0219616_12413313.jpg・吹き出物、できものと呼ばれています。
 ・毛穴の黄色ブドウ球菌感染です。毛穴の浅いところでは「毛包炎」、深いところまで化膿すると「癤(せつ)、癕(よう)」を起こします。
 ・抗生物質内服が必須です。




皮膚の細菌感染症3. マラセチア毛包炎
c0219616_1246223.jpg ・「夏にきび」と呼ばれます。
 ・毛穴のマラセチア(真菌の一種)感染が
  原因です。
 ・汗かきの人、ステロイド外用を広範囲に
  している人(アトピー性皮膚炎患者さん
  など)で起こりやすく、ほぼ夏に限られます。

c0219616_12481172.jpg ・保清(シャワーで汗を流す)、抗真菌剤
  または抗菌剤外用。治りにくい場合は
  抗生物質(ミノマイシンなど)内服。





皮膚の細菌感染症4. 蜂窩織炎
c0219616_12585135.jpg ・蜂巣炎ともいいます。ほとんどは黄色ブドウ球菌が原因で、傷、湿疹、水虫の部から細菌が皮膚の深いところに侵入し、皮下脂肪組織、リンパ管を伝って広い範囲に拡大します。発赤と腫れが主な症状で、痛み・発熱・寒気を伴います。
溶血性連鎖球菌が原因となることもありますが、扁桃腺炎などのど風邪の菌が血液を伝わって、皮膚に蜂窩織炎(丹毒)を起こすこともあります。その他の細菌で感染することもあります。
 ・肥満者、糖尿病患者に多い。
 ・強力な抗生物質内服と安静が必要です。高熱など重症の場合、あるいは肥満・糖尿病を持つ人の場合は入院して抗生剤の点滴を行う必要があります。


皮膚の細菌感染症5. 壊死性筋膜炎
c0219616_1365388.jpg ・肥満者、糖尿病患者、免疫低下患者に生じる皮膚、皮下組織、筋肉の広範囲な壊死を起こす重篤な疾患です。致死率が高く、「人食いバクテリア」と一時話題になったことがあります。
 ・黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌・その他さまざまな細菌感染が原因となります。嫌気性菌が原因の場合「ガス壊疽」と呼ばれ、病変部をレントゲン撮影すると、特有の空気像がみられます。
 ・早期発見、入院治療が必須であり、壊死部分はを早期に切除する必要があります。



皮膚の真菌感染症1. 白癬菌(糸状菌)症
•頭部白癬(しらくも)
•体部白癬(たむし)
•股部白癬(インキン)
•足白癬(水虫)
•爪白癬
•深部白癬

足白癬(水虫)
・水虫には、趾間型、汗疱・小水疱型、角化型、爪白癬があります。
・角化型、爪白癬は白癬菌が移ってから長年を経て生じます。
・趾間型、汗疱・小水疱型はかゆみを伴いますが、
 角化型、爪白癬では通常かゆみはなく、放っておかれることが
 しばしばです。しかし、本人はなんでもなくても、家族や周りの
 人々に移してしまうので困りものです。
・日本人では、だいたい5人に一人が水虫を持っていると言われて
 います。お風呂上がりのバスマット、トイレなどの共用スリッパ
 おもに移ります。
・水虫の白癬菌が皮膚にくっついても24時間以内であれば、まだ
 感染は生じておらず、洗うことで白癬菌は消失します。温泉や
 プールに入った後は、家に帰ってからでも足を洗うと予防になるで
 しょう。
・治療は、抗真菌剤の外用です。完治します。爪白癬、頭白癬、
 また水虫でも角化型(かかと水虫9では、抗真菌剤の内服が必要
 です。

c0219616_13204972.jpgc0219616_13213162.jpg






趾間型白癬            汗疱・小水疱型白癬


c0219616_13244168.jpg c0219616_1325121.jpg







角化型白癬           爪白癬


皮膚の真菌感染症2. 皮膚(粘膜)カンジダ症
・カンジダ菌の感染症ですが、カンジダ菌は口の中、外陰部では常在菌の
 一つです。局所・全身の免疫力の低下とともに繁殖し、皮膚、粘膜に
 病変を生じます。逆に皮膚カンジダ症を見つけたときには、糖尿病など
 の免疫力の低下がないか検査を行います。
・治療は、抗真菌剤の外用、うがい、内服が原則です。

c0219616_1343435.jpg c0219616_13441129.jpg







乳児寄生菌性紅斑     カンジダ性指間びらん症

c0219616_13465272.jpg 

口腔内カンジダ症(鵞口瘡)








皮膚の真菌感染症3. 癜 風
c0219616_13552065.jpg・「黒なまず」とも呼ばれます。
・皮膚の常在菌の一つ、「マラセチア」が増殖して病変を
 生じたものです。
・10~20歳代の若い世代、とくに汗をよくかく人に生じ
 ます。
・夏が過ぎると自然にも治りますが、翌年の夏にはまた
 再発します。
・保清と抗真菌剤の外用で治ります。


      この夏、頑張りすぎた人は要注意!

c0219616_1452689.jpg
 
c0219616_1454114.jpg
      北海道マラソン2012 優勝者 川内優輝選手(埼玉県庁)
[PR]
by kobayashi-skin-c | 2012-08-29 13:00 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2012年7月24日教室 『第3回世界乾癬・乾癬性関節炎会議に出席して』
6月27日-7月1日、スウェーデンのストックホルム市において、第3回世界乾癬・関節炎会議が開催されました。IFPA(世界乾癬患者会連盟)が主催するもので、患者さんが主体の患者さんの目線に沿った会議で、最新の乾癬の研究、治療について世界の第一線の研究者から報告・討議がなされました。また乾癬の理解を深めるための世界的活動の方針についても代表者で話し合われました。日本の代表者として参加させていただきましたので、その模様を詳細に報告したいと思います。
北極圏にほど近いストックホルムの夏は、とてつもなく朝が早く、夜が遅い。街々は光に溢れ、水面はきらきらと輝いていた。ブログ「PHOTO & ESSAY」     http://ksclinic.exblog.jp/もお訪ねください。

3年に1回のこの会議は6年前の2006年、同じストックホルム市で第1回目が開催されました。日本はその前年にIFPA加盟を果たし、乾癬の会(北海道)から3名、山形乾癬の会から1名、大阪乾癬患者友の会から1名、そして私の総勢6名が参加しました。その時の会議参加者が600名、第2回目が800名、そして今回の会議にはじつに1,200名の参加者があり、内訳は各国患者会代表者、医師、研究者、製薬メーカー関係者、報道関係者と多岐にわたるものでした。日本からの参加者は私のほかに、東北大学の相場教授、製薬メーカーから5-6名でした。

今回の会議はまだできたばかりのストックホルム市ウォーターフロント会議場。目の前にストックホルム市庁舎、メーラレン湖を望む大変美しい会議場で、ここで5日間勉強し、討議し、交流を深める機会を得たことに、大変感激しました。

c0219616_950291.jpg開会の挨拶をするIFPA会長Lars Ettarp氏
c0219616_9511075.jpg







この会議の学術部門チーフ、米国テキサス大学皮膚科教授Alan Menter 氏
c0219616_9531164.jpg







ウォーターフロント会議場はガラス張りで、その向こうにノーベル賞授賞式後に開かれる晩餐会、舞踏会会場となる赤いレンガの市庁舎、メーラレン湖のパノラマが広がり、あたかも映画のスクリーンを見ているような錯覚におちいる。
c0219616_9541325.jpg



ストックホルムは「水の都」。氷河が刻んだ複雑な入り江、湖の辺に町が広がる。空が広く、青く、白い雲が美しい。








第3回世界乾癬・関節炎会議のテーマは、
“Psoriasis – a global health challenge”
(乾癬 ‐ 地球的規模の健康への挑戦)


global(地球的規模)とは、乾癬は
乾癬に苦しむ個人から、家族・友人、そして皆を包む社会、地域、
国、そして全世界に広がるということ

health(健康)とは、乾癬は
皮膚の深さだけにとどまらず、関節炎を伴いやすく、精神・心理的な
負担、さらに心臓血管障害、糖尿病、クローン病など全身の健康に
関わるということ

challenge(挑戦)とは、乾癬は
医学的・科学的に解明を目指して、社会的・世界的な取組み、
もちろん患者個人としてのチャレンジが試される病気であること

会議の冒頭に、IFPA会長のEttarp氏から "a global health challenge" への意気込みが高らかに宣言されました。


学術面で最初の講演は、米国のJames Krueger教授による「Th1細胞,Th17細胞,Th22細胞が複雑なサイトカインネットワークによって、細胞レベル、分子レベルで乾癬を引き起こす」でした。その要約を示すスライドを幾枚か失敬します(Krueger先生、ごめんなさい)。

c0219616_1193592.jpg乾癬の原因究明、病態(病気の起こり方)解明の主役となった免疫学的研究の最先端を行くKrueger先生の、最新情報がコンパクトにまとまった素晴らしい講演でした。生物学的製剤の治療根拠となるサイトカインネットワークは、現在TipDC - Th17経路によって、きわめて明快に説明されるようになり、Th17細胞が放出するIL17が表皮細胞(ケラチノサイト)の乾癬化を起こします。現在使用されている抗TNFα製剤、抗IL12/23製剤が、より上流(免疫反応の根っこ)で免疫反応を抑制するのに比べ、IL17はより末梢における乾癬の原因サイトカインであることから、IL17の抑制は、より乾癬をピンポイントで、そして副作用もミニマムにすることが期待される。


c0219616_1110375.jpg現在、3種類のIL17抑制薬剤が開発され、治療研究が進められている。
①IL17A抗体(Secukinumab Novartis社)
②IL17A抗体(Ixekizumab Lilly社)
③IL17A受容体抗体(Brodalumab Amgen社)

c0219616_11112031.jpg
c0219616_11134744.jpg













その一つ、Secukinumabの効果(PASI75)=すごく乾癬がよくなる)では、たった3回の注射で90%以上の患者がPASI75を達成する。

c0219616_11142741.jpg
c0219616_11145538.jpg















PASI90(=乾癬がほとんどなくなる)でみても、60%の患者で達成されている。
c0219616_11154073.jpg








Secukinumabの臨床効果。上の段は「プラセボ(偽薬)」、下の段がSecukinumab。
c0219616_1118643.jpg








Ixekizumabの効果(PASI90)。約80%の患者で達成されている。驚異的である。
c0219616_11181332.jpg






Brodalumabの臨床効果
















印象深かった講演をもう一つ、詳細に紹介いたします。
米国のAnne Bowcock教授の"The genetics of psoriasis: Old risks, novel loci (乾癬の遺伝子研究:昔から言われていた異常、新しく見つかった場所)です。Bowcock教授は、乾癬の原因遺伝子について世界で最初に報告した研究者です。ここでも少し講演スライドを拝借(Bowcock先生、ごめんなさい)。

c0219616_1215920.jpgBowcock教授は1999年、乾癬家系の詳細な遺伝子調査から第17染色体に乾癬と関わり深い遺伝子異常があることをみつけ、科学雑誌Scienceに報告した。21世紀を迎える直前のことであり、遠からず乾癬の原因遺伝子が確定し、完治治療を開発することも夢ではないと、当時期待したものでした。
ところが、次々と関連遺伝子はみつけられるものの(現在は30種類以上)、肝心の原因遺伝子、特定のタンパク、メカニズムは不明のままでした。

c0219616_1224152.jpgBowcock教授の息の長い研究は、第17染色体上にあるCARD14と呼ばれるタンパクの、その異常が直接乾癬を起こすことを説き明かしました。CARD14は細胞膜上にあるタンパクで、細胞外で起こる炎症から生じる様々な刺激物質を、細胞の膜から細胞の中へ伝える役割を果たしています。その伝達経路はNFκBを介しています(乾癬ではこの経路が活発に動いていることが、高知大学の佐野教授により解明されました)。
c0219616_1225067.jpg
遺伝性膿疱性乾癬患者では、このCARD14遺伝子に点突然変異が起こっていることを発見しました。この点突然変異だけで、特殊タイプではありますが、乾癬の原因が特定されたのです。
c0219616_1234652.jpg




点突然変異だけではなく、CARD14遺伝子に起こりやすい変異も、ほかの遺伝子異常(PSORS1、MHC遺伝子)、あるいは環境変化が加わると乾癬を引き起こすことも証明しました。






大変感銘深い講演でした。
会議の模様、IFPA代表者会議の報告は、また後日掲載いたします(『2012年9月教室抄録』をご覧ください)。
ブログ「PHOTO & ESSAY」もご覧ください。
[PR]
by kobayashi-skin-c | 2012-07-26 09:55 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2012年6月教室 『白斑、あざ、シミのカバー:資生堂パーフェクトカバーファンデーション』
顔に現れた白斑、あざ、シミ。たいへん気になります。でもなかなか治療では改善されません。そんな時、さっとお化粧でカバーできたなら、人目を気にせず仕事に、学校に出かけられます。「スキンカムフラージュ」について以前ご紹介しておりましたが、資生堂からもパーフェクトカバーファンデーションが発売され、実用的になっています。資生堂学術指導員の村井様にお越しいただき、実技を踏まえながら、その製品・テクニックについてご説明いただきました。

たくさんの参加者があり、お化粧の説明ならではの華やいだ雰囲気のもとで健康教室は開かれました。

この資生堂パーフェクトカバーファンデーションは北海道内でも販売されています。詳細はクリニックにお問い合わせください。
[PR]
by kobayashi-skin-c | 2012-07-11 17:19 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2012年3月教室 『20周年目を迎えた乾癬の会』
全国に先駆けて始まった患者会「乾癬の会」が設立されて、今年で満20周年を迎えました。20年前のことを振り返りながら、いまや全国的なうねりとなった乾癬患者会のこれからの役割について、皆さんと一緒に語り合いました。医療はみんなの力で大切に、着実に育てるもの。これからの医療の方向に患者会はなくてはならない存在です。

参加していただいた方から、

「乾癬のつらさは、他人にはなかなか分かってもらえません。いちばん身近な家族でさえも、本当のつらさを分かってくれてはいないと思います。でも、乾癬患者同士はピタッと分かるのです。お互いが分かりあえるのです。その仲間の大切さを何よりも大事にしたいです。」

「自分は、通っていた病院のポスターでたまたま乾癬の会の学習懇談会の開催を知り、初めて参加しました。その時に、自分が求めていたものはこれだ、と確信し、以後すっかりはまってしまいました。」

「私はアウトドアやスポーツをやったりしてけっこう趣味が広いのですが、乾癬の会でみんなが集まるあのひと時がなによりも楽しい。」

「乾癬の患者は全国にもたくさんいます。ことに今たいへんなのは『3.11』で傷ついた仲間達です。宮城に乾癬患者会ができていますが、その会員の方のなかに、今も連絡が取れない方がいます。家族を失くした方もいます。福島にも乾癬患者会がありますが、原発事故のため住むところを失ったり、治療する場所が無くなったりした方がいます。けっして『3.11』を風化させてはなりません。乾癬の仲間としても、いっそう絆・連帯を深めていきたいと思います。」

といったお話しがありました。

また乾癬の会草創期に事務局長をされた岡部さんが、思い出の写真とともに、会の発展の歴史についてお話しされました。そして最後には、これからの患者会が目指す方向について以下のようにまとめられました。

①原因解明と完治・現状よりの改善・心の癒し(QOL)
 ―患者の努力、医師・コメディカルの支援、行政による救済―
②患者・会員が主役の患者会活動 
     全国的、全世界的規模の患者会を展望
③現代医学、東洋医学を結集して、完治をめざす研究の発展 
  ・新しい治療法の探求=医師と患者の協力・協同 
  ・人間が持つ治癒力を引き出す=温泉療法、リハビリの経験から
④どんな社会が難治性疾患から患者を解放できるか

4月14日(土)午後3時から『乾癬の会20周年記念学習懇談会』が
かでる2・7 820会議室で開かれます。
講演『皮膚は地球を救う』(大阪大学大学院教授 玉井克人先生)
そして皆さまからの質疑応答があります。皆さま奮ってご参加ください。
くわしくは、「お知らせ」の記事を参考にしてください。


昨年12月10日に発行された乾癬の会会報『陽だまり』に、乾癬の会の思い出をつづった「乾癬の会歴史ヒストリア、私が乾癬にいちばん近づいた日」を寄稿いたしました。長文ですが、お読みください。

「乾癬の会歴史ヒストリア、私が乾癬にいちばん近づいた日」
            相談医 小林皮膚科クリニック院長 小林 仁

 日々診察室の中では、乾癬の具合を診るため、皆さまにぐっと近づいて仔細に皮膚を観察したり、あるいは指で触ったり、そっと手でなでたりさせていただいています。ですから、いつも乾癬の皮膚にはたいへん近づいているのではありますが、私が乾癬にいちばん近付いた日は、1993年9月、初めての豊富温泉湯治ツアーのときだったように思います。今でこそ湯治ツアーはもう今年で19回目を迎え、乾癬の会になくてはならない年中行事となっています。私自身も初回以来連続参加の常連となり、ふれあいセンターの湯船では経験豊かな主(ぬし)の風情でおりますが、今となっても第一回目の湯治ツアーのあの時の光景が鮮明に頭によみがえります。

 1992年1月、凍てつく寒さの中、北海道大学医学部の旧校舎講堂で乾癬の会が発足しました。北海道新聞紙面にこのことが伝えられると、一気に会員の数が増え、その会員の中に「豊富温泉に行くと乾癬が治るよ」と教えてくれる方がいました。そのことを乾癬の会の役員の方々に伝えると、さっそく二人の女性役員が現地にとび、体験湯治を行ない、皮膚症状の推移を写真に収めて皆に披露してくれました。それから役員の皆さまの努力と、豊富町役場のご理解に支えられ、第一回目の湯治ツアーの準備はとんとん拍子で進められました。そしてそのツアー初日、北海道大学病院の駐車場に豊富町役場のバスが横付けされ、約50名のツアー参加者を迎えてくれました。乾癬の会第二代会長の高鍬さんを団長に出発です。初めての豊富湯治ツアー、初めて見る顔、私をはじめ皆さん一様に緊張していました。バスは日本海側の国道を豊富に向かって一直線に北上。左手に日本海を間近に見ながら、途中オロロン鳥で有名な天売、焼尻の島々を眺めたり、自己紹介をしながらお互いにうちとけていきました。やがて利尻富士の頂きがぽっかりと見えはじめ、天塩川を渡るころ、秋の陽は水平線に沈んでいきました。夕陽に照らされる利尻富士、橙色に染まる空を背景に、牧場と牛の黒いシルエット。今までに見たこともない北海道の景色であり、これから辿り着く豊富も、今までに経験したことがない未知の世界であろうと、期待と不安が、どちらかと言うと不安のほうが、私の心を大きく占めていきました。

 天塩川を渡ったバスは、海岸沿いから離れて北緯45度の目印を過ぎていきます。あたりには何にもなくなりました。家も畑も牧場も見えません。一面牧草地なのか、笹原なのか、とにかくナーーンニモナイ平原、丘陵をバスは走ります。外の気温がかなり下がってきたのか窓ガラスが曇り始めてきました。やっとポツン、ポツンと家の灯りが見え始めたころ、バスの運転手さん、そうそうバスの運転手さんをしてくださっていたのは豊富町役場職員の円谷さんとおっしゃる若い男性でした、が「豊富温泉に着きましたよ」と案内してくれました。そこには、登別でも定山渓でもない、かといって山の中の秘湯でもない、なにかウラ寂れた、そう場末のキャバレーと言ったら分かりやすいかもしれない、そんな町並みの豊富温泉が佇んでいました。ますます不安になってきたものでした。けれども宿のニュー温泉閣ホテルに案内されて入ると、支配人、女将さんが暖かく出迎えてくださり、テキパキと部屋に案内してくださいました。そしておいしい夕食をいただくころ、すこし気持ちも和らいできました。さあ、そして入浴です。

 豊富町営の「ふれあいセンター」がいわゆる源泉。みんな揃ってふれあいセンターに行きました。当時のふれあいセンターは、今とは違って、もう少し手狭でした。入ってすぐのところは食堂ではなく、休憩室でした。地元の農家の方たち、漁師の方たちが家族連れでくつろいでいました。その休憩室の奥に男用と女用の浴室。現在の湯治用の浴室だけしか当時はありませんでした。ふれあいセンターに入った時から感じていましたが、工事現場にいるような石油、アスファルトの臭いが漂っています。さあ、いよいよ入浴です。

 浴室も更衣室も、地元の人たち、観光で訪れた人たちでかなり混み合っていたように記憶しています。乾癬の会のみんなはどんな気持ちで、どうやって服を脱ぐか、乾癬の肌をどのように隠さなくてはならないか心配です。周りの人たちの視線が気になります。私は乾癬を持ってはいないのだが、すごく気になります。みんなが服を脱ぎ始めるころ、思わずまわりの人たちの顔色をうかがってしまいました。そして注がれたその視線にたじろぎました。びっくりしたような顔つき、すぐに眼をそらす人、そっと覗き込むようなまなざし、なにかしら不愉快そうなしぐさ?。そのように感じるのです。その全部がちくちくと私の心を痛めました。でも、口に出す人はいません。あらわな態度をとる人もいません。ホッと一安心。でもこそっ、こそっと、ちらっ、ちらっとみんなの肌を周りの人は気にしています。ちくちくと私の心は痛みます。だってみんなは私の仲間なんだから、私は乾癬の会の一員なんだから。私が乾癬に一番近づいた日、それがこの時でした。「みなさんと乾癬を共有した」、そんな第一回目の湯治ツアーだったと今でも懐かしく思い出します。

 ところで、あの時のみなさんの心持ちはどんなだったのでしょうか。最近の豊富温泉では、私もみなさんも、ぱっぱ、ぱっぱと服もパンツも脱ぎ捨てて真っ裸。あたりまえのようにフリチン(生まれたままの姿)になって、湯治用浴室に入っていきます。石油くささも心地良く感じます。周りの人の目なんか全然気になりません。だって浴室での会話は、「あんた大したことないね、十両なみだ。俺の桜吹雪、どうだい」、「生物製剤で乾癬は少なくなったけど、ここに来るためにこの乾癬は残しておきます」、「先生、乾癬がないね・・・・・・、アトピーかい?」。今のふれあいセンターの湯治用浴室では、乾癬がないことのほうが、みんなの仲間はずれみたいで「つらい」のです。素晴らしいですね。豊富温泉の効用は、もちろん乾癬が和らいでくれることにありますが、きっとそれと同じくらいに、浴室で、休憩室で、ホテル・旅館で一緒に語り合う仲間の存在にあると思っています。

 18年前のあの日、あの時。それがなければ、今の私の医師人生ももっと変わっていたようにも思います。私が乾癬に一番近づいた日、いや、近づき始めることができた時、と言ったほうがよいでしょう。それまでは病院の診察室でしか知らなかった乾癬のことを、この時から、皆さんの乾癬に近付き、皆さんの気持ちと触れ合い、皆さんと悩みを共有し、皮膚の深さだけにとどまらない乾癬の理解が始まったのだと確信しています。これからも、私も元気に豊富に行きたいと思っています。よろしくお願いいたします。皆さまも、どうか元気に豊富にいらしてください。

 余談ですが、まだ一度も湯治ツアーに参加されていない方、それは損ですぞ。ベテラン乾癬の仲間が、暖かい豊富のお湯が、優しい豊富の人たちが、おいしい海の幸が、雄大なサロベツの原野が、星降る空が待っています。医師と看護師も同行いたします。次回第20回目の豊富湯治ツアーは、平成24年10月6~8日の予定です。奮ってご参加ください。
(注、豊富温泉は弱アルカリ食塩泉に分類されます。たいへん濃い塩化ナトリウム=食塩分を含んでいます。しかしながら豊富温泉の最大の特徴はその原油成分。お湯の表面には油膜が張り、湯中には油泥が浮かんでいます。古典的皮膚科治療法であるタール治療に類似するものと考えられます。豊富温泉がすべての人の乾癬に効能を発揮するわけではありません。なかには塩分、油分が刺激となりかゆくなってしまう人もいます。乾癬が悪化する場合もまれにはあります。湯治ツアーは二泊三日で、この間で劇的な効果・効能はすぐには現れません。でも感触的に良かったとの印象を持たれる方が多いようです。豊富の原油を手に入れて、自宅で治療に使っておられる方もいます。しかしながら油成分によるニキビ・毛包炎、油やけも起こることから医師のチェックは必要です。湯治ツアーで現地の模様を知ることも大切です。)

第1回豊富温泉湯治ツアーの思い出の写真
c0219616_1417026.jpgc0219616_1417245.jpgc0219616_14174182.jpgc0219616_14175815.jpg
[PR]
by kobayashi-skin-c | 2012-03-28 14:19 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2012年2月教室
2月28日開催予定であった教室は院長の怪我のため中止いたしました。
その内容は、このブログの『PHOTO & ESSAY』に掲載しております。
『2011年の思い出、憧れのスイスアルプスを訪ねて』
『2012年1月 神々が生まれ、神々の棲むところ』
をご覧ください。
[PR]
by kobayashi-skin-c | 2012-03-28 13:37 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年12月20日教室 『お顔の赤いトラブル、「酒さ」って知っていますか?』
お顔の赤らみで困っている方、意外と多くありませんか?お酒を飲んでいるわけでもないのに、「あらどうしたの?昼っ間からお酒を飲んで!」と友達から言われた経験はありませんか。皮膚のトラブルに「酒さ」と呼ばれる皮膚の変化があります。ここでもお酒の文字が出てきます、そして俗には「酒やけ」とも呼ばれるものの、必ずしもお酒とは関係なく生じる皮膚の病気があるのです。これが意外と多い!顔の赤みで悩んでおられる方、それって「酒さ」かも。そしてそこには落とし穴もあります。皆で勉強してみましょう、顔の赤らみを。

「酒 さ」
c0219616_1803542.jpg1.「酒さ」は、30代から60代の人に多い、炎症性かつ進行性の顔の慢性疾患です。
2.「大人のニキビ」と誤って呼ばれることもありますが、「酒さ」はまったくニキビとは違う疾患で、赤み、小さな吹き出物、顔面の毛細血管の拡張などといった症状を引き起こします。
3.「酒さ」は「酒やけ」と訳されますが、お酒を飲まない人にも起こります。皮膚の加齢現象の一つであり、ストレス、日光、飲酒などが悪化させます。

「酒さ」は症状の程度により軽症(第一度)、中等症(第二度)、重症(第三度)に分けられます。
第一、二度の症状は外用薬(塗り薬)、内服薬(飲み薬)でコントロールが可能ですが、第三度では根治が難しく皮膚手術が必要となります。早いうちに気付き、適切なケア・治療を早く始めることが大切です。

軽症(第一度)
c0219616_18185350.jpg
顔が赤らみやすくなり、顔の中心部に、なかなか消えない赤みが出現します。この赤みは、皮膚の表面に近い血管が広がることによるものです。




中等症(第二度)
c0219616_18201363.jpg
この段階では、赤みに加え、赤い発疹=酒さ性ざそう(ニキビ)が鼻、頬、額、顎などに現れます。



重症(第三度)
c0219616_18214675.jpg
重症になると、鼻や、時に頬の脂腺が拡張し、皮膚の組織が密集して赤みを帯びるようになります。









「酒さ」と区別が難しい疾患
・酒さ様皮膚炎(口囲皮膚炎) 多くの場合ステロイド含有外用剤の副作用で生じるが、「酒さ」との鑑別が困難な場合が多い。
・脂漏性皮膚炎
・アトピー性皮膚炎
・接触性皮膚炎(化粧かぶれ)
・SLE(蝶形紅斑)


「酒さ」の悪化要因
日光、カフェイン、アルコール、刺激の強い食べ物、ストレス、極端な高温・低温などの悪化要因を避けるようにしたほうが良いでしょう。人により悪化要因は異なります。自分にとっての原因を見つけるために、毎日の食事や行動などを記録すると役に立つかもしれません。詳しくは皮膚科医を受診しアドバイスを受けましょう。

「酒さ」の治療
「酒さ」を完治させる治療法はありませんが、病状のコントロールは可能です。「酒さ」は慢性の疾患であるため、治療は、症状を軽くすることと、症状が出ない状態を維持することを目的としています。皮膚科で処方される薬と、皮膚科医の推奨するスキンケアにより、症状をコントロールし、悪化を防ぎます。

「酒さ」治療の実際
エビデンスレベルの高い治療
1)テトラサイクリン、ミノサイクリン内服
2)メトロニダゾール外用
3)アゼレイン酸外用
4)免疫抑制薬(プロトピック軟膏など)外用
エビデンスレベルの低い治療
1)漢方薬、2)ビタミン剤、3)NSAIDs外用
4)手術治療(第三度に対し用いられる)
5)レーザー治療など
避けるべき治療
1)ステロイド外用・内服


治療に際しての注意事項
・「酒さ」は慢性の疾患であるため、良くなったり悪くなったりくりかえします。皮膚科医のアドバイスに基づいた適切な治療とスキンケアにより、悪化した時の症状をコントロールしましょう。
・「酒さ」は顔に表れるトラブルのため、精神心理的影響が大きいものです。逆に、そのストレスがさらに症状を悪化させます。主治医にしっかりと相談しましょう。


情報・画像の一部は、インターネット(www.galderma.jp/)から引用させていただきました。
[PR]
by kobayashi-skin-c | 2011-12-25 18:01 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年11月22日教室 冬のスキンケア、とくに注意は乾燥肌:砂漠皮膚にならないために
皮膚にとって最大の敵は「乾燥」
そもそも生物は海(水の中)で誕生しました。私たち人間も、
お母さんのおなかの中では、「羊水」と呼ばれる水の中で発生・
発育を遂げ、「おぎゃあ」のひと声とともに空気を肺に吸い込み、
乾燥した空気の中で生きることを始めます。乾燥した空気の中で
生きることができるよう、この「おぎゃあ」の瞬間から皮膚も
変容します。かたくとも潤いのある角質の形成、汗・皮脂の分泌
などです。しかしながら、年齢とともにこの能力は減弱し、
乾燥肌が顕著となり、皮膚のかゆみ・湿疹などのトラブルを起こ
したり、皮膚の老化を早めます。あるいは過度の清潔志向から、
若者の間でも乾燥肌による皮膚のトラブルが頻発するようになって
きました。とくにアトピーの悪化です。健康教室では、乾燥肌
予防について、実際の保湿剤の使い方も交えながら、みんなで
考えたいと思います。

乾燥肌のトラブル
①皮脂欠乏症(乾皮症)
皮膚の表面の皮脂膜、天然保湿成分が減少し、皮膚バリアが不完全と
なり、皮膚の水分量が減少し、乾燥肌となります。中高年者のすね、
腰、肩などによくみられます。女性は40代、男性は50代から
始まります。
②皮脂欠乏性湿疹(乾燥性皮膚炎)
乾燥肌が続くとかゆみが生じ、夜間など引っ掻くようになります。
とくに空気が乾燥し始める秋から冬に症状が悪化します。
特徴は、皮膚の表面が砂漠のようにひび割れます。引っかき傷からは、
ジクジクとしたリンパ液がもれ出し、貨幣状湿疹と呼ばれる状態と
なります。
c0219616_1941267.jpg

c0219616_1945039.jpg

③アトピー性皮膚炎の悪化
アトピーは最近では皮膚バリア疾患とも呼ばれ、体質的に乾燥を起こし
やすい肌質を持っているため、秋から冬、春にかけてかゆみが悪化します。
④乾癬の悪化
乾癬の患者さんの多くは、冬に乾癬が悪くなることを経験しています。
夏に比べ日光浴ができないことも大きな要因ですが、乾燥による皮膚
バリアの破損がケブネル現象を起こしやすくさせていると考えられます。
すねの乾癬が頑固なのも、乾燥しやすい場所だからです。
また冬に多いのど風邪も乾癬の悪化につながります。

日常生活で気を付けること
①湿度を保つ。理想的には60%。
②ごしごし洗わない。ナイロンタオル、垢すりタオルは絶対だめ。
③石鹸を使い過ぎない。ボディーソープの方が乾燥肌を起こしやすい。
 冬の期間は1週間に1、2回の石鹸洗いで十分!タオルではなく
 手のひらで。
④バランスの良い栄養を。天然保湿成分はタンパク質。
⑤十分で快適な睡眠を。
⑥下着は綿が最適。汗をつなぎとめてくれます。
⑦暖房器具の使い方に注意。温風を直接当てない、ストーブに近づき
 過ぎない、暖房、電気毛布は寝る前にはスイッチを切る、など

おもな保湿剤とその薬理作用
①水分吸着保湿作用
 ヒルドイド、ビーソフテンなど
②水分吸着保湿作用+角質融解作用
 尿素製剤(ウレパール、パスタロン、ケラチナミンなど)
③表皮の新陳代謝改善
 ビタミン含有軟膏(ザーネ、ユベラなど)
④被膜形成により水分の蒸発を防ぐ作用
 ワセリンなど古典的外用剤
[PR]
by kobayashi-skin-c | 2011-11-23 19:06 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)