カテゴリ:「皮膚の健康教室」抄録( 63 )
2011年10月25日教室『子供の皮膚のトラブル、そしてスキンケア、アトピーを中心に』
お子さんの皮膚のトラブルとしてもっとも多いのは、やはり湿疹、あせも。なかでもアトピーがお母さんを(お父さんも)悩ませます。いったい、なぜうちの子が?何が悪いの?食べ物?ダニ・ほこり?ストレス?明確な解答はだれも持っていませんが、みんなで考えてみましょう、お子さんのスキンケアを、心と体のケアを。

子供の皮膚の特徴
1.生命維持に不可欠な皮膚は、母胎内環境から外気環境に変わると同時に劇的な変化を遂げ、急速に皮膚バリア機能を成熟させる。
2.小児の皮膚も基本構造をすべて備える。
3.皮膚・皮下脂肪の厚さは大人に比べ薄く、細胞の水分含量が多い。
4.皮膚附属器(毛、爪、脂腺、汗腺)は未熟だが、単位面積あたりの個数が大人より多く、機能は十分にある。

子供の皮膚で気をつけなくてはならないこと
①皮膚の役割で一番大切な「体内を守るバリア機能」を十分に備えていることから、むやみに清潔保持のための消毒、清拭などを行わない。
②皮膚が薄く、水分含量が多いので、皮膚からの薬の吸収度が大人よりも大きい。外用剤(塗り薬)は大人よりも弱めにする。
③小児期の皮膚幹細胞の発生・発育過程はまだよく分かっていないが、幹細胞の遺伝子に傷がつくと、将来的な皮膚がんの発生が懸念されるので、DNA損傷をきたすような過度の日光浴、やけどには気をつける。

小児の皮膚のトラブル
神奈川県立小児医療センター皮膚科(馬場直子先生)の
報告(1994年)では、
1.湿疹・皮膚炎(アトピー性皮膚炎など)
2.母斑・血管腫(ほくろ、赤あざ、黒あざなど)
3.感染症 ①ウイルス性感染症(イボ、ミズイボ、はしか、風疹、手足口病、リンゴ病など)②細菌感染症(とびひ、おでき、SSSSなど)③真菌感染症(カンジダ症、みずむしなど)④虫による感染症(アタマジラミ、疥癬など)
4.良性腫瘍(毛母腫など)
5.薬疹・中毒疹
6.毛髪異常(円形脱毛症など)
7.蕁麻疹
8.そのほか、やけど、爪の異常、形成異常(副乳、副耳など)、魚鱗癬など角化異常症

小林皮膚科クリニックでの集計はありませんが、やはり圧倒的に多くの湿疹・皮膚炎(アトピー)のお子さんが受診されています。

アトピー性皮膚炎
<原 因>
 アトピーの原因はまだピンポイントには分かっていません。かつてはアレルギー一本槍に考えられていましたが、最近の研究では、肌質的に(生れつき)皮膚のバリア機能が弱い(乾燥肌を起こしやすい)ことが、アレルギーよりもさらに根っこの原因であることが明らかにされました。その詳しい内容は、2010年6月22日皮膚の健康教室『アトピー性皮膚炎の原因と治療』の抄録を参考にしてください。

<スキンケア>
 アトピー性皮膚炎のお子様を持たれるお母さんに、一番して欲しくないこと。それは「清潔が一番」と、毎日お風呂に入れさせたり、肌をごしごし洗ったりすることです。
 北海道のアトピー性皮膚炎の患者さんでは、夏よりも冬に悪化する人のほうが多く見られます。これはもちろん冬の空気のほうが、とくに室内では乾燥しているからです。毎日の入浴、石鹸による清拭は皮膚をますます乾燥させて、かゆみに拍車をかけ、皮膚を悪化させます。
 「保湿剤の使用はアトピー性皮膚炎のスキンケアに有用である」ことが医学的調査から明らかにされており、日本皮膚科学会のアトピーガイドラインでも治療の重要な項目と位置付けられています。ただし湿疹が重症な時は、保湿剤の使用がかえってかゆみを引き起こしたり、かぶれの原因になったりしますので、皮膚炎をきちんとコントロールしたうえで保湿剤を塗ることが大切です。とくに尿素が入った保湿剤は刺激を起こしやすく、皮膚バリアを壊してしまう作用を持ちますので、注意が必要です。

<治 療>
【根拠が高い治療】
1.ステロイド剤外用
2.免疫抑制剤外用
3.ステロイド内服
4.免疫抑制剤内服
5.スキンケア
6.紫外線治療

【根拠が少ない治療】
•抗ヒスタミン剤・抗アレルギー剤内服
•脱感作療法
•抗ダニ対策
•漢 方 薬
•非ステロイド・抗炎症薬外用
•心理療法
•消毒・抗菌治療
これはEBM(evidence based medicine 根拠に基づいた医療)の観点からみた治療の選択手段です。スタンダードな方法であり、小林皮膚科クリニックでも1~6の治療手段を用いています。しかしながら、大多数の患者さんにそうであっても、個々の患者さんではこれらが合わない場合もあります。その人その人に、そしてその時その時に合った治療方法を選ばなくてはなりません。

<医師によって言うことが違う?>
 ステロイド外用剤の使い方、食べ物アレルギーの気を付け方などで、ずいぶんと医師の説明に違いがあり、混乱された患者さん、お母さんがおられると思います。日本アレルギー学会、日本皮膚科学会のアトピーガイドライン策定後から、そうした混乱は減ったように思いますが、今でも小児科の先生と皮膚科の先生で多少温度差があるように感じます。

【小児科医vs皮膚科医の温度差】
1.小児科ではステロイド外用剤はマイルドなものを選ぶことが多く、NSAID外用薬も頻繁に使われる。
→ 私たち皮膚科医の考えた方
①NSAID外用薬はかぶれを起す(ブフェキサマック軟膏は発売中止)。
②NSAIDはTh1サイトカインを選択的に抑制し、
 逆にTh2(アトピー型のアレルギー反応)をたかめる。
③マイルドなステロイド外用治療は炎症を慢性化する。
④濃度を希釈しても副作用が減るわけではない。

2.小児科ではプロトピック軟膏を敬遠する傾向がある。
→ 私たち皮膚科医の考えた方
①プロトピック軟膏は免疫抑制からリンパ腫を懸念されたが、動物実験とじっさいの臨床は異なる。
②プロトピック軟膏は使用当初刺激症状があるが、初回処方時にきちんと説明すると、乗越えられる。
③プロトピック軟膏は眼への影響がないのでまぶたにも最適である。
④バリア機能が回復すると、プロトピック軟膏は経皮吸収されないので、より副作用を起しにくい。

3.小児科では、食物アレルギーを原因として重視する傾向があり、過度の食物制限がときにみられる。
→ 私たち皮膚科医の考えた方
①食物アレルギーは確かに存在する疾患であるが、アトピー性皮膚炎とは別疾患である。
②食物アレルギーはアナフィラキシー型がほとんどで、湿疹型への関与は少ない。
④行き過ぎた除去食はこどもにとって有害である。

以上、お子さんの皮膚のトラブル、スキンケアについて、アトピー性皮膚炎を中心に勉強しました。
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by kobayashi-skin-c | 2011-10-30 17:57 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年9月27日(火)教室『乾癬の最新情報、日本乾癬学会の話題から』
 第26回日本乾癬学会が9月9日・10日、大阪国際会議場で会長川田 暁(近畿大学)のもとで開催されました。今年のテーマは、「乾癬治療の新しいパラダイム」。
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 川田先生は、こう述べられました。「近年乾癬の病態が解明されると同時に、次々と新たな治療法が開発されてきました。現在三種類の生物学的製剤が日本において保険適応となり、使用されてきています。また紫外線療法においてもナローバンドUVB療法が急速に多くの施設で行われるようになりました。いままさに研究面でも、治療面でも考え方に大きな変換点(新しいパラダイム)を迎えています。今回の学会ではこの点について概要を把握するとともに、理解をより深め、日常の診療に生かしたいと思います。」

 会長の意図をくみ、学会の内容は、研究面において乾癬の起こり方(病態)の免疫学的研究の総括が、治療面では生物学的製剤の発表が相次ぎました。おもなプログラムを紹介しましょう。

特別講演
1.「乾癬の病態:免疫細胞の異常から表皮細胞への作用」 奥山隆平先生(信州大学)
2.「乾癬表皮における組織構築の変動と角化異常の再評価」飯塚 一先生(旭川医科大学)

シンポジウム
1.「乾癬の最新の光治療」ナローバンドUVB、エキシマーランプなど
2.国際シンポジウム 日本、ヨーロッパ、米国における生物学的製剤治療
3.「バイオロジクスを正しく使おう!」皮膚科、整形外科、内科

一般の発表は82題があり、うち52題は生物学的製剤に関連するものでした。生物学的製剤の使い方の点で、次の三つの項目の討議が多く聞かれました。

1.インフリキシマブの二次無効
インフリキシマブ(レミケード)を数回続けていると、効き目が急速に衰えてしまう例がある。とくにレミケード治療を一時的に中断したときに生じやすい。これはレミケードにマウスのたんぱく質が一部に含まれているため、ヒトの体の中では異物のたんぱく質として排除されてしまう機構が働く(中和抗体)ため。こうした例では、他の生物学的製剤に変更する必要があるが、二次無効を生じた例でもヒュミラ、ステラーラは有効である。
効果が衰えてしまったのか、副作用として乾癬の姿が変容しているのか、判断が難しい例もある。中和抗体の測定が有用であるが、検査費用が高価なことが問題である。

2.生物学的製剤によるパラドキシカル(矛盾)反応 paradoxical reaction
 リウマチ患者、クローン病患者で生物学的製剤治療中に、乾癬、掌蹠膿疱症が副作用として現れることがある。乾癬の治療薬でありながら、乾癬を引き起こすこの反応(副作用)をパラドキシカル反応と呼ぶ。今回の学会では、乾癬の治療中にも乾癬が変容する症例があることが報告された。乾癬が生じる病態が、TNFα、IL-12、IL-23などを介するTip-DC→Th17細胞→Stat3の活性化→角化細胞の増殖亢進→乾癬の発症という最近の学説のみではない複雑さを示すものである。

3.インフュージョン(点滴)反応 infusion reaction
 インフリキシマブ(レミケード)は点滴注射で行なわれる。この点滴中に、血圧が下がったり、気分が悪くなったりすることがある。レミケードは抗TNFαマウスモノクローナル抗体であり、マウス(ねずみ)のたんぱく質を注射薬に含んでいる。ヒトにとっては異物であるため、排除するための中和抗体が産生されることがあり、点滴中にレミケードと中和抗体が反応することにより、アナフィラキシー様の症状を引き起こす。
 予防のため、点滴前から抗アレルギー薬の内服、点滴中のステロイド混注が行なわれる。さらに中和抗体産生予防のため、メトトレキサート内服を続けておくことが望ましいとの意見もある。レミケードのリウマチ治療では、このメトトレキサート(リウマトレックス)治療が必須である。

印象に残った発表
1.アダリムマブ投与による乾癬皮疹軽快後に休薬または4週間隔投与へ減量した5症例の中長期経過(東京女子医大、聖母病院) 生物学的製剤も完治をもたらす治療薬ではありません。いったいこの高価な薬をいつまで続けなくてはならないのか、皆さん不安に思われていることでしょう。生物学的製剤がすでに以前から使われていた関節リウマチの患者さんでは、リウマチが軽快し、治療をやめてからも長くリウマチが再発しない方が報告されていました。乾癬でも、アダリムマブ(ヒュミラ)の休薬、減量が可能となった患者さんがあったとのことです。この点について、どうしたら止められるか、減らすことが可能か、さらなる研究が待たれます。
2.インフリキシマブ使用乾癬患者22例および切り替え5症例を含むウステキヌマブ使用患者10例の使用経験(JR札幌病院) JR札幌病院の主任医長である伊藤 圭先生が、学会の5番目に発表されました。全国的にも1,2の経験の多さです。小林皮膚科クリニックからも多くの患者さんが伊藤先生にお世話になっています。
3.皮膚科看護師の乾癬に対する認知度・意識調査(東京大学医学部附属病院看護部) 生物学的製剤の導入に伴い、以前のステロイド外用薬は光線療法を主体とした治療から、より効果のある治療を求めて皮膚科を受診する患者が増えるとともに、全国に乾癬患者の会が立ち上がり定期的な勉強会を開き、乾癬という疾患に対する認知度が高まってきている。病棟や外来で乾癬患者と接する機会多い看護師に対して、医師に遠慮して質問できないような内容について、患者から問われるケースが増えている。患者に対する十分な精神的支援を行なううえでも、皮膚科看護師が疾患、治療法(効果、副作用、通院頻度など)に加え、患者QoLの障害度に対する最低限度の知識を持っておくことが重要となる。
 東大病院の病棟、外来、連携するクリニックの看護師に対し、乾癬の認知度、意識調査をおこなった。認知度・意識ともにクリニックの看護師がもっとも高く、続いて東大外来、病棟看護師の順であった。病棟での仕事分担、多忙さ、各科のローテーションがスペシァリティを阻害しているものと思われた。医師との勉強会などを含めたコミュニケーションがより必要であると思われる、との結論でした。
4.尋常性乾癬患者である私自身の治療履歴と生物学的製剤の使用経験(筑波大学附属病院看護部、筑波大学) 20歳のとき頭から乾癬が発症し、3年後には全身に拡大し尋常性乾癬の診断を受けた。ステロイド軟膏、ボンアルファ軟膏、オキサロール軟膏の外用治療を続けたが徐々に悪化した。チガソン内服、PUVA療法でも改善なく、シクロスポリン内服で一時的にすべて乾癬が消失した。しかし、次第に効き目が悪くなり、血圧上昇、クレアチニン値が緩やかに上昇し始めた。昨年9月生物学的製剤の使用を決心し、アダリムマブ(ヒュミラ)の導入を開始した。開始当時PASIは11.6であったが、現在は0.8まで軽快している。
 乾癬があることにより、人との接触を主体に社会生活に大きな制限を感じながら、つねに「乾癬がなければ、乾癬がなければ」の思いが強く、乾癬があることで自分の人生のほとんどが振り回されてきた。しかし、ヒュミラでここまで改善し「人生が変わった」。こうして皆さんの前で自分の経験を話すことができるのも生物学的製剤のお蔭である。しかしながら、高額な治療費や今後の副作用の出現なども検討課題である、と発表されました。医療に携わる方からの貴重な発表で、大きな感動を参加者全員に与えました。多くの患者さんを集めた研究発表も大切ですが、個人の歴史・体験はより貴重であると考えさせられました。

生物学的製剤による副作用
ヒュミラ、レミケードによる肝機能障害
ヒュミラ注射部位に強い紅斑反応
レミケードにより掌蹠の皮疹が増悪
クローン病患者に生じたレミケードによる陰部乾癬
クローン病患者に生じたレミケードによる掌蹠膿疱症、乾癬、脱毛
レミケードによる多形紅斑型薬疹
レミケードによる扁平苔癬型薬疹
ヒュミラによる顔、足の紅斑型薬疹
ヒュミラで治療中に併用抗結核剤で薬疹
ヒュミラ治療中に1例の肺結核 治療前の検査で、X線検査、血液検査では問題なかったが、ツベルクリン反応が強陽性であったため、抗結核剤の併用を行ないながら、ヒュミラを開始した。しかし患者は医師の指示どおりに抗結核剤を内服していなかった。レミケード治療中に3例の間質性肺炎
レミケード治療中の2例に肺病変(咳とCT検査異常、胸の痛みとCT検査異常)
ヒュミラ治療中の1例に肺病変(血液検査異常≪クォンティフェロン、KL-6≫)
ステラーラ治療中に上気道感染症、好酸球性肺炎
レミケード治療により誘発された汎発性膿疱性乾癬

すでに昨年1月から使用可能となったレミケード、ヒュミラは、1,000名以上の乾癬患者さんに使われています。今のところ使用した患者さんすべてが調査対象となっており、その中の1名だけの結核ですので、危惧されたよりも少ない危険度と言ってよいと思います。しかしながら、はっきりと結核とは言えないものの、なにか変な肺病変が相次いでおり、今後もさらなる注意が必要と思われます。また生物学的製剤のガイドラインが変更になり、実施施設が今までの大病院から、一般クリニックまでと拡大されました。安易な使用に走るのではなく、ガイドラインの順守、未知の副作用への注意深い観察が求められます。

乾癬学会の終了後、今では恒例となった全国乾癬患者学習懇談会が、会長の川田先生のはからいにより、同じ学会会場内で開かれました。その内容については、日本乾癬患者連合会(http://derma.med.osaka-u.ac.jp/pso/JPA/)、大阪乾癬患者友の会(http://derma.med.osaka-u.ac.jp/pso/)に掲載されています。ご覧ください。会長の川田先生、そして群馬大学の安部先生のお話が集まられた100名以上の方たちに感銘を与えました。その後の全国から集まられた患者会のメンバー、相談医をされる先生方を交えた懇親会も、浪花の夜景を眺めながら素敵でした。この懇親会の中で、神奈川県には今年中に、そして岩手県にも近々乾癬患者会が発足する予定であることが報告されました。全国に仲間が増えています。
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by kobayashi-skin-c | 2011-09-28 18:59 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年8月23日教室『乾癬の最新治療、生物学的製剤の実際の使い方、効果などについて』
バイオロジックス(biologics 生物学的製剤)は、
2010年1月にアダリムマブ(ヒュミラ)、インフリキシマブ(レミケード)が保険薬として認可され、乾癬治療の主役として躍り出ました。保険薬認可に際しては、新薬試験の迅速審査を求めて全国の乾癬患者会が署名活動を行い、厚生労働省の決定を早めたことは画期的なできごとでした。さらに2011年3月には、ウステキヌマブ(ステラーラ)が登場し、バイオロジックスがさらに使いやすいくなりました。

現在まで、
小林皮膚科クリニックでは、ヒ ュ ミ ラ:2名、レミケード:9名、ステラーラ:6名、エンブレル:2名の治療を行っています。いずれの方もバイオロジックス治療が必要と判断され、患者さんと熟慮を重ねて開始されました。開始に当たっては、小林皮膚科クリニックでは実施できないため、認定施設である北海道大学病院、市立札幌病院、JR札幌病院の皮膚科、またバイオロジックス治療に精通するリウマチ科の先生(佐川昭リウマチクリニック、クラーク病院)に治療を依頼しました。バイオロジックス治療が必要と判断された何人かの事例を紹介いたします。
ヒュミラ① 60代男性.膿疱性乾癬・関節炎。48歳の時に角層下膿疱症を発症。その後皮膚症状に加え発熱も生じるようになり、膿疱性乾癬と診断された。チガソン30-50㎎の内服で症状は抑えられたが、チガソンを減量すると皮膚症状の悪化がある。50歳代半ばからは全身の関節痛を伴うようになり、抗リウマチ治療(プレドニン、リウマトレックス)も加わったが、日常生活の不自由度は大きかった。
 2009年6月、ヒュミラを開始。関節症状は著明に改善し、日常生活は楽になったが、皮膚症状にチガソンはまだ欠かせない。

ヒュミラ② 40代女性。18歳で尋常性乾癬を発症。外用PUVA療法、ナローバンドUVB治療が効果をあらわしたが、通院の負担、また若い女性であるだけに精神的な苦痛が大きかった。
 2010年4月、ヒュミラ治療を開始。半年はあまり効果が見られなかったが、最近ではほとんど乾癬が消失し、ヒュミラも1ヶ月一回に減量している。

レミケード① 30代女性.16歳の時に尋常性乾癬を発症。20代半ばからは関節痛が強くなり、指の変形、足首関節の脱臼・運動制限が現れるようになり、日常生活が大変となった。とくに子供の育児に支障を来たすようになった。プレドニン、リウマトレックス治療も効くには効いていたが不十分であった。
 2008年9月、レミケードを開始。関節痛が著明に改善し、子供も小学生となり、精神的にも大きく楽になった。皮膚の症状は残存するがわずかだけとなった。

レミケード② 70代女性.膿疱性乾癬・関節炎。55歳で尋常性乾癬を発症。全身に広がりたいへん重症であったが、さらに62歳の時に膿疱性乾癬となった。その頃から関節の痛みが激しくなり、日常生活が著しく不自由になった。チガソンは有効であるが、減量が困難であった。
 2010年11月、レミケード開始。第1回目の点滴の翌日から関節痛は著明に改善し、「夢のようだ」との感想。

ステラーラ① 20代女性。膿疱性乾癬・関節炎。11歳の時に乾癬を発症。外用PUVA療法、入浴PUVA療法を主体の治療を続けていたが、20歳の頃から膿疱を生じるようになり、発熱もあり膿疱性乾癬と診断された。チガソンは継続が難しく、ネオーラルの効果もあまりみられなかった。
 2010年11月、レミケードを開始。しかし、5回の点滴で無効。2011年6月、ステラーラに変更して乾癬は著明に改善した。

ステラーラ② 40代男性。尋常性乾癬・関節炎。20歳の時に乾癬を発症。入院・外来にて外用PUVA療法、ナローバンド療法を主体の治療を続けていた。紫外線治療はよく効いていたが、農家のため定期的な通院が困難であり、関節炎も伴うようになった。
 2011年7月、ステラーラを開始。2回目の注射終了時、乾癬はほぼ消失した。

バイオロジックスはたいへん優れた薬剤です。しかしまだこの新しい治療に参加された患者さんはまだごくわずか。皆さんにこの新しい治療法を説明する時、かならず皆さんから受ける質問は、「治るんですか?」。
 残念ながらこの新しい治療法もまだ対症療法に過ぎません。「いったい、どれぐらい続けなくてはならないんですか、しかもそんな大金を払って」という壁にぶつかります。
 その費用は、薬剤費だけみても
ヒュミラで初年度¥576,000、2年目以降¥555,000。
レミケードは初年度¥963,000、2年目以降¥842,000。
ステラーラは初年度¥640,000、2年目以降¥512,000。
いずれも高額です。高額療養費負担をはじめ、税の医療控除などいくつかの減免措置はありますので、バイオロジックス治療をお考えの方は、かならず医師、また保険事務所などに詳細をおたずねください。

そして、新しい治療法であるだけに副作用のことも皆さま気がかりです。新しい概念の薬剤であるだけに未知の副作用もあり得ますが、一番懸念される免疫抑制作用のうち感染症について、中間調査報告ではわずか一人の結核が出ただけでした。このお一人も飲むべき抗結核薬を患者さんが服用していなかったことが原因でした。もちろん、私達も皆さまも、この新しい治療法を大切に育てるために、ガイドラインをきちんと順守すること、また未知の副作用をいちはやく察知することが大切であると思います。
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by kobayashi-skin-c | 2011-08-24 19:16 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年7月26日教室『夏の皮膚のトラブル、アトピー、あせも、水虫、とびひ、などなど』
 北海道の夏は爽やかで過ごしやすいもの、と言われていましたが、どうも最近は暑い日が多くなってきているように感じます。とくに昨夏は北海道でも30℃を超える日が続きました。今年の夏はどうでしょう。夏に悪化しやすい皮膚のトラブルについて、アトピー、あせも、水虫、とびひ、などについて解説します。
 アップロードが遅れているうちに、残暑の季節となってしまいました。お盆前、札幌では34℃を記録する猛暑、酷暑の夏となりました。虫食われ・虫刺されでつらかった人、急な日焼けで痛くて痛くて寝れなかった人、かゆくて寝苦しくて思いっきり引っ掻いてしまったアトピーの人、アセモからトビヒになったお子さん、靴で蒸れて足のゆびの間がジクジクに靴ずれを起こした人、・・・・・・・。たくさんの方々がクリニックに来られました。古いビルの中の本院クリニックも蒸しぶろ状態。皆さまにはたいへんご迷惑をおかけいたしました。
 また来年、夏の皮膚のトラブル、スキンケアについて『皮膚の健康教室』で皆さまと一緒に学びましょう。
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by kobayashi-skin-c | 2011-08-24 18:24 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年6月28日教室 『スペイン、バスク・ピレネーの旅』
連休を利用して、スペイン、フランスにまたがるバスク地方、そしてスペイン・フランス国境に聳えるピレネー山脈を訪れてきました。バスク地方と言えば、バスク独立運動に代表されるよう、独自の言語を持ち、独特の衣装(ベレー帽発祥の地)、個性的な顔立ち(聖フランシスコ・ザビエルの出生地)など、一つの国のような地域です。大西洋岸の美しい町々(海バスク)、ピレネーから連なる深い山懐に抱かれた小さな村々(山バスク)を訪ねました。素朴で温かい人々、個性的で素晴らしい食べ物に感動しました。ピレネーのトレッキングでは今までに見たこともない山の姿を味わうことができました。その一端をご紹介いたします。

c0219616_19161363.jpg バスクと日本とは、ザビエル以来何かしらの縁で結ばれていたようです。司馬遼太郎もバスクを訪れた際に、その感慨を吐露しています。海バスクの街中、道端の軒先では炭火の七輪の網の上でサバが焼かれ、香ばしいにおいを放っていました。海バスクの料理には、タコやイカがふんだんにあしらわれていました。c0219616_14292017.jpg





ベレー帽はバスクが発祥の地。正装の時、赤いベレー帽に、真っ白なシャツ、真っ白なパンツ、そして赤いベルトを締めるのです。c0219616_14471742.jpgちなみにバスクの国旗(国ではない?)も、赤、白、緑。牛追い祭り(サンフェルミン祭)で有名なパンプロ―ナの町もバスクです。今年の祭りでもずいぶんたくさんのけが人が出たようですが、幸いに亡くなった方はいませんでした。かなり熱くなる人々なのですね。
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c0219616_14504528.jpg このバスク紀行の写真は、photo & essayにも掲載いたしました。そちらもご覧ください。
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by kobayashi-skin-c | 2011-06-29 19:18 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年5月24日教室『夏のお化粧、お肌の手入れ』
5月の札幌、まだまだ風は冷たく「春は名のみ」。しかし油断は大敵、すでに紫外線の量は真夏8月と同じ。空気が乾燥しているぶん、肌への影響は大きいと言えます。今から始めたい紫外線対策。今回の皮膚の健康教室では、アクセーヌ(株)の学術員、瀬戸陽子さんをお招きして『夏のお化粧、お肌の手入れ』についてお話しいただきました。

紫外線がおよぼす皮膚への影響は?
生活紫外線=UVA(紫外線A波):窓ガラス越しにも入ってくる紫外線。日焼けは起こしませんが、長く当たると皮膚の色が濃く黒くなったり、長年続くと皮膚のシワ・たるみの原因となります。
レジャー紫外線=UVB(紫外線B波):夏の海、冬のスキーなどで起こる日焼けを起こす紫外線。重症の場合、皮膚は真っ赤にはれあがったり、水ぶくれができたり、そしてその痕にはシミ。長年続くと皮膚がんのもとにもなる紫外線。
「光老化」という言葉があり、シミ、シワ、たるみなどの皮膚の老徴は、紫外線に長年当たり続けることが体内時計以上に皮膚の老化を進めることを意味します。
でも、太陽の光がなければ私達は生きていけません。すべての地球上の生命は、太陽の光から恩恵を受けています。太陽の光がなければ栄養源となる野菜も果物も育ちません。私達の体自体も、陽の光の一部である紫外線の働きで皮膚の中で大切なビタミンDを作っています。

陽の光と上手に付き合いながら、毎日の生活を送り、楽しむことが求められています。

夏のお肌の手入れ、その誤解

①日焼け止めは、SPFが高ければ高いほどよい?
 そうではありません。TPOが大切です。TPOとは、T(time、時間・季節)、P(place、場所)、O(opportunity、機会・行動)。普段の生活、通勤、通学、お買いものであれば、SPFの数値は、20-30で十分です。夏のレジャー、春スキー、長時間のスポーツ観戦のときには、40-50のものが必要です。SPF値が高ければ高いほど、化粧品としての白さが目立ち、伸びにくく、また洗顔しづらいものです。ことに敏感肌、ニキビ肌をお持ちの方では、皮膚のトラブルとなりやすく、SPF40-50のものを常時使用する必要はありません。
"SPF"って何?
 いまどき知らない人はいないかもしれませんが、"Sun Protection Factor"。レジャー紫外線であるUVBから、どれぐらい皮膚を守るかを表す指数です。数値が大きいほど日焼けを防ぎます。SPF1は、晴天の真夏の昼間で20分、何も塗らないと皮膚は赤くなります(個人差は大きい)。その20分を防ぐのがSPF1。SPF10の日焼け止めを塗ると20分x10=200分までは、日焼けを防ぎます、という意味です。しかし、黒くなることは防げません。
そこで"PA"?
 これも、いまどき知らない人はいないかもしれませんが、"Protection grade of uvA"。生活紫外線であるUVAからの防御指数です。(+)、(++)、(+++)の三段階です。普段の生活では(+)か(++)で十分です。

②日焼け止めはよく伸ばして使った方がいい?
 最近のフェイス用は、お化粧下地を兼ねている製品が多く、のびが良いために控え目によく伸ばして使いがちです。しかし日焼け止めクリームはSPF50の製品を半分の濃さで塗っても、SPF25の効力を発揮することはできません。SPF10以下になってしまいます。かならず使用説明書にある「適量」を守ってください。

③日焼け止めは一度ぬればOK?
 日焼け止めを下地にメイクアップした場合、少し汗をかいてお化粧崩れをしたからといって、お化粧直しをするのは面倒。でもどんなにSPF値が高くても、汗で、海で、プールで流れ落ちてしまったら効力を失います。理想的には、2~3時間ごとに塗り直しましょう。

④日傘は黒!?
 確かに紫外線をもっとも吸収して通さないのは、黒色。しかし白いものは紫外線を反射させます。ある実験によると黒い傘も、白い傘も、効果は変わらなかったとか。黒は熱も吸収するため熱くなってしまいます。

⑤紫外線は太陽からだけ?
 もちろん紫外線の発生源は太陽から。飲み歩いて「ネオン焼け」?それはないでしょう。紫外線は上からだけではなく、反射紫外線もあります。一番は、雪面。太陽光の70%を反射しますので、スキー場では1.7倍の紫外線を受けることになります。そのほか、砂浜、海、湖などの水辺も要注意です。

日焼け止めの正しい塗り方
①頬、あご、額、鼻(いちばん紫外線があたりやすい場所)に少量ずつ
 のせ、そこから手のひら全体を使って、むらなくなじませます。
②目のまわりなど、細かい凹凸のある部分は、薬指の腹を使ってなじませ
 ます。
③最後に、両手のひらで顔全体をやさしく包み込んで、肌にフィットさせ
 ます。
④「一度にたっぷり」ではなく、「適量を少しずつ」重ねます。

やさしい落とし方
①クレンジングをお使いください。日焼け止めは洗うだけでは落ちません。
 クレンジング製品をたっぷり目に使って、皮膚をこすらずにやさしく
 なじませて下さい。
②洗顔は、しっかりと泡だてた「豊かな泡」で顔全体を包み込み、強くこす
 らずに、やさしく落としましょう。

さて、講師の瀬戸陽子さんの最後の提案
「自分にあった日焼け止め、お化粧品を選んでくださいネ。自分以上に自分の肌を知る人はいません。適確に紫外線を防御、そして塗りやすく、やさしく落とせるもの、そんなお化粧品を一緒に探しましょう。」
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by kobayashi-skin-c | 2011-06-02 17:26 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年4月26日教室 『ステラーラ』
『ステラーラ』は、新しい薬剤。乾癬の治療に使われる一番新しい生物学的製剤(バイオロジックス)です。3か月に1回の皮下注射だけで乾癬の症状がコントロールされます。3月中旬に厚生労働省で認可され、使用可能となりました。どんな薬か、どれぐらいの効き目か、副作用は、値段は、・・・・・、乾癬の患者さんすべてに効くわけではなく、またすべての方が使えるわけではありません。しかしながら、3か月に1回の治療だけで、病院通いからも、毎日の軟膏塗りからも解放されることを考えると、治療の選択の一つとして考えてみることも良いでしょう。昨年、乾癬治療に待望の生物学的製剤(バイオロジックス)が『レミケード』、『ヒュミラ』登場しました。『ステラーラ』との比較は以前の資料(院長ブログ「よくある疾患Q&A」、生物学的製剤)を参照してください。

ステラーラを発売するヤンセンが発行するパンフレット(慈恵会医科大学、中川先生監修)のコピーを掲載します。ご参考としてください。

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by kobayashi-skin-c | 2011-05-15 00:00 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年3月22日教室 かゆみの起こるわけ、かゆみの治療
皮膚の病気でつらいのが、何といっても「かゆ~い!」、かゆみ(搔痒)。
ところが意外と「かゆみ」のメカニズムは分っていません。最新の情報を
お届けすると同時に、かゆい時の対処法、そして昨年の暮れに保険適応
(発売)となったばかりの新しい薬剤について解説しました。

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「かゆみ」がどのように起こり、どのようにして感じるのかをめぐる研究が活発になっています。まず「かゆみ」は、皮膚の表皮直下にある「かゆみ神経受容体」で「かゆみ刺激」をキャッチします。その刺激は神経C線維を伝わって、脊髄視床路→視床→大脳皮質へと伝わり、「かゆみ」として感じます。以前には、「かゆみ」は「痛み感覚の弱いもの」として考えられていましたが、「かゆみ刺激」も「神経経路」も「痛み」とは違うものであることが明らかになりました。さらに、「かゆみ刺激」、「かゆみ神経経路」にかかわる様々な物質、神経ホルモンなどが明らかになるとともに、「かゆみ」を抑制する新しい薬剤の開発が進んでいます。

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しかし、「かゆみ」の全容解明にはまだまだいたらず、適確に「かゆみ」を抑えることができません。たとえばじんましん(蕁麻疹)では、そのメカニズムがある程度簡単に説明されることから(上図を参照)、「かゆみ刺激」物質であるヒスタミンをブロックする薬剤を内服すると、蕁麻疹の「かゆみ」はピタッとおさまりますが、アトピー性皮膚炎のメカニズムは複雑であり、もっとも辛い症状である「かゆみ」をなかなか抑える手段がありません。

「かゆみ」治療には次のような手段があります。
1.皮膚の炎症を抑制する(最も重要かつ効果的)
①ステロイド外用
②タクロリムス外用
③シクロスポリン内服
2.抗ヒスタミン薬
3.冷やす
4.スキンケア
5.マイナートランキライザー
6.κ-オピオイド刺激薬

もっとも効果的な「かゆみ」治療は、
1.皮膚の炎症を抑制する(最も重要かつ効果的)
①ステロイド外用、②タクロリムス外用
③シクロスポリン内服、④紫外線照射治療など
・炎症部位ではリンパ球、好酸球から放出されるIL-2, IL-31, TNFαなどが痒みを起こす。
・T細胞機能を抑制するだけでも(タクロリムス、シクロスポリン)、痒みは軽減する。
・神経原性炎症(サブスタンスPなど)も抑制する。

次に有効な「かゆみ」治療が、
2.抗ヒスタミン薬
・最近は抗アレルギー薬(第二・三世代抗ヒスタミン薬)が主体。抗ヒスタミン作用に加え、多彩な抗アレルギー作用、抗炎症作用も有する。
・継続して内服したほうが効果が出る(アトピー)。
・副作用が少ない。抗コリン作用がなく、緑内障、前立腺肥大に悪影響を及ぼさない。
・効果・副作用には個人差があるので、1~2週間使って効果がない場合は変更する。

抗ヒスタミン剤は開発された年代により次のように分類されます。第二世代以降は抗アレルギー剤とも呼ばれています。新しいほど、かゆみ抑制効果が高く、眠気・だるさなどの副作用が少なくなっています。
第一世代
レスタミン、ペリアクチン、アタックス、ホモクロミン、ポララミン、タベジール、ニポラジン/ゼスラン
第二世代
ザジテン、アゼプチン、ダレン/レミカット、セルテクト
第三世代
アレジオン、ジルテック、アレロック、アレグラ、タリオン、エバステル、クラリチン、

・眠気の注意がないのは、アレグラ、クラリチン。
・「危険を伴う機械の操作する際には注意」:アレジオン、タリオン、エバステル。
・他のすべては、「危険を伴う機械の操作には従事させない」こととなっています。
・妊婦では、ポララミン、タベジールは比較的安全。
・肝機能障害者では、アレグラ、タリオン。
・腎機能障害者では、アレグラ、エバステル、ダレン。

xyzal(ザイザル)
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約10年の間わが国では、新しい抗ヒスタミン剤の発売がありませんでしたが、昨年12月「xyzal(ザイザル)」が発売されました。期待される薬剤です。














そのほかの「かゆみ」治療として
3.冷やす
・冷た過ぎないほうがよい。
4.スキンケア
・ドライスキンでは神経終末が皮膚表面まで伸長。
5.マイナートランキライザー
6.κ-オピオイド刺激薬
・μ-オピオイド受容体は痒みを増強し、 κ-オピオイド受容体は抑制する。最近κ-オピオイドアゴニスト(ナルフラフィン[レミッチ])が開発された。
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「かゆみ」を感じる大脳皮質で中枢性かゆみを抑制する新しい薬剤です。今までの「かゆみ」治療とはまったく違った種類の薬剤であり、その大きな効果が期待されています。ことに腎臓病のため人工透析を受けている方々の多くが、強い「かゆみ」で苦しんでおられますが、今まで抑えることができなかったそのつらい「かゆみ」を抑えることが確認されました。現時点で「レミッチ」は透析中の腎不全の方のみに保険適応となっています。今後、ほかの皮膚疾患(たとえばアトピーなど)でも使えるようになることが期待されます。

「かゆみ」は「引っ掻かざるを得ない『不快な感覚』」と定義されています。ところが、『不快』とばかりは言えないところに、「かゆみ」の奥深さがあります。それはかゆいところを掻くと「気持ちいい快感」が得られる所にあります。だから「掻く」のってやめられないんですよね。そもそも「かゆい」→「掻く」は反射的におこる当たり前の反応・動作なのです。動物だって足を使って、ときには口・くちばしを使って掻く動作を行っています。私たち動物は、昔から昆虫との戦いを続けています。蚊、ブヨ、ダニ、ノミ、・・・・・、最近でこそ防虫剤の発達で少なくなってきていますが、昆虫からわが身を守る必要があります。昆虫が媒介する病気もたくさんあります(たとえば日本脳炎、ウエストナイル病、マラリア、デング熱、ライム病、などなど)。それから守るのが「引っ掻く」ことなのです。引っ掻いて蚊を射止めることもできますし、引っ掻いて伝染性の病原体を取り除いています。

なのに皮膚科の病院に行くと、「引っ掻かないでくださいネ」、「引っ掻くから治らないのですよ」と耳にたこができるぐらい、みなさん注意されていませんか。無理ですよね、引っ掻くのを我慢するなんて。

さてさて今日の健康教室の結論、「かゆみ」メカニズムの研究から新しい治療法も開発されています。しかしながら、まだまだその全貌は明らかにされていません。確実に「かゆみ」を抑える手段はまだありません。「かゆみどめ」の薬なんてまだこの世の中にありません。でも、ひっかいて皮膚病を悪くさせることも事実。

「かゆみ」を和らげる工夫を行いながら、それでもかゆい時、
「引っ掻いてください、でも皮膚に優しくね」
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by kobayashi-skin-c | 2011-05-14 23:35 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(1)
2011年2月22日教室 『皮膚のできもの、ほくろ、腫瘍』
でもの、はれもの、ほくろ、イボ、がん、メラノーマ、・・・・・、皮膚にはいろいろな腫瘍があります。皮膚にはどんな種類の腫瘍があるのか、どんなサインが危ないのか、勉強しました。

腫瘍とは、本来の機能(働き)、形態(かたち)を失った細胞が無秩序に増殖したもので、ヒトの命まで脅かすものを悪性腫瘍と呼び、一定の大きさでとどまるものを良性腫瘍と呼び、その中間・境界線上にある上皮内がん、中間型があります。

腫瘍のでき方には、
1.発生の段階で(母親の1個の卵子細胞に父親の精子が結合することにより、人体を形づくる60兆個の細胞にまで分裂します)、複製ミスのためDNAに変異を起こし、胎児の間に腫瘍の元ができたもの(例:ほくろ、あざ、多くの小児がん)
2.生まれてから後、さまざまな外的・内的刺激により、DNAに変異を起こし腫瘍が生じるもの、 があります。

皮膚は人体の最外層にあるため、紫外線をはじめとしたさまざまな外的刺激を受けやすいことから、加齢とともに多くの腫瘍が生じます。また皮膚は表皮、メラノサイト、免疫細胞、毛、つめ、あせ、血管、神経、筋肉、皮下脂肪などさまざまな働き、細胞があるため、じつに多様な腫瘍が生じます。生命にかかわる腫瘍が生じることも事実です。

そして、皮膚はさまざまな働きをしています。体を守る、体温を維持する、黴菌・異物を排除する、汗をかく、毛を生やす、爪をのばす、痛い・かゆい・つめたい・熱いの感覚、・・・・。そのために特殊な構造をたくさん持っています。腫瘍はそのひとつひとつから生じます。
表皮は角化細胞(顆粒細胞、有棘細胞、基底細胞)、免疫細胞、色素細胞(メラノサイト)からなり、表皮からは、脂漏性角化腫・日光角化腫・基底細胞がん・有棘細胞がん・ボーエン病・ケラトアカントーマ・疣状角化腫・疣状がん、免疫細胞からは、ランゲルハンス細胞腫(組織球症X)、リンパ球腫、リンパ腫、菌状息肉症、ATL、色素細胞(メラノサイト)からは、色素性母斑(ほくろ)・青色母斑・悪性黒色腫(メラノーマ)などの腫瘍が生じます。汗の汗腺・汗管からは、・・・・・、毛の毛包からは、・・・・・、血管からは、神経からは、筋肉からは、・・・・・・・・、実にさまざまな腫瘍が生じます。その中から、どんな腫瘍であるのか、良性なのか悪性なのか、正確に判断することは専門医でも困難なことがあります。より専門性の高い大学病院の医師にその判断をゆだねることもあります。

みなさまにとって大切なことは、自分の皮膚の変化を見逃さないこと、変化を自己判断なしに専門医の相談を早めに受けること。その参考となるよう実際の皮膚のできもの、ほくろ、腫瘍の姿を認識して下さい(健康教室ではおおくの皮膚腫瘍の実際の姿を写真でみていただきました)。
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by kobayashi-skin-c | 2011-02-22 20:54 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)
2011年1月25日教室 『ニキビの原因と治療 -ニキビでお悩みのあなたへ-』
「たかがニキビ、されどニキビ」
一生のうちでけっして通り過ぎることができない皮膚のトラブルが「ニキビ」。だれしもが
経験する「ニキビ」。ニキビは、正確には「尋常性ざそう」とよばれます。
ほんとうに「たかがニキビ」と済ませて良いのでしょうか。お父さんも言うように「ニキビは
青春のシンボル、気にすんな!」で終わらせて良いのでしょうか。

けっしてそうではありません。ニキビが患者さん(悩む人)にとって重大なQOL障害となる
ことが分っています。QOLとは、"Quality of Life"。「生活の質」、「生きることの充実感」
と呼ばれています。ニキビが起こる年齢はちょうど思春期であり、子供の体が大人の体質に
変わるころです。男子であれば声変わりするころ、女子であれば初潮を迎えるころです。
この思春期には体の内外にたくさんの変化が起こると同時に、心・精神にも重大な変化が
起こり始めます。「自我の形成」です。「自分って何だろう?誰だろう?」、「お父さん、
お母さんに甘えたい、でもうっとうしい」などの感情が心の中で渦巻きはじめます。
そして、ついには「自我の確立」に至るのですが、自我の確立には「自らへの自信・自尊心」
が欠かせません。この「自らへの自信・自尊心」の形成をニキビが大きく損なわせることが
分っています。

人はだれしも"Body Image"を持っています。窓ガラスや鏡に映る自分の姿を確かめたり、
自分の影の足の長さを測ったり、自分を確かめながら、自分の理想の姿を心の中に描いています。しかしながら、理想の姿(ideal body image)と現実の姿(real body image)の
間には溝があり、その溝に苦しみます。好きな人ができたりすると、その苦しみはなお
いっそうのこと深まります。理想の姿を見て欲しいのに、自分の現実の姿はなんとかけ
離れているのだろうか、と。意外とその好きな人の瞳の中ではニキビなんて見えてない
のですが、でもBody Imageは自分の心の中のできごと。好きな人の気持ちも確かめない
まま、「自らの自信・自尊心」に障害を受けて自信を失ってしまいます。ことに顔の皮膚の
変化は心の中の重大なできごととなり、自我の形成に大きな悪影響をおよぼしてしまいます。
それがニキビの問題なのです。

「たかがニキビ」ではありません。

「されどニキビ」。世界のニキビ治療は大きく変わっています。 日本でも、やっと、
ニキビの治療が大きく変わりました。病院で処方される新しい外用薬がニキビの治療・予防に
役立ちます。日本皮膚科学会ではこの新薬の登場に合わせて「尋常性ざそうの治療ガイド
ライン」を作成しました。今まで以上に実証性をふまえた治療が可能となっています。
健康教室では、ニキビの起こるメカニズムとこの新薬(アダパレン、商品名ディフェリン
ゲル)についてお話しいたしました。

新薬の情報・使い方は、クリニックのパンフレット等でお知らせいたします。

ニキビはどうして起こるの?

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思春期、男性ホルモンの分泌が高まります(女性でも副腎で男性ホルモンは作られます)。男性ホルモンは皮膚にも、とくに毛嚢(毛包)、脂腺、アポクリン腺に働き、毛包出口(毛穴)の角質肥厚が起こり、同時に高まる脂腺の活動・皮脂の増加によってニキビが出現します。これが白ニキビ、黒ニキビです(面ポウ)。毛包にはニキビ菌が常在しているため、毛穴が閉じると同時にニキビ菌の活動が活発となり、炎症を起こしてしまいます(赤ニキビ)。さらに炎症のため毛包が破壊されると、強力な異物反応がおこり、大きく腫れたり、皮膚のひきつれが起こってしまいます(ニキビケロイド)。
 毛包出口(毛穴)の角質肥厚を改善させるのが新しいニキビ薬=アダパレン(商品名ディフェリンゲル)です。ニキビ菌を抑える薬としては抗菌薬であるミノマイシン、ルリッド、ファロムなどの内服薬、ダラシン、アクアチムなどの外用薬が使われます。

日常生活の中で気をつけること

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早い時期のニキビには主に外用剤(塗り薬)が用いられます。ことにディフェリンゲルが有効です。ダラシン、アクアチムの併用も効果をいっそう増します。しかし炎症が進んだり、化膿して痛いばあい、ミノマイシン、ルリッド、ファロムなどの内服薬による治療が必要です。外用のコツ、注意がありますので主治医・看護師の指示をよく聞いてください。それがニキビを治すコツです。
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ニキビで行うスキンケアの目的は、毛穴がふさがないようにすることです。洗顔は重要なスキンケアのポイントです。朝起きたときの洗顔はだれでもしますが、外出先から帰ってすぐの洗顔は面倒になりがちです。化粧品、汗やほこりなどで毛穴がふさがれないよう、習慣づけましょう。ごしごしこする洗顔はかえって毛穴を硬くしてつまりやすくさせます。またニキビの炎症を悪化させますので、やさしく洗顔しましょう。
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「ニキビはアンタッチャブルがいい」。ニキビをしぼったり、かさぶたをはがしたりするのは百害あって一利なし。ニキビ痕の原因となります。
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ニキビの原因となる毛穴の閉塞(つまり)を防ぐことがニキビ予防・スキンケアの基本です。
リキッドタイプのファンデーションを使っていませんか?セーター、マフラーなどで顎がこすれていませんか?髪の毛で額(おでこ)、頬がこすれていませんか?
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医学的には、ニキビだからと言って食べてダメなものは特にありません。チョコレート、コーヒー、ナッツ類などが「ニキビに悪い」とよく言われますが、根拠はありません。自分の経験をとおして「食べ過ぎた時にニキビが悪くなる」物だけ、控え目にしましょう。



以上のイラスト、日常生活の注意点は「にきびの治療と予防」(監修:京都大学大学院医学研究科皮膚科学教授 宮地良樹先生、提供:サノフィ・アベンティス)から、宮地良樹先生、サノフィ・アベンティス(株)のご好意により引用させていただきました。
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by kobayashi-skin-c | 2011-01-26 17:56 | 「皮膚の健康教室」抄録 | Comments(0)